第130回 ソムリエ呼称の実技についてまとめます。

   

一人で盛り上がっているフランス料理の香りの続きモノです。

あるフランス料理店で例の”ヴェッシー(膀胱包み)”が通常メニューに出ているという話を聞き、行ってまいりました。

このヴェッシー、風船状に膨らんだ膀胱をお湯の上に浮かべて(上から吊ってます)誰かが小一時間ずっとお湯をかけ続けるという手間も場所も人手もかかる料理です。うまく火を入れて、中の肉をしっとりと仕上げることができれば最高ですが、開くまで状態を確認することができません。ですから、丁度良い火入れをするにはかなりの経験と調理場の規模が必要になります。

完璧にキレイに火の入ったこの料理は、本当に他のものに変えがたいくらいフランス料理として最高の香りと味わいをもたらしてくれます。

私はこの日は、鳩のヴェッシーを楽しむべく赴いたのですが、思いもよらずフランス料理的に楽しむ場面に出くわしました。最近ではほとんど経験することの無い、食事をする前にレストランを堪能する、これぞフランス料理と思ったお話です。

さて、この日のディナーは男性二人、女性二人で旧知の間柄でした。

着席後、ソムリエから”食前酒はいかがですか”と聞かれ、ひとまずミネラルウォーターを注文し、合わせてワインリストを見せていただきました。ワインリストをさらっと眺めて、私が三人に聞きます。”食前酒どうしますか?”と。グラスでシャンパーニュを頼むのか、ボトルで一本いただくのか。

このころそれぞれの手元にはメニューが配られており、それを見ながらお互いの近況などを話す和気藹々とした私以外の三人。私はワイン係としてワインリストとにらめっこ。

ちょっとして、一人が「やっぱり最初に少しシャンパーニュを飲みたい」と。「わかりました」と私。

グラスシャンパンがサーブされたところで、乾杯!

「さてさて、何を食べましょうか」

この日は事前にア・ラ・カルト(コース料理ではなく、フランス料理らしく前菜・メインをそれぞれが好きなものを選ぶスタイル)にしようとなんとなく話していたので、それぞれが食べたいものを求めてメニューを眺めています。また、私はこの店のメートル・ド・テルとは面識がありまして、つかまえて皆で、あれこれ質問してみたり。

私はメインを”鳩のヴェッシー”に決めていたのでその旨を伝えると、そのメートルから「一人で一羽食べますか?」と聞かれて、「そうね、二人でわけてもいいですか?」と聞くと「もちろん大丈夫です」と。では、私の前に座った男性に半分いかがですか?と聞くと、「いいですね」という答え。

さらに、私がメートルに、であれば、魚料理も半分にわけてもらうことは可能かと聞きました。→ア・ラ・カルトですから一品が大きいんです。こちらも、もちろんという答え。それは素晴らしいと、私はここでア・ラ・カルトではありますが、女性陣にもメインのお肉を”はんぶんこ”にしてもらって、魚料理もいただきませんかとお誘いし、お魚はそれぞれ二皿を四人でわけてもらうことにしました。ちょっとしたコースになった感じです。

さて、魚料理と肉料理が決まりました。あとは、おのおのが好きな前菜を注文するだけです。この時点ですでに私のグラスシャンパーニュはありませんでした。

メニューに書かれた前菜を説明してもらい、さらにメニューにはありませんが、こんなものやあんなものもありますよ、というサジェッションを受け、最後に「いや、昨日アルバ産の白トリュフが入りまして、よろしければこちらをシェフのおまかせでお持ちすることもできますが」と言われトリュフの瓶を開けて、香りまで楽しませていただいたわけです。

結局一人がその白トリュフ料理を選択、ちなみに私はパロンブのビスク(森鳩の濃厚なスープ)を選びました。

この店のメートルの粋な計らいもあり、この時点で私たちはこれから繰り広げられるであろうディナーを思い大いにテンションが上がっていったわけです。

それぞれが選んだ前菜、魚料理、肉料理をイメージしてワインを選びます。私は自分で飲むときは料理との相性以上に飲みたいワインを選ぶことが多いのですが、この日はある程度の相性も考えつつ、白ワインと赤ワインを選択しました。

そして、ようやくディナーが始まりました。この時、全員のグラスシャンパーニュは当然のようになくなっており、ふと時計を見ると入店してから一時間も経過していました。

一時間も。

ふつうレストランに入って一時間も料理が出てこなければ誰もが怒って帰ってしまいますが、この日はこの一時間がとっても楽しく、テンションも最高潮に達し、その空間とある種の一体感を感じるまでに至りました。そう、久しぶりに食べる前からレストランを本気で楽しんでいるなと思ったわけです。

