第103回 日本酒

   

あと十日後に迫った一次試験のことで頭がいっぱいで、この夏が早く終わって欲しいという方も、いや時間がぜんぜん足りないよという方もいらっしゃるでしょう。もしくは、お盆も仕事で忙しくそれどころではない方も。

思い返せば、あのわけのわからないボルドーの格付けを憶え始めてから数か月の時間が過ぎました。最初は、こんなに分厚い教本で勉強するなんて…と思われた方ももう立派にワイン道を進み始めております。

残された時間でどれだけできるか、ここでも合否が大きくわかれます。あと十日間ですが、この直前の集中力が思いもよらぬ力を発揮するものなんです。ある意味、火事場の馬鹿力に近いものです。もちろん、これまでの積み重ねが一番大切なのですが、最後に思いっきりあがいてみましょう。”人生でこんなに集中したことないよ”というくらいに。

あとは、体調管理をしっかり行ってください。体調が悪ければ集中力もなにもあったものではありません。試験当日もハンデを背負うことになります。

最後は気持ちです。気持ちで負けてはいけません。誰もが同様に悩み苦しんでいるのです。私の知る限りある一部のできる方を除いてそんなに差があるようには思えません。最後まであきらめず、合格するという思いの強い方が合格します。

あと少しで、ワイン道の最初の関所が待ち構えております。実はゴールではなく、そこからさらに険しい道が続いているのですが、この関所を超えるかどうかは大きな分岐点です。

なんとか超えて、そこから先の世界に一歩踏み出しましょう。

ここまで来たあなたなら大丈夫です。

さて、今回のテーマは日本酒です。日本を代表するお酒であり、非常に複雑な工程を経て唯一無二のお酒が造られます。

ソムリエ協会・田崎会長が日本を代表する日本酒についてしっかり勉強しなさいという意向なので、昨年から”日本酒”という項目が加わったのでしょう。ソムリエ協会の意気込みが感じられます。また、今年、J.S.A. SAKE DIPLOMAの第一回目の試験が開催されます。

まず間違いなく、それなりに出題されるであろうということです。

一次試験対策最後の締めとして、この日本酒対策を進めたいと思います。

余談になりますが…。

日本酒の甘口・辛口について。

今は日本料理店に勤めておりますので、よくお客様から「”辛口”の日本酒をください」と言われます。

辛口をお求めの方に提供した私が辛口だろうなと思う日本酒を「これはちょっと甘いな」と言われたり(そもそも私は日本酒を甘・辛で判断しておりませんが)、同じを日本酒をお出ししても、”辛口”というお客様がいる一方で、”甘いね”という方もいるので、難しいものだと感じています。

また、大吟醸系はフルーティであることが多く、日本酒の中でも”甘い”方だと思いますが、辛口を所望された方に出ししてもおいしいと言っていただくことが多く、日本酒の辛口ってなんだろうと思うわけです。

本来「辛味」とは味わいを構成する苦味、酸味、甘味、塩味、旨味(五基本味)に含まれず、あえて言えば、刺激的な感覚に分類されます。わさび、唐辛子、山椒は万人が「辛い」と認識できるように。

ちょっと考えてみてください。

砂糖を入れたコーヒーは甘いですが、砂糖を入れないコーヒーを辛いと表現しますか?アルコールの刺激を辛いと感じることがありますが、ではウィスキーを辛いと表現するでしょうか?(甘い・辛いという意味ではウィスキーは圧倒的に辛口)

日本酒の好みに関して「甘い・辛い」と言われる要因はいくつか考えられます。

戦後の物資不足の時代に量を増やすために糖分を加えて作られた粗悪なお酒が出回ったこと(三倍醸造酒)。これらのお酒は薄く、口当たりがベタッとしたそうです。また、ワインと違って、言葉で表現する習慣がなかったこと。ビールなどと合わせて、テレビCM等で「辛口・ドライ」という言葉が使われ、美味しさのイメージとなってしまっていること。

