第13回 ソーテルヌの格付け

   

ソーテルヌの当たり年といわれている1967年のCh. Suduiraut→コミューン名はPreignacをテイスティングした時のお話です。

パリに住んでいた頃、私はあるワイン会の最後のアイテムとしてCh. Suduiraut 1967を出しました。集まったメンバーはフランスに来てまでワインや料理を勉強しようというプロばかりです。

ワイン会も佳境に入った頃、その面々を前にして注がれた琥珀色のトロリとした液体は言葉にできないような神聖でかつ華やかな香りを放ち、その空間にいたすべての人を魅惑の世界へといざないました。

けっして忘れることのないこの香りと味わいを言葉にすることなどできませんが、あえて表現すると…。

香りは白や黄色のさまざまな花びらと栗と蜂蜜、青いフレッシュハーブを煮詰めて、その後乾燥させた強い直線的な甘さが長い長い時間をかけてゆっくりと華麗にゆるやかに絡み合い溶け込んでいるイメージ。そして、奥の方から、突き抜けるようなミネラル感が私たち狙い撃ちしてきます。
この液体がグラスに舞い降りてからしばらくして、今度はその甘美な香りが宙を舞いながら私たちを優しく包み込み空間を完全に占拠しました。
味わいもホロホロと崩れかけた心地良い甘さ、溶け込んだ酸とミネラルが口いっぱいに広がり、これでもかというくらい長い余韻が続きます。
このほぐれて解放された甘さとミネラルが強烈な存在感でありながら、ワインとして完全なバランスを保っていました。
ギュッと詰まったものが、宙を舞うかのごとく解放された時の甘美な香りこそが、緻密に構成された甘味・旨みがホロホロっと崩れて口の中に広がることこそが、甘口ワイン、ソーテルヌの真の醍醐味であると理解した瞬間でした。

この日の感動を一生忘れることはないでしょう。

緻密に構成された甘味・旨みなどのワインの各要素が球体状からホロホロっと崩れて口の中に広がることこそ、ギュッと詰まったものがフワッと解放されたときの甘美さこそ、ソーテルヌ醍醐味であると理解した瞬間でした。ソーテルヌがただの甘口ワイン、洗練された甘さ、長い余韻の心地良さだけではないということを強烈に印象付けた一本です。

さて、このワイン会はブラインドテイスティングでしたから、その時点で参加者はこのワインが何であるかを知らされていません。さらに驚くべきことが続きます。

ある一人の方(女性ワインライター)がコメントの最後に
『この完璧な素晴らしさが表現されるのは私の生まれ年のソーテルヌに違いありません!』
と断言されたのです。→この答えに私はドッキリ!

もちろん大正解。→そして一同ビックリ!

このCh. Suduiraut 1967が私の人生の一本となっていることは言うまでもありません。→そして数年前、再びこのCh. Suduiraut 1967をこの時にご一緒したワインライターの方と飲む機会がありました。この話はまたどこかで…。

数年後、ソーテルヌ伝説のヴィンテージといわれる1959年Ch. Coutet→AOC Barsacを飲んでみました。私は上記のCh. Suduiraut 67のイメージが強烈に残っていましたから、このCh. Coutet 59のあまりにも若々しく、生き生きと伸びのある表情に対して反対に残念な印象さえ持ってしまいました。この59年も素晴らしいワインでしたが、まだ私が求める飲み頃にまで達していなかったのです。しかし、これもまた記憶に残るワインです。

同じ年、Ch. d’Yquemの1959年も経験があります。上記のCh. Coutet 1959でも若々しいのですからYquemはまだまだ飲み頃なんて状態ではないんだろうなと思っていました。そして、私の想像を遥かに超えるくらいあまりにも硬く若々しくピチピチしていたものですから50年も待ったことが←実際に待ったわけではありませんが。馬鹿馬鹿しく思えるくらいでした。このワインは100年は余裕で持つと思われます。そして、私の求める飲み頃はいつになるのか想像することもできません。
→そして、昨年、これまでで一番と思えるCh. d’Yquem 1928をいただきましたが、この話はまたいつか。

さらに自慢は続きます。

こちらも当たり年、1928年のCh. Rieussec→コミューンはFarguesです。さすがにここまで来るとかなりこなれており、熟成感と果実味のバランスが心地よく、まさにソーテルヌの極み、間違いなく誰もが美味しいと思えるとっても素晴らしい状態でした。それでも、Suduiraut 1967の”長い時間をかけて華麗にゆるやかにほぐれていった”感を知ってしまった今、Ch. Rieussec 1928の”ほぐれ方”がまだまだだなぁなんて贅沢なことを思った思い出の一本です。