私は以前フランスに住んでいましたが、フランス人がメニューを見ながらこれを食べよう、君はこれかい?いや、あーでもない、こーでもないと言いつつ、話がどんどん脱線していって、「おっと、我々はメニューを決めなきゃいけないんだ」と誰かが気がつくものの、また話が止まらず、メニューを決めるまでに小一時間ということはまま見る光景でした。

食前酒のあり方。

食事の前を楽しむお酒。日本人的には乾杯用のお酒というイメージがなきにしもあらずですが、本来はこのように楽しむものなのだろうとしみじみ感じたわけです。

ちなみにフランス人は食事の後に飲みに行くことはほぼありません。飲むなら、食事の前です。”アペッて”からレストランに向かうんです。日本では反対に食事の後に二軒目、三軒目という流れの方が一般的です。

メニューを決めるのに小一時間。最近の日本のガストロノミーフランセーズ(一言でいえば高級フランス料理店)において、料理をア・ラ・カルトで提供しているレストランはあまり多くはありません。
お任せ料理一本、またはコース料理が全盛の時代です。ですから、こんな楽しみ方があったなぁとちょいと昔が懐かしくなりました。

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第130回 ソムリエ呼称の実技についてまとめます。

今回は、ソムリエ呼称三次の実技についてまとめます。

この実技試験は私が受験した十数年前(おそらくもっと前から)も赤ワインのパニエ抜栓、デキャンタージュでした。ただ、今は二次試験ではなく三次試験という扱いですが、今年も同様のスタイルであることが予想されます。

会場入りし、指定された更衣室で制服に着替えてオリエンテーション会場(受験番号別待合室)に入るという流れでしょう。

男女別に更衣室(ホテルの宴会場の一室)が準備され、全身鏡も何台か置かれているようです。レストランの制服や、割烹着の方、CAの制服の方などさまざまです。

その後、受験番号ごとに指定された会場(待合室)に集合し、簡単な説明を受けたあとソムリエナイフなど必要なものを所持してスタンバイするように指示されます。この時間にマニュアルやメモを読むことは可能なようです。

実技は6人一組(地方会場は4人等の場合あり)で、受験番号順に行われます。一組の実技の時間は7分受験番号順なので、おおよそあとどのくらいで順番が回ってくるのかわかります。この場では皆一様に緊張した面持ちで静かにしています。←私は人生で数番目くらいに緊張した瞬間でした。

ほどなくしてお呼びがかかります。会場入り口に6人全員が揃ったところで実技会場前へと移動し、会場前に並んだイスに座ってしばし待機となります。その待機中に実技会場に入ってからの説明があります。(どこに荷物をおくのか。誰がどこの場所で実技を行うのかなど)

そして、ついに実技会場入りです。先ほど説明されたように手荷物を所定の場所に置き、指定されたとおりの順に並びます。

会場には正面に3名の試験官が座っており、真ん中の方が主に話します。その試験官の2mほど手前に細長いテーブルがあり、そこで実技を行うことになります。6名に対して三人の試験官ですから、三組にわかれてそれぞれの試験官をお客様と見立てて実技を行うというスタイルです。テーブルは会議用の細長いテーブルで、その一角で抜栓とデキャンタージュを行います。ワインやデキャンター、ライトなどの備品は部屋の両サイド(後ろ)のテーブルに並んでいます。

順番に受験番号と氏名を言い終えると、試験官からお題が出されます。

ここからは受験者それぞれのペースで実技がはじまるのです。

実技の詳しい手順は協会のDVDを見ていただくとして私のほうから注意点とポイントをお伝えします。

昨年に限らず、受験された方は皆一様にものすごく緊張したとおっしゃっています。その最高に緊張した中でいかにいつもどおり、練習したとおりにできるかということになります。

6人一斉に実技を行うので大きな声でハキハキ話すことが大切です。事前に試験での会話を想定し話す言葉まで決めて、何度も練習するとよいでしょう。さらに、緊張するとうまく話せなくなる方は一つの方法として、自分の話す内容を録音して、繰り返し50回ほど聞きましょう。そうすることで文章を覚える以上にリズム・テンポまで体に馴染むため、自然と流れるように言葉が出てくるようになります。
→ここまでするのかと思われるかもしれませんが、これは人前で慣れない方がスピーチをする時の攻略法の一つです。

ワインの名前ははっきり繰り返しましょう。「(ありがとうございます)●●の●年でございますね」という感じです。注文を受けた時に確認することがサービスの基本です。

試験官がお客様という想定ですが、どう見ても座っている場所も試験官でしかありません。少し離れた試験官を意識し、目の前にお客様がいるという想定でワインのサービスを行います。