※日本酒度という比重を使った甘辛度表示があるのですが、的確に辛口・甘口を表しているわけではありません。

このように、ほとんどのお客様にとって「辛口」はイメージでしかなく、正直、それほど意識しなくてもよいのではと私は考えております。

人生はキミ自身が決意し、貫くしかないんだよ。by 岡本太郎

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第103回 日本酒

A 日本酒とは

① 米、米麹、水を原料として醗酵させ、漉したもの。
② 米、米麹、水、清酒粕、その他政令で定める物品を原料として醗酵させ、漉したもの。
③ 清酒に清酒粕を加えて漉したもの。

さらに、
アルコール度数が22度未満でなければならない。
また、酒税法に”日本酒”という定義はなく、”清酒”に統一されている。
→ここに書かれたことすら複雑ですね。どうも”漉す”ことが大切なようです。なんとなく読んでおけば良いでしょう。

B 日本酒の特性

世界中のお酒にほとんど例を見ない幅広い飲用温度(5℃〜60℃)で楽しむことができます。
日本酒は温度を上げることで、香りが豊かに広がり、味わいが膨らみ、口あたりがまろやかになります。この広がり膨らみは40℃前後の”ぬる燗”の状態で最も心地よく顕著に感じ、旨味や甘味も特徴的に感じると言われています。
また、吟醸酒や火入れをしない生酒などを冷やして飲むスタイルも定着しています。

米の収穫後の秋から冬に仕込み、初冬から早春に新酒が生まれます。また、火入れをして貯蔵しておいた新酒を夏の間寝かせておいて、外気が蔵の中の温度とおなじくらいになった秋に日に出荷するひやおろしなどもあります。

日本酒特有の豊かなうまみはアミノ酸によるものです。
→有機酸はリンゴ酸・乳酸・コハク酸など、その他、ビタミン、ミネラルなどを含みます。

C 日本酒の製造工程

日本酒の醗酵は、麹の酵素によってデンプンがブドウ糖に変化する糖化と、ブドウ糖が酵母の働きによってアルコールに変化する醗酵とが、同一容器内で同時に行われます。これを並行複醗酵といいます。

こちらのホームページの画像を拝借しました。

sakekoteiwo

・日本酒の製造工程のポイント
蒸米酒母用と麹用にわけられ、その酒母(酛とも言います)を作る過程で麹・酵母・水を加えます。この酒母をさらに大きなタンクに移したところから醗酵が始まり、これを醪(もろみ)と呼びます。この醪にさらに3回にわけて、麹・蒸し米・水を加えて醗酵を管理します。このように3回にわけて仕込む理由は、醪の酸度を保ち、雑菌の繁殖を抑えるためです。

D 酒造好適米について

・うるち米(一般米、飯米)であること。→アジア各地で作られているお米のお酒は”もち米”がほとんど。

・通常の飯米にくらべ、心白が大きく、タンパク質の含有量が少ないものが適している。→心白とは米中央部の不透明な部分で、隙間が多いため光が乱反射し白濁して見えます。この隙間に麹菌の菌糸が入り込みやすく、酵素力の強い麹ができるというわけです。

・主な酒造好適米
山田錦(晩稲・兵庫県)、五百万石(耐冷性、早稲・新潟県)、美山錦(耐冷性、長野県、教本に記載のある中で最も新しい)、雄町(晩稲、江戸時代から)など

E 酒母(酛)について

良い酒母の条件として、目的とする酵母が大量に培養され、悪影響を及ぼす他の微生物(雑菌)が少ないことが求められ、この環境維持のために乳酸が重要な役割を果たします。そして、この乳酸の生成法によって大きく二つの酒母にわけられます。

・生酛系酒母
自然の乳酸菌を取り込み増殖させて、乳酸を生成。この後に述べる速醸系酒母に比べ、技術や大いなる手間暇を要しますが、剛健な酒母となり、うまみや酸の豊かな酒質になります。現在の日本酒のラベルに記載されている”生酛”や”山廃”はこの酒母から作られたということです。

・速醸系酒母
醸造用乳酸を添加して行う酒母培養法。安全性が高く、手間暇がかからないため現在多くの酒母がこちらになります。

F 特定名称の日本酒

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さて、最後の過去問です!!