写真が残っていました。

ソーテルヌの古酒って本当にスゴイです。

※この与太話で紹介した四つのシャトーの内、イケムを除く三つのシャトーはAOC名やコミューン名がちょいと独特なので、なんとなく覚えておいてください。

さて、今日は世界三大貴腐ワインの一つ、ソーテルヌについてです。

※表紙はソーテルヌを見下ろすかのように小高い丘のうえにあるChateau d’Yquemです。

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第13回 ソーテルヌの格付け

ボルドーワインの歴史、四回目です。

ボルドーワインの歴史 4

イギリスの影響力を失った16世紀以降、今度はオランダがボルドー発展にひと役買うようになります。

スペインからの独立を目指すオランダがフランスと同盟を結んだことで、両国の関係が一気に深まります。
1579年、スペインから独立したオランダは海に面した地理を生かし、海軍力および海運力の充実をはかりました。のちに一万以上の船を擁し、バルト海および北方貿易の大部分を掌握するまでに至ります。

ライン川の河口に位置するオランダは、近隣諸国に輸出される白ワインの一大集積地でした。オランダ人はライン川流域のワインを扱っていたこともあり、特に甘口の白ワインを好みました。必然的に当時から造られていたソーテルヌの甘口ワインを評価したため、以降ボルドーではソーテルヌ以外でも甘口白ワインが造られるようになりました(現在もいくつかのAOCに名残が見られます)。また、オランダ人が持ち込んだ亜硫酸添加の技術が甘口ワインの再発酵を防ぐことになりました。そして、のちに亜硫酸の使用がフランス全体に広がっていくことになります。

オランダの商人達はさらに多くの白ワインを求め、安価な白ワインを輸入し、砂糖を加えて甘口にしてさらに輸出するということまで行いました。よって、供給地となったボルドーでは、アントル・ドゥ・メール(どこだかわかりますか?)など安価な白ワインの産地が拓かれていくことになります。

これだけでは終わりません。さらにオランダ人は安価なワインの輸送コストを下げるために、ワインを蒸留しブランデーにして運ぶようになります。このワインの蒸留は輸送コストのことを考えてブドウ産地の近くで行われるようになっていきました。ボルドーの近辺で、蒸留するときに使う木材が豊富にあるということで、コニャック、アルマニャック地区が蒸留酒の産地として発展していくのです。

そして時代は進みルイ14世の頃、重商主義政策で英仏はたびたび衝突していました。一方でオランダの海上貿易独占にも危機感を募らせはじめ、軍艦を作る大量の木材を確保する目的で、フランス王室が持っていた土地に植林を行いました。そして、この植林がのちのワイン文化にとって貴重な財産となります。今日でも最高級のフレンチオーク樽を供給するトロンセの森や、主にコニャックの樽材として使われるリムーザン地区は、この時代の植林が起源となっており、ボルドーワイン、コニャック等のブランデーの発展になくてはならない資源となりました。

I ソーテルヌとバルザックの格付け

甘口貴腐ワインの産地として世界中にその名を知られるソーテルヌはボルドー市から南へ約40キロ、ブドウ畑はガロンヌ川の支流の一つであるシロン川周辺に集まっています。
 
水温の低いシロン川が温かいガロンヌ川に流れ込むことによって霧が発生し、その湿気の多い気象条件によってボトリティス・シネレア(貴腐菌)が繁殖します。このボトリティス・シネレアがブドウに付着することにより、果皮が破れ果実の水分を蒸発させ、結果としてブドウの糖分が凝縮されます。このブドウから糖度の高い世界最高クラスの甘口白ワインが出来上がるわけです。
←基本的なイメージはなんとなくおさえておきましょう。シロン川も出題されたことがあります。

◆Ch. d’Yquem
こちらは
Premier Cru Superieur
という格付け名をしっかり覚えてください。Grand Cruでも、ただの一級でもありません。

◆Premiers Cru
シャトー名を見て一級であるかどうか、そしてコミューンがSauternesまたはBarsacであるか、わかればよいでしょう。
その中で、
Ch. Coutet
Ch. Climens のみがAOC Barsacになります。(コミューン名もBarsac)
→私はクーテ、クリマン、バルザックというリズムで覚えています。