試験官はデキャンタージュの了解など応対はしますが、実際に受験者が試験官の前に出てワインのサービスを行うわけではありません。

レストランでデキャンタージュ行う場合にはお客様に了承を得ることが基本です。認定試験はより基本に忠実に行うべきですから、了承ともにデキャンタージュする理由をお客様(試験官)に告げます。

もし、お題が若いワインの場合は注意が必要です。”若いワインなので空気に触れさせて開かせるためのデキャンタージュ”なのか、”少し澱が見られるのでその澱を取り除くためのデキャンタージュ”なのかを明確に選択し、はっきりと伝えることが大切です。

さて、お題が若いワインでした。そこで、前者の理由を選択した場合は、『若いワインであるために空気にふれさせることでワインを開かせる』といった旨を試験官に伝え、デキャンタージュの了解を得ます。若いワインと言い切っているのですから、澱が無い想定です。

この想定であればワインはボトルから全てデキャンターに移さなくてはなりません。そして最後に一言「(若いワインで)澱が全くございませんでしたので、こちらに全て移させていただきました」とでも言えば全てのワインをデキャンターに移す理由になります。おそらく全て移し替えて何も言わなくてもそれほど問題ないと思いますが、一言添えれば完璧です。

澱のないワインをボトルに残す理由は全くありません。
澱が無いのにボトルにワインを残したらクレームものです。
→例年、若いワインといっているのに微妙に迷って残される方がいらっしゃいます。なぜ、ワインを残す必要があるのかを考えましょう。そして、全て注ぎきることに抵抗がある方(私はこの感覚が理解できませんが)は澱のある理由を選択しましょう。

例えば2010年(7年前)のような微妙なワインが出題されたとして、残すか残さないか迷わず全て移し替えて、「澱がございませんでしたから、最後の一滴までお楽しみいただけます」などと一言添えれば、私なら100点をつけます。だって、デキャンタージュした本人が澱が無いと確認しているのですから。→そして実際に試験に使われるワインには澱がありません。

若いワイン、例えば先ほどお伝えした2010年のボルドーに全く澱が無いかといわれると微妙です。ですから、澱があると想定したなら”澱がある為のデキャンタージュ”を行えばよいわけです。ただ、この場合も1cm以上残してはいけません。2010年のワインなんです。実際あるかないかわからないくらいの細かい澱です。全部注ぎ切るつもりで、最後にほんの少しだけ残せばいいのです。

この1cm以内で収めるべきヴィンテージですが、一言では難しいですが、2000年代であればそんなにべらぼうな澱はありませんので、該当するかと思われます。

ここ数年、比較的若いワインがお題でしたが、一昨年2015年の出題は1995年、以前も二十年以上熟成したグランヴァンでした。今年はどのような設定になるかわかりませんが、もしいわゆる古酒クラスが出題された場合でも、1.5cm以内を目指しましょう。2cmを超えると、下手くそって思ってしまいますし、レストランの保管に疑問を持ってしまいます。←もちろんワインによるのですが、二次試験では1.5センチ以下を目指すべきです。

考え方ですが、何年まではどちらの理由でデキャンタージュするかをあらかじめ決めておいた方が良いかも知れません。そして試験開始後、決めた方向から絶対に迷わないことです。空気に触れさせる為のデキャンタージュ、澱が無い想定でワインを残してしまうと減点ですから。

毎年報告を見てますが、若いワインが出題された場合、どちらの理由でデキャンタージュしても全く問題ありません。

さて、時折DVDとは違う設定、使用アイテムについて説明があることがあります。例えば、グラスの使用数、パニエ、デキャンターに下皿をつける、つけないなど。
また、試験官が「デキャンターのリンスは不要です」などと普段デキャンタージュしない方には???な事をいきなり言われることもあるようです。普通にこれまで練習した通りに実技を行えばよいだけなのですが、やはり極度の緊張の中ですから、このように何か言われると混乱し、ペースを崩しかねないものです。頭のどこかに置いておいてください。

※デキャンターのリンスについて
デキャンターは形状的に洗浄が困難で、さらに洗ったあと水滴、水分等をふき取ることができません。このきっちり洗えない上に水分が残ってしまうことで、デキャンター内に臭いが残ってしまうことがあります。さらに、その臭いがワインに移るのです。特に手洗いのレストランに多いと思います。
ですから、ワインをデキャンターに移す前にほんの少量のワインをデキャンターの中にたらし、デキャンターの内部に満遍なくワインを滑らせるようにして馴染ませます。そして、その”洗浄に使ったワイン”は自分がテイスティングしたグラスに戻し処分します。

