第108回 ワインアドバイザー全日本選手権出場者のシニア試験時の苦悩

   

いただいた質問にお答えいたします。

悩んでいます。
テイスティングの特訓に使うワインをどう選ぶのか?

職場にはスペインワインしかなく、スペイン品種ばかりで、近所の酒屋にはハーフボトルのワインがほとんどありません。ワインバーに通い教えを乞うか、ネット通販でハーフボトルを購入するのか、頻出主要ブドウ品種のフルボトルを探すのがよいのか悩みます。ご意見よろしくお願い致します。

不安になる気持ちはよくわかります。私の時代は今のようにインターネットや試験対策の情報もあまりなく、何をどうするとよいのかわからない状態で二次試験に挑みました。本当に何をどうしてよいのか全くわかりませんでした。

協会の意図をくみ取ってテイスティングコメントを選ぶなんてつゆ知らず、主要ブドウ品種についても全く気にしなかったように思います。ですから、もしかすると何もわからなかった分、不安は少なかったのかもしれません。→そして二次試験終了後打ちのめされて、抜け殻のようになりました。今思えば本当に何にもわかっていない状況で受験し、偶然合格した気がします。

さて、時期的に少し違いますが、ワインの購入に関しては以前こちらに書いております。

確かにワインの購入に関して悩む気持ちも理解できますが、ぶっちゃけもう悩んでいる時間はないはずです。
・ワインバーに行こうかと悩むのであれば、ワインバーに行って手あたり次第、ブラインドテイスティングさせていただく。
・ハーフボトルがなければフルボトルを購入する。

・ワインがわかりそうな方のいる酒屋に行き、ブラインドテイスティングする旨を伝えて試験対策用ワインを銘柄のわからないように数本見繕ってもらい、持ち帰りテイスティングする。

もう、なりふり構っている場合ではありません。

できることは(金銭的なことも含めて)全てやりましょう。やらないで後悔することが人生で一番ダメだと私は思っています。仕事が忙しいことはよくわかります。みんな忙しいのです。私も本職があり、二次試験終了まであんまり寝る時間がありません。誰もが忙しい中頑張っているのです。

今できることがあれば全てやってみる。

悩んでいる暇はないと思うのです。

もう一つ。

二次試験まであと一か月を切りましたが、 これまでテイスティングに関してあまり対策を行ってきませんでした。これから何をどう進めていくとよいのか不安になっています。

現在、なんとなくですが白はシャルドネ、 ソーヴィニヨン、リースリング、赤はカベルネ、ピノノワールの品種の判断は出来ると思っています。

マニュアルの暗記に加え、テイスティングをどう進めて行けばよろしいでしょうか。あと、 二次試験では品種は選択ですかそれとも書き込みでしょうか?

こちらも辛口です。ソムリエ協会の有資格者となれば、一般の方から見ればワインの専門家です。バッジを付けてレストランなり、ワインショップや百貨店に立てばレベルを問わずワインのプロとみなされるわけです。

これまでのテイスティングの経験がわかりませんが、一ヶ月程度訓練でプロになろうと考えること自体、甘いと言わざるを得ません。

とはいえ、もうここまで来てしまったのですから、今からできることを考えましょう。

もう細かいブドウ品種の特定はあきらめましょう。必勝マニュアルをご利用いただいているようですから、白ブドウ、黒ブドウ共に三タイプにわけることに全力を注ぎましょう。合否の一番のポイントはここです。ブドウ品種なんて”もう”どうでもいいのです。→毎年ブドウ品種正解0で合格する方がいらっしゃいます。

そして、テイスティングする時は外観と香りの強弱、そして、酸とアルコールのボリューム感を特に意識しましょう。平たく言えば軽いワインか重いワインかしっかり認識できることを目指すのです。

タイプ別にわけたあとは、直感で(または過去の出題回数などを加味して)ブドウ品種を決め暗記したテイスティングコメントを選択します。

”ソムリエ試験合格くらいなら”何とかなると思います。

本気で頑張ってください。ダメかも…と弱気になるものですが、私はタイプ別にわけることさえできればイケると思っています。そして、そのようにマニュアルを作ったのです。

>あと、 二次試験では 品種は選択ですかそれとも 書き込みでしょうか?

