第20回 アルザス

   

以前、ある雑誌にアルザスについてのコラムを寄稿したことがあります。その古い原稿が見つかったのでその一部をこちらで紹介します。

ある意味、唯一無二の存在と言えるアルザスワイン。

繊細な酸と溌剌としたミネラル、そして比較的しっかりとした果実味の凝縮感。この、ワインにとって最も重要な三つの要素がここまでしっかりとバランス良く主張するワイン産地を他に知りません。とってもピュアながら北の産地らしからぬ力強さを持ち合わせる一方で、どこか寂しげな表情を見せることもあります。

アルザスは地理的にライン川の水運に恵まれ、さらにヴォージュ山脈とシュヴァルツヴァルトを越える街道の交差するところにあり、この利便性ゆえに文化的、経済的に大きく発展してきました。ただ、この地の利を近隣諸国が見逃すわけはなく、幾度となく領有権争いに巻き込まれることになります。ドーテ『最後の授業』の有名な一節、《今日がフランス語の最後の授業です》にもあるようにアルザス地方はある時はドイツ、ある時はフランスと歴史に翻弄された続けた地方でした。

アルザスワインの一本芯の通った強さ、特有の個性をアルザスの歴史を紐解くことで見えてこないかと考えることがあります。

紀元前58年からのカエサルのガリア遠征から始まるアルザスワインの歴史。ブドウ栽培はこの時代にローマ人よってもたらされ、しばらくして人々を元気にする飲み物ワインが評判になり、ブドウ栽培地拡大に拍車がかかりました。その後、4世紀から6世紀にかけてのゲルマン民族の大移動によって現在ドイツと呼ばれる国に属することになります。

1648年、三十年戦争の終結とともに初めてアルザスがフランス領となります。とはいえ、パリの都からみればアルザスは全くの辺境です。この時代も文化的にはフランスの影響下にあったとは言い難く、現在のドイツとの関係を強く持った中で独自の文化と言語を継承していくことになります。この三十年戦争によってアルザスが壊滅状態になる17世紀までアルザスワインは最盛期をむかえ、大いなる名声を享受していました。

その後、ビスマルクのプロイセンにナポレオン三世が敗れ、再びドイツ領になります。ドーテの『最後の授業』はこの時代の話ですが、ここに出てくるフランス語も実はアルザシアンにとっては外国語、彼らの言葉はアルザス語という独自のものでした。さらにアルザスに至っては20世紀になってもなお行ったり来たりの歴史を繰り返すのですが、その中でも変わらずアルザスという文化を継承しつつワイン造りが行われ続けます。

第一次世界大戦終了後、アルザスはフランス領となります。この時代になってようやくアルザスに本格的にフランス語が導入され、アルザス文化の駆逐が始まります。さらに第二次世界大戦中はヒトラーのドイツにアッという間に占領され、アルザスからフランス的なものが徹底的に排斥され、今度は純ドイツ化が図られます。

ここまで蹂躙された歴史を持ちながら現在もなおアルザス語を話す人々が生き続けており、また現フランス政府はアルザス語の出版物の発行を認めています。フランスのワイン産地の中で、ここまで歴史に翻弄されつつも独自の文化を守り続けた地方は他にありません。このように荒廃と試練の数百年の後、ブドウ畑の復興が始まります。アルザスのブドウ栽培者たちはかつての名声を取り戻すべく畑に向き合うのでした。

ワインの味わいは気候や土壌によるところが大きいといえます。しかし、このあまりにも力強く個性的なアルザスワインはアルザスを守り通し文化を継承し続けたアルザシアンの魂のワインのように思えます。

さて、今日はアルザスです。

フランスには村の数だけチーズがあると言われ、世界一の消費量を誇ります。ちょっと違いますが、感覚的には日本人にとってのお漬物のようなものでしょうか。

パリには日本の本屋さんくらい(少なくなりましたねぇ。昔の本屋さんくらいかも)の間隔で街にチーズ屋さんが点在しています。抜群に美味しいチーズ屋さんから残念ながらダメなお店までさまざまです。→スーパーにも同じようなチーズが売られていますが、全く美味しくありません。

今日のテーマのアルザスにもMunsterというウォッシュタイプのチーズがあり、この地方唯一のAOCチーズになります。→マンステール:発音的にはマンスとミュンスの間くらいの感じです。

munster

さて、いくつかのタイプに分類されるフランスのチーズの中で、このウォッシュタイプのチーズは香り、いや匂い(臭い)が強いんです。アンモニア臭といいますか田舎の便〇…。その中でもこのMunsterはさらに香りの強い方に分類されます。

ソムリエ試験としては同じ地方のワインとチーズを合わせるという問題が見られます。

明日ではなく、今日少しだけでも頑張りましょう。疲れているのは皆同じです!