上記以外はすべてAOC Sauternesになりますが、コミューン名に注意しなくてはなりません。
Ch. Guiraud-Sauternes (AOC、コミューンともにSauternesはここだけ)
Ch. Suduiraut-Preignac
Ch. Rieussec-Fargues

その他の6シャトーはAOC Sauternesにコミューン名はBommesになります。

Premiers Cru一覧です。

Ch. CoutetBarsac
Ch. ClimensBarsac
Ch. SuduirautPreignac
Ch. GuiraudSauternes
Ch. Rieussec-Fargues
Ch. La Tour BlancheBommes
Ch. Lafaurie-PeyragueyBommes
Ch. Clos Haut-PeyragueyBommes
Ch. de Rayne VigneauBommes
Ch. Rabaud-PromisBommes
Ch. Sigalas RabaudBommes

・Deuxiemes Cru
こちらも同様に二級であるかどうかを答えられると理想的ですが、私は一級さえしっかり覚えればよいと思っています。→シニア試験受験の方は覚えましょう。

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ソムリエ試験 過去問

【過去問】
ソーテルヌ&バルサックの格付け 1 級銘柄を 1 つ選んでください。

1. Chateau Filhot
2. Chateau Romer
3. Chateau Caillou
4. Chateau Suduiraut

【過去問】
ソーテルヌ & バルサック村の格付けで、バルサック村で生産されているプルミエ・クリュのシャトーを 1 つ選んでください。

1. Chateau Guiraud
2. Chateau Coutet
3. Chateau Rieussec
4. Chateau Suduiraut

【過去問】
下記の地図 A ~ D の中から A.O.C.Barsac の場所を 1 つ選んでください。
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【過去問】
次のソーテルヌ & バルサック地区の記述について正しい場合は 1 を、誤っている場合は 2 を選んでください。

「ソーテルヌは起伏に富み、代表するシャトーであるシャトー・ディケムはソーテルヌの中で最も標高の高い丘の頂上にある」

1. 正
2. 誤

【解説】
ここ数年、見なくなった正誤問題ですが、ソムリエ試験的には難問に分類されます。ただ、すべての生産者についてこのような情報を持つことは不可能ですが、イケムクラスのトップ生産者に関してはワインの世界の常識として知っておくほうがよいでしょう。いわゆるテロワールといわれるものです。この記述は正解です。

【過去問】
ソーテルヌ & バルサックの格付けで、ソーテルヌ村で生産されている Premiers Crus のシャトーを 1 つ選んでください。

1. Chateau Coutet
1. Chateau Filhot
1. Chateau Guiraud
1. Chateau Climens

【過去問】
バルサックの格付けシャトーを1つ選んでください。

1. Chateau Rieussec
2. Chateau Suduiraut
3. Chateau Coutet
4. Chateau Guiraud

【過去問】
次のシャトーの中から1855 年のSauternes およびBarsac格付けでSauternes 村で生産されている1 級のシャトーを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. Ch. Guiraud
2. Ch. Climens
3. Ch. Filhot
4. Ch. Coutet

【過去問】
次のボルドー地方Sauternes & Barsacの格付けシャトーの中から、Sauternes村で生産されているものを1つ選んでください。

1. Chateau Climens
2. Chateau de Myrat
3. Chateau Guiraud
4. Chateau Caillou

【解説】
二級が混ざっていますから一瞬躊躇するかもしれませんね。でも、一級格付けをコミューン名までしっかり覚えておけば問題ありません。
2.と4.はAOCはSauternesですが、Sauternes村ではありません。

【過去問】
次の 1-4 の中から Chateau d’Yquem の 格付名称として正しいものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. Premier Cru Superieur
2. Premier Cru Classes
3. Premier Cru
4. Grand Cru

【過去問】
バルサック村の格付けシャトーを1つ選んでください。

1. Chateau Suduiraut
2. Chateau Rieussec
3. Chateau Guiraud
4. Chateau Climens

【過去問】
次の1~5の中からSauternes、Barsac の貴腐ワインを造る自然条件で最も関連性のある川を1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。

1. シロン川
2. ロット川
3. ドルドーニュ川
4. シェール川
5. セラン川

【解説】
この問題はいまや、難問の部類に入らなくなりつつあります。

ここはひとまずこんなものです。ときにはサラッと?行きましょう。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩

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 - ◆フランス, ・ボルドー