今更ここで聞くんですか思いますが、同じくこちらに記載がございます。→今年から変わる可能性があると思っておいてください。どう変わるかは誰もわかりません。

とにかくあきらめないことです。あきらめたらそこで全てが終わります。

最後まで応援いたします。

さて、前回私の恥をさらしたついでに、2013年のワインアドバイザー全日本選手権に出場した友人の2013年のシニア試験におけるテイスティングの手記をこちらで公表します。やっぱり悩むんですよ。あっ、もちろん本人の許可を得ましたから。

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第108回 ワインアドバイザー全日本選手権出場者のシニア試験時の苦悩

早速始めます。

いよいよ12時50分から後半戦のテイスティング試験開始。

配られたワインは白が2つに、赤が2つ、酒精強化ワイン1つの計5種類。

1番目の白は無色に近いプラチナのような金属質の淡い外観。それと対称的に2番目の白は熟成感を感じさせる黄金色に近い外観。
3番目の赤は鮮やかなルビーで、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーのようなパワフル系品種とは明らかに違う外観。

4番目の赤は、さらにそれよりも淡く、グラスのフチがオレンジ色を帯び、明らかに熟成を感じさせる外観。5番目も鮮やかなルビーであったため、てっきり赤ワインかと思ったら、銘柄のみを答える酒精強化ワインでした。

一般呼称資格試験と違い、シニアは“品種”“生産国”“生産地方”“アペラシオン”の選択肢はないため、受験者全員にワインが配られる間、その外観からある程度の品種の絞込みを図っていきます。

1番目の白は、その無色に近い色調から、いよいよこれを出してきたかの甲州?それともミュスカデ?大穴でソアヴェか?
2番目の白は、直球ど真ん中で熟成タイプのシャルドネ?これまでなぜか呼称試験には出なかったシュナンブラン?
3番目の赤は、明るいルビー色からすればど真ん中でピノ・ノワールか?それともこのところ出現頻度が上がりはじめたマスカット・ベーリーA?この色だったら、キアンティやバルベーラ、カベルネ・フランもありうるか?

4番目の熟成感のあるルビー系の赤といえば、これまたピノか?対抗馬でバローロやリオハのレセルバ?はたまたキアンティの熟成タイプ?

試験開始の合図で1番目の白から取りかかります。

先ずは【外観】から“澄んだ”、“クリスタルのような”といった、お約束のコメントに次々とマークしていきます。

香りはレモンやグレープフルーツのような柑橘系が主体。複雑性は感じられず、爽やかな酸味のクリーンでシンプルな味わいの、お寿司などの和食に合いそうな白ワイン。「う~ん、やっぱり甲州かな?でもミュスカデも捨てがたいし…」と少し迷った後で、今のソムリエ協会の日本ワイン重視の傾向も考え、これまで出る出ると云われながら出されなかった“甲州”に決定。生産国・地方は当然のごとく“日本”“山梨県”、アペラシオンは“勝沼”と記入。

2番目の白ワイン…
外観は白としてはかなり濃いめの黄金色に近いイエロー。はたしてこれは品種特性からくるものなのか?温暖な産地のものか?樽を効かせた熟成タイプなのか?

香りは外観のごとく黄色い果実や黄色い花の香りが主体。若干の酸化熟成のニュアンスも感じられますが、ブルゴーニュの熟成したシャルドネに感じられるナッツのような樽熟成のニュアンスがほとんど感じられません。かといって、果実味が前面に出たヴォリューム感のある新世界のものでもありません。樽のニュアンスがほとんどなく、「黄色い果実と黄色い花が主体といえば、これも今まで出題されたことのないあの品種か…」と、品種“シュナンブラン”、生産国“フランス”、地方“ロワール”、アペラシオン“ヴーヴレイ”と記入。