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第20回 アルザス

【ポイント】

ドイツと国境を接する地域で、ヴォージュ山脈の東側におおよそ170㎞に渡って畑が連なります。→ボルドーでは川の名前が問われ、ここアルザスでは山の名前が出題されます。

ヴォ―ジュ山脈が西部の気候を遮るため海からの影響を受けず、降水量がフランスで最も少なく、乾燥し日照量の多い大陸性気候になります。
→地理的には北の産地ですが、夏は雨が少なくとっても暑くなるので、アルザス独特の凝縮感と酸のワインが生まれます。

白ワインの生産量が9割以上を占めます。また、土壌は非常に多岐にわたっており、さまざまなブドウが栽培されています。→だから土壌は覚える必要も、気にする必要もございません。

歴史的にドイツ領であった時期もあり、ドイツ文化の名残が随所に見られます。
→最終的にフランスにもどったのは第一次世界大戦後の1919年のことです。

それほど込み入った問題は見られず、アルザスの基本知識や地理を問われます。また、地方色豊かな土地で、郷土料理やチーズとの相性についての出題も見られました。また、アルザスは数字がポイントになります。

A 主要ブドウ品種

Alsace Grand Cruに使用される四つの品種

・Riesling
・Gewurztraminer
・Pinot Gris
・Muscat

※ピノ・ノワールはAOCアルザスで唯一認められている黒ブドウですが、上記には含まれません。また、例外がいくつかありますが…。

B アルザスのAOC

2007年アルザス・グラン・クリュ、51のリューディーがAOCとして認められるようになりました。
白ワインのみ、ブドウは手摘み、51あるらしい。この事実だけ知っていればOKです。51のリューディーを覚える必要はありません。が、もし、とっても余裕のある方は最新、最北端、最南端、あとは教本に記載のある三つの例外を覚えた方が良いでしょう。

・Cremant d’Alsaceはシャンパーニュ方式でTirage後9ヶ月の熟成義務、白・ロゼのみが認められています。アルザスワインの21%を占めます。
→シャルドネを混ぜてもよいのです。面白いですよね。

※AOC Cremantはフランス各地にありますが、全て瓶内二次醗酵(シャンパーニュ方式)で、はありません。

・Vendanges TardivesとSelection de Grains Noblesについては理解が必要です。

・ただのAOC Alsaceは赤・白・ロゼが認められています。

・Edelzwicker複数品種=アサンブラージュ←細かいことは必要ありません。この”エーデルツヴィッカー”が白ブドウのブレンドであることがわかればそれで十分です。

・ロレーヌ地方のAOCも何となく。新AOCも出来ました。
→Cotes de Tourのヴァン・グリ(ロゼ)はそれなりに有名です。

C 甘口ワインの規定

ヴァンダンジュ・タルディブ、セレクション・ド・グラン・ノーブルの収穫時における糖の含有量の規定があります。過去に出題されていますが、最近は見かけません。とりあえず後回しでよいと思います。

D アルザスの数字を整理する

→なぜかアルザスは数字についての出題が多い気がします。

・生産地域はストラスブールからミュールーズまでの170㎞、幅1.5~3㎞の帯状の斜面。

・AOC栽培面積は15,000ha。→フランス主要産地の栽培面積は後日まとめるつもりです。

・アルザス・グランクリュのリューディ(区画)は51

・Cremant d’Alsace ヶ月の熟成義務
→アルザスに限ったことではなく、クレマンの規定です。

さて、一気に【過去問】まで終わらせてしまいましょう。

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ソムリエ試験 過去問

【過去問】
アルザス地方で栽培されている Klevner のシノニムを次の中から1つ選び、解答欄にマークしてください。

1. Pinot Noir
2. Pinot Gris
3. Pinot Blanc
4. Gutedel

【解説】
ちょっと難しいですね。この講座ではふれてませんし。ただ、Klevnerに限らず、このシノニムの問題はしっかりまとめた方がいいかもしれません。

【過去問】
次のアルザス地方に関する文章の中で正しいものを 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. ヴォージュ山脈の西側に広がる産地
2. フランスで最も標高の高い産地
3. フランスで最も降雨量が少ない産地
4. 51 のリュー・ディから約 74% のワインが生産される

【過去問】
Riesling がアルザス地方に植えられた時期として正しいものを 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 1世紀末
2. 5世紀末
3. 10 世紀末
4. 15 世紀末