私はレストランでデキャンタージュする時には必ずリンスします。

ワインの取り扱いに十分注意しましょう。特に古いワインの場合、ワインを必要以上に動かさないことです。できる限り丁寧に扱っているように振舞わなければなりません。

抜栓時、途中でコルクが折れても焦ってはいけません。←まぁ、最高に焦りますよね…。特に古いワインではコルクは途中で折れる、ちぎれるものです。お客様(試験官)に「大変失礼いたしました」と言って(できればにっこりして)抜栓を続けましょう。黙っているよりお客様に軽く詫びた方が良いと思います。
あと、あくまで必殺技ですが、どうしても抜栓に自信が持てない方へ(全ての方にお勧めしているわけではありません)

スクリューは深めに差し込みましょう。ホントはスクリューの先がコルクを突き抜けてはいけないのですが、コルクが途中で折れて残りを抜けなかったり、コルクをボトルの中に落としてしまったりするよりはぜんぜんイイと思います。コルクを突き抜けているのが見つかってもちょっとだけ減点ですみます。

お手持ちのスクリューでどの程度差し込むと、どのようになるか知っておきましょう。

ライトを付けて澱を見ながらのデキャンタージュだとしても、実際に澱があるわけでもありませんし、デキャンターに澱が入っているかどうかを試験官が確かめるわけでもありません。ですからライトを付けて、あとは”澱を見ているふり”をしてゆっくり丁寧に移し替えればいいのです。ライトをちゃんと付けて、あとは位置関係さえ間違っていなければ、ライトなんてどうでもいいんです。

そして、特に古いワインの場合、デキャンタージュは何があっても途中でやめてはいけません。何かの手順が抜けていようとそのまま続けてください。古いワインの場合は途中でやめたり、そそぐ角度を変えることで澱が舞い上がってしまいます。たとえ、デキャンタージュを終えボトルにワインが1/4以上残ったとしても(同じデキャンターに)再び移し変えてはいけません。ここはお客様(試験官)に謝罪し一先ずデキャンタージュを終えましょう。パニックになって半分以上ボトルに残してしまったら、これが正解かどうかはわかりませんが、お詫びをして違うデキャンター(予備があるかどうかはわかりませんが)に移すならまだ少しは許されるかもしれません。レストランであればクレームものです。←絶対にこうならないように気をつける!だから全部注ぐくらいのイメージで。

デキャンタージュの最中にパニックになって迷ったら、減点覚悟で全てのワインをデキャンターに移してしまうくらいのつもりでいきましょう。多めに残ってアタフタするよりもただの減点ですみます。

実技試験は減点法です。佐藤陽一さんがどこかのコラムで書いてらっしゃいました。彼曰く、立ち姿やソムリエナイフの持ち方を見ただけでその人が実践でデキャンタージュをしているかどうかがわかると。←私もわかります。

減点法ですから、けっこう失敗してもどうってことはないわけです。ここで平常心でと言いたいところですが、どう頑張っても緊張してガチガチになるのです。その極度の緊張感の中で実技を行う事を予想しながらも、うまくできる自分の姿をイメージすることが大切です。

あとは細かいミスを気にしないことです。下皿を忘れた、片付けの手順を間違えたなんて、はっきり言ってどうでもいいことで、もしかすると小さな減点ですが、この細かいミスで動揺して大きな失敗をしてしまうことの方が問題です。

基本、”通してあげよう”という温かい目で試験官たちは見ていると聞きます。だから、そんなに簡単に落としたりしません。
→というか、二次試験を経験しておわかりだと思いますが、皆さんのテイスティングは完璧でしたか?中にはブドウ品種正解ゼロで突破された方もいらっしゃると思います。
そうなんです。実技はより優しい減点法で、どんなに失敗してもなかなかマイナス30点にならないものです。

あまり大きな声では言えませんが、この三次試験の実技、ほとんど落ちる人がいません。おそらく、ボトルを落として割ってしまうくらいまで失敗しないと合格ラインを下回らないはずなんです。私の周りには協会の役員をしている人がたくさんいますが、誰に聞いてもここ(実技)で不合格になることはないと言い切ります。

ですから、とにかく少々失敗や間違いがあっても一切気にする必要はありません。そして、何があってもあきらめずに最後までやり通すことがとっても大切です。

そして、練習あるのみなのですが、これから三週間と少し、騙されたと思って寝る前にイメージトレーニングをしてみてください。入室してから準備、抜栓、デキャンタージュ、ワインサービスという一連の流れを頭の中で繰り返すのです。

これまでもイメージを持つことの大切さについてお伝えしてきました。イメージが明確になれば実際にうまくいく確率はかなり上がります。反対にうまくイメージできないことはできないことが多いと私は思っております。

ソムリエ呼称実技対策の締めとして、若干これまでと違う設定であった2016年の受験者の報告をお伝えいたします。

何かございましたらこちらまで

koza★majime2.com 松岡 正浩

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