3番目の赤ワイン…
外観は紫色を帯びた明るいルビー。見た目からはピノ・ノワールが最有力候補ですが、香りを嗅いでみるとピノにしてはとても甘くチャーミングで、フォクシー・フレーヴァーのようなニュアンスも感じられます。

味わいもとてもジューシーで、香り同様に“甘さ”を感じます。この時点で、私の脳ミソが「これだ!」と判断したのが“マスカット・ベーリーA”生産国や地方も1番目の白同様に“日本”、“山梨県”、“勝沼”と記入しますが、「いや、まてよ、いくらなんでも同じ山梨から2つも出されるか?」と疑念がよぎります。何度か口に含んでみますが、最初の結論を覆すだけの材料が見当たりません…。「いままでだったら有り得ないけど、今年は大きく方針が変わる年だし、日本ワイン重視の今の協会だったらやりかねないよな~」とそのまま解答。

4番目の赤ワイン…
こ、これは困った…。香りが全く拾えない…。温度が低いからかなと、手のひらでグラスをしばらく包んで温度を上げてみますが、明確な香りが分かりません。口に含んでみても、これまた香り同様決め手となる要素がほとんど感じられません…。色調はバローロが一番近いと思われましたが、余韻に感じられる特有の苦味やタンニンの余韻がありません。

ここで試験監督官の「残りあと10分です」のコール。「ヤバス…、もう時間もないし…」あれこれ迷った挙句、安全策をとってブルゴーニュのピノ・ノワールと記入。

5番目の酒精強化ワイン…
実は朝、この試験に出掛ける前に、最終チェックでルビー・ポートとマデイラを試していたため、これがポートワインであることは分かりました。しかし、解答の選択肢には“ルビー・ポート”がありません。選択肢にあるのは、“トウニー・ポート”“マデイラ”“マルサラ”“レイトボトルド・ヴィンテージ・ポート”“ヴィンテージ・ポート”の5つ。
“マデイラ”と“マルサラ”を真っ先に消去。残り時間5分となってしまったので、もうすぐに決定するしかありません。「トウニー・ポートであれば、その名のとおり黄褐色がかってるはずだけどこれは違うし、ヴィンテージ・ポートなら濾過していないからもっと濁った感じがするよな~」と、最後に残った“レイトボトルド・ヴィンテージ・ポート”を選択。

その日の午後6時過ぎにHPで発表された正解は以下の通り。

1. 日本 / 山梨県 / 甲州市 / 甲州
2. フランス / ブルゴーニュ地方 / プイイ・フュイッセ / シャルドネ
3. アメリカ / オレゴン州 / ウィラメットヴァレー / ピノ・ノワール
4. イタリア / ピエモンテ州 / バローロ / ネッビオーロ
5. トウニー・ポート 

ガガガ~ン!!!

なんと、正解しているのは最初の“甲州”だけでありました!

∑(゚□゚;)ガーン(。□。;)ガーン(;゚□゚)ガーン!!

蓋を開けてみれば、“シャルドネ”や“ピノ・ノワール”といった王道中の王道ばかりではありませんか!!

「この数ヶ月、あれだけの“千本ノック”を受けてきたのに、あれはいったいなんだったんだろう…」と後悔の念ばかりが頭をよぎります。これではおそらく、筆記とテイスティングの合計で判定されない限り、合格は極めて難しいでしょう…。

全日本選手権に出場されたクラスの方でもこれくらい悩むということです。←皆さんが悩まないわけがありません。彼を知る私としてはいろいろなワインを知っているが故に深読みをしすぎてしまい、さらにちょっと運がなかったと思わざるをえません。それでも彼はこのシニア試験に合格しました。ブドウ品種は落としてしまいましたが、テイスティングコメントがかなり適切であったということです。←やっぱりテイスティングコメントなんですよ!

最後に、皆さん、かなりの勢いでテイスティング行っていると思いますが、この時期に新しい未知のブドウ品種に挑戦するのはやめましょう。特に頻出品種でなければなおさらです。微妙なイメージが頭に残って、得点の邪魔にすらなるかもしれません。

何かございましたらこちらまで

koza★majime2.com 松岡 正浩

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