ソムリエ試験 過去問

【過去問 2016】
日本酒のアルコール度数は何度未満と酒税法により定められているか 1 つ選び、 解答欄にマークしてください。

1. 18 度未満
2. 20 度未満
3. 22 度未満
4. 24 度未満

【解説】
こちらもちょっと意外で、知らなければ答えられませんが、この講座ではお伝えしておりました。

【過去問 2016】
国税庁によって「酒類の醪を液状部分と粕部分とに分離するすべての行為」と定められるものを 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 漉す
2. 酒粕仕込み
3. 糠仕込み

【解説】
読んで字のごとくといえばそれまでなのですが、受験した方から「松岡さんが”日本酒は漉すもの”と言っていたのを思い出して一問取りました!」とメッセージをいただきました。

【過去問 2016】
「ひやおろし」とは一般的にいつの季節に楽しむ酒か 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 春
2. 夏
3. 秋
4. 冬

【過去問 2016】
次の酒造好適米のうち命名されたのが最も新しいものは次のうちどれか 1 つ選
び、解答欄にマークしてください。

1.  山田錦
2.  五百万石
3.  美山錦

【過去問 2016】
精米後に原料米に必要な水分を吸わせる作業を何と呼ぶか 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 漬水
2. 浸透
3. 浸漬
4. 浸水

【過去問 2016】
日本酒造りの主な工程で「酒槽」と呼ばれる道具を使用する作業を 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 段仕込み
2. 上槽
3. ろ過
4. 火入れ

【解説】
上槽の時に使うんですよね。”槽”という字もかぶってますし。ちょっと難しい問題ですね。

【過去問 2016】
日本酒用の米は、農産物規格規定では次のうちどのように呼ばれるか 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 酒造好適米
2. 醸造用玄米
3. 日本酒用玄米
4. 日本酒用好適米

【過去問】
清酒の製法品質表示で、醸造アルコールの添加が認められ精米歩合 50%以下で造られる日本酒の特定名称を 1 つ選んでください。

1. 大吟醸酒
2. 特別純米酒
3. 純米吟醸酒
4. 純米大吟醸酒

【過去問】
平成 22 年の国税庁の調査で清酒の生産量が最も多い府県を 1 つ選んでください。

1. 京都府
2. 兵庫県
3. 新潟県
4. 秋田県

【解説】
地酒ブーム以降、大手メーカーの日本酒の販売量が下降線と聞きます。それでも、過去の栄光なのでしょうか、今でも灘の酒の兵庫県が生産量NO.1、次に伏見の酒の京都が続きます。

【過去問】
酒母の別名を1つ選んでください。

1. 醪
2. 酛
3. 酒粕
4. 麹菌

【解説】
1. ”もろみ”と読み、酒母(酛)にさらに「蒸米・麹・水」を何度かにわけて加えアルコール醗酵が進んだもの。醪を搾ると日本酒になります。
2. ”もと”と読み、字の如く”酒の元””酒の母”であり、.酒母用の蒸米と水と麹、酵母、乳酸を混ぜた状態で、この状態からアルコール醗酵が始まります。
ですから、酒母(酛)が醪になるというわけです。

【過去問】
「清酒の製法品質表示基準」において、醸造アルコールの添加が認められている日本酒の特定名称を1つ選んでください。

1. 純米酒
2. 純米吟醸酒
3. 吟醸酒
4. 特別純米酒

【解説】
3.以外は”純米”と書かれていますからね。大吟醸であっても醸造アルコールの添加は認められています。

【過去問】
日本における清酒の製法品質表示基準の中で、純米大吟醸酒の精米歩合を1つ選んでください。

1. 70%以下
2. 60%以下
3. 50%以下

【解説】
精米歩合一覧
・70%以下 本醸造酒
・60%以下 特別本醸造酒 / 特別純米酒 / 吟醸酒 / 純米吟醸酒
・50%以下 大吟醸酒 / 純米大吟醸酒
私が利酒師を受験した頃は純米酒は70%以下でした。2004年に純米酒の精米歩合の規定がなくなりました。