【解説】
これまでこの出題はみられませんでした。そして、将来的にどうなるかわかりませんが、現段階でこのレベルは無視して良い難問です。

【過去問】
Alsace Grand Cru のリュー・ディ Zotzenberg に使用が認められていないワイン用主要ぶどう品種を 1 つ選んでください。

1. Riesling
2. Gewurztraminer
3. Pinot Blanc
4. Sylvaner

【解説】
これはかなり難しい。無視してもよいですが、余裕のある方は教本に三つの例外とありますので、三つくらいなら…。

【過去問】
アルザス地方のぶどう畑が広がる丘陵の山脈を1つ選んで ください。

1. ヴォージュ山脈
2. ピレネー山脈
3. アルプス山脈
4. オーヴェルニュ山脈

【過去問】
アルザス地方のワイン用ぶどう品種で「スパイシーな」という意味をもつワイン用ぶどう品種を1つ選んでください。

1. リースリング
2. ミュスカ・ダルザス
3. ピノ・グリ
4. ゲヴュルツトラミネル

【解説】
この品種の香りをスパイシーというのかどうかは議論の的になるのですが、この話はまたいつか。

【過去問】
アルザス地方で粒選り摘みの貴腐ぶどうのみを使用したワインの表記を1つ選んでください。

1. ヴァンダンジュ・タルディヴ
2. プリチュール・ノーブル
3. セレクション・ド・グラン・ノーブル
4. トロッケンベーレンアウスレーゼ

【過去問】
次の中からアルザス地方にある山脈を1つ選んでください。

1. アペニン山脈
2. ピレネー山脈
3. ヴォージュ山脈
4. アルプス山脈

【過去問】
次のアルザス地方の記述について正しい場合は 1 を、誤っている場合は 2 を選んでください。

「降雨量はフランスで最も少なく年間平均 500 ~ 600mm である」

1. 正
2. 誤

【解説】
数年前までの教本には記載がありました.

記載は正しいです。

【過去問】
次のアルザス地方のワインに関する記述の中から、正しいものを1つ選んでください。

1. Cremant d’Alsaceはシャンパーニュ方式またはシャルマー方式で造られる。
2. Cremant d’Alsaceはロゼの生産も認められており、Pinot Noirを80%以上使用しなければならない。
3. 最も生産量が多いぶどう品種はRieslingである。
4. A.O.C. Alsaceは赤、ロゼ、白の生産が認められている。

【解説】
近年の教本にはアルザスのブドウ品種別生産量の記載がないので、覚えなくていいんじゃないですかね。以前の教本には記載があり、間違っていたという指摘もあったようなので。

【過去問】
次の中からアルザス地方の Grand Cru に指定されていないぶどう品種を1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. Gewurztraminer
2. Pinot Noir
3. Muscat
4. Riesling

【過去問】
次の文章の()に該当するものを1~4の中からを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

アルザス地方のぶどう畑はヴォージュ山脈の丘陵にあり、ストラスブールからミュルーズまで約( )、幅1~5km の帯状の斜面に広がっている。

1. 80km
2. 100km
3. 150km
4. 200km

【過去問】
次のフランス A.O.C. チーズの中からGewurztraminer Vendanges Tardives やBiere ambreeなどに相性が良いとされるウォッシュタイプ・チーズを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. Chaource
2. Mont d’Or
3. Munster
4. Rocamadour

【過去問】
アルザス地方のワイン産地はヴォージュ山脈の丘陵にあり南北に約100km 、幅1~5kmの帯状の斜面に広がっていますが、次の1-4の中から A.O.C の栽培面積として正しいものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. 約 10,000
2. 約 15,000
3. 約 20,000
4. 約 25,000

【過去問】
次の中から2006年度の実績でAlsace地方で最も多く栽培されているワイン用ぶどう品種を1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. Pinot Blanc
2. Riesling
3. Gewurztraminer
4. Sylvaner

【解説】
少し前の問題です。

【過去問】
次のアルザス地方のワイン用ぶどう品種の中から、最も生産量が少ないものを1つ選んでください。

1. Pinot Blanc
2. Pinot Noir
3. Sylvaner
4. Muscat d’Alsace

【解説】
こんないやらしい出題もあったんだなぁということで。

ルザスはたったこれだけです。ここはいけそうな感じですよね。
次回はあまりなじみのない地域ですがジュラ・サヴォワ地方に進みます。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩

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 - ●フランス, ・アルザス、ジュラ、サヴォア