【過去問】

清酒造りの糖化工程において奈良時代に広く普及したものを1つ選んでください。

1. 醸造用アルコール
2. 粳(うるち)
3. もろみ

4. 米麹

【解説】

米麹による醸造法が普及したのは奈良時代です。

【過去問】
次の清酒に関する記述中、下線部(a)~(d)の中で誤っている箇所を1つ選んでください。

「清酒は主として米や米麹と水を原料として醗酵し、こしたものである。使用できる原料の中には必ず(a)米、米麹がなくてはならない。また、果実を原料とするワインと異なり、穀類に含有される(b)デンプンを酵母が醗酵できる(c)糖分に分解しなくてはならない。この役目は(d)乳酸菌が生産する酵素によって行われる。」

1.(a)
2.(b)
3.(c)
4.(d)

【解説】
日本酒造りにおける”乳酸”の役割は酵母以外の微生物を排除することにあります。このため、酵母が邪魔されることなく順調に増殖しアルコールを生成します。

【過去問】
次の中から蒸米、米麹、仕込み水を、同じ容器に何回かに分けて酵母の増殖をはかりながら仕込んでいく、清酒の仕込み方法に該当するものを1つ選んでください。

1. 山廃法
2. 段掛法
3. 速醸法
4. 連醸法

【解説】
1. 先ほどの日本酒造りに欠かせない乳酸を自然の中から取り込んで酒母を造る方法。伝統的な日本酒の製法で、生酛法の山卸し(蒸した米、麹、水を混ぜ粥状になるまですりつぶし乳酸菌を増殖させ乳酸を生成する工程)を廃したもの。だから、山廃(山卸しをせずとも、麹から溶け出した酵素液を蒸米の上から掛けることで米粒が溶解し、乳酸菌を増殖させます)。
2. こちらが正解です。
3. 現在は乳酸菌を添加します。近年の日本酒において「山廃」「生酛」と書かれているもの以外はほぼこの速醸法です。
4. 簡単に言うと、速醸法で育った酵母を再利用する方法

【過去問】
清酒の酒造用粳米としては、粒の中心部に白い不透明な心白がみられる米が適しているといわれるが、次の中からその理由として正しいものを1つ選んでください。

1. 心白の部分はデンプンの構造が密であるため、雑菌の侵入を受けにくい。
2. 心白がみられる粳米は、アミノ酸が多く清酒に旨みを与える。3. 心白の部分はデンプンの構造が疎であるため、麹菌の菌糸が中に食い込み易い。
4. 心白の部分はアミノ酸が多く、酵母の発酵を促進する。

これまでの出題数が少ないので、傾向を見るためにもシニアの試験問題を掲載します。

【シニア過去問】
純米酒の麹米使用割合は何%以上と定められているか 1 つ選び、解答用紙にマークしてください。

1. 15%以上
2. 25%以上
3. 50%以上
4. 60%以上

【解説】
すべて同じです。

【シニア過去問】
日本酒を徐々に温度をあげてサービスする場合の正しい順序を 1 つ選び、解答用紙にマークしてください。

1. 冷や → 花冷え → 日向燗 → 人肌燗
2. 花冷え → 冷や → 日向燗 → 飛切燗
3. 冷や → 常温 → 熱燗 → 日向燗
4. 人肌燗 → 熱燗 → 飛切燗 → 日向燗

【解説】
雪冷え(5℃)→花冷え(10℃)→涼冷え(15℃)→冷や(20℃)→日向燗 (30℃)→ 人肌燗(35℃)→ぬる燗(40℃)→上燗(45℃)→熱燗(50℃)→飛切燗(55℃)

【シニア過去問】
純米大吟醸の麹米の使用割合は何%以上と定められているか該当するものを1つ選んでください。

1. 15%以上
2. 23%以上
3. 50%以上
4. 66%以上

過去問のある項目は全て終えました。本当にここまでよく頑張ったと思います。あとは、イギリス、ルクセンブルクについて対策を考えたいと思います。何度も言いますが、最後まであきらめず走り切ってください。

何かございましたらこちらまで

koza★majime2.com 松岡 正浩

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