第124回 テイスティング関する質問にお答えしました。5

   

フグの香り

二十年ほど前に初めて食べた”すっぽん”が感動的で、こんなに美味しい食べ物が世の中にあるのかと身震いをしたことを覚えております。その後、”本当のフグ”を知るまではすっぽんが鍋の中で断トツに美味しいと思っていました。

すっぽん鍋は関西ではまる鍋とも呼ばれ、グロテスクな容姿からは想像できない上品でかつ旨みたっぷり、肉にも魚にもない個性的な味わいが特徴です。←「月とすっぽん」からすっぽんの甲羅が丸いことをかけてだそうです。ゼラチン質で出汁がとっても濃厚になりますが、全くくどさはありません。ですから〆の雑炊は欠かせないといいますか、そこがメインと私は思っています。

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なぜ、この旨味たっぷりのすっぽん以上にフグが一番好きかといいますと、他の魚、鍋には無い独特の香りがたまらないからです。

フグは食感も楽しいですし、味わいも繊細で深い。でも、フグは絶対に香りなんです。特に雑炊くらいまで進んだ時の。最高級のフグを個室でいただくと部屋中がフグの香りで満たされます。

ところで、皆さんはフグの香りをご存知ですか?

いろんな人にこの話をするのですが、意外とあまり知られておりません。一度フェイスブック上で若い日本料理の料理人の方とフグの香りについてやりとりをしたことがあります。「フグって淡泊な魚で、そんな香りはありませんよ」「いえいえ、あなた、いいフグを食べたことがないでしょ」って。

フグの香り。それは、なんというかとっても淫靡な香り。あるいは官能的。フェロモン系。動物としての本能に訴える香りです。→淫靡って漢字も響きもいやらしいですよね。

以前、大分県の臼杵でフグを食べた時の話です。この日、フランスから来た友人がトリュフを持ち込んでおりまして、お刺身に、雑炊にシュッシュと削ってくれました。

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フグの淫靡さにトリュフの妖艶な香り、フグの香りも独特ですが、トリュフの香りも他に並ぶものがありません。この唯一無二の香りの競演、もう言葉になりませんでした。

フグの香りってそれくらいスゴイんです。

さて、ワインのテイスティングコメントで時折”トリュフ”を見かけますが、本当にトリュフの香りのするワインはほとんどありません。超グランヴァンの熟成が最高潮に達した時にのみ感じるくらいでしょうか。→先日、あるワイン愛好家の方と1986年のブルゴーニュの白には”トリュフ香”を感じるものがあるよねって話で盛り上がりました。

フグとはタイプが違いますが、淫靡な香りのするワインはたまに見かけます。

ワインを生業としてよかったことはたくさんありますが、香りに興味を持てたことも一つだといえます。食材の香り、料理の香り、ワインの香り、とても楽しい世界です。

※表紙はマディラを温める一つの方法、カンテイロ

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第124回 テイスティング関する質問にお答えしました。5

いただいた質問にお答えいたします。

二次試験まで10日を切り、苦手な品種に絞って、白・赤それぞれの冷涼産地と温暖産地のワインの特徴を確認をしています。リースリングについてですが、この品種の『酸』をしっかりとらえることが大切だと松岡先生は話されていたと思いますが、今手元にあるドイツ産(あまりペトロール香がなくどちらかというと柑橘系の果実味と酸がはっきりしている)と、フランス産(全く特徴がつかめず、ただただフラットな冷涼産地であることだけしかわからない)を比べても、自分の中でどうしても基準がつくれなくて苦慮しています。ドイツ産はチリのソーヴィニヨンと、フランス産は甲州ととらえ違いをしてしまいます。直前ですが、特にどこの何を『意識』すればよいかご教授下さい。

ソムリエ試験的に、白ワインはリースリングがポイントになると思います。リースリングは個性のしっかりしたブドウ品種です。多くが単一品種で仕込まれ、樽のニュアンスを必要とせず、品のあるワインに仕上がります。果実味、ミネラル、酸それぞれが主張しながらしっかりバランスが取れているところも特筆すべき点です。また、冷涼な気候を好むこともあり、新世界産であってもそれほどわかりやすい”暑さ”を感じないことも特徴と言えるでしょう。言い換えると、産地の個性が反映されづらいということで、ドイツとフランスのリースリングの違いもなかなか難しいです。

リースリングにおけるドイツとフランスの違いですが、より酸・ミネラル感を顕著に感じるドイツとやや厚みがあり重心が低いフランス(アルザス)と言えるのですが、この二つを明確にわけることは困難です。私はドイツらしさ、アルザスらしさの基準を持っておりますが、それでも間違えることがあります。ですから、冷涼なニュアンスを感じたなら、あとは当たったらいいなくらいでいきましょう。過去の出題率からすると圧倒的にドイツです。
〉ドイツ産はチリのソーヴィニヨンと、フランス産は甲州と捉え違いをしてしまいます。

いろんなワインがあるので、時折間違えるくらいであればそれは仕方がないと思います。完璧にわかる人などいないわけで。ただ、毎回上記のように取り違えるならリースリングの特徴を理解していないと思われます。

確かにドイツのリースリングには溌剌とした酸とミネラルを存分に感じ、奥の方にある柑橘をより意識させるため、“白いお花”系に分類しづらいものがあります。ただ、それでもソーヴィニヨン・ブランの青さは全くありません。また、リースリングに自信のない方が、チリのソーヴィニヨン・ブランなんてイメージする必要はありません。無謀です。

もうひとつ、甲州とフランスのリースリングはほとんど相容れないくらいに違います。おそらく甲州をリースリングだと思った経験は私にはないと言い切れるほどです。ある特定のリースリングばかりテイスティングしていらっしゃるのでしょうか?かなり偏った感覚をお持ちのように感じます。

リースリングに限らず、一回か二回だけ経験したそのワインのみからブドウ品種の特徴をイメージするのは危険です。二次試験の報告で時々いただく、「白いお花系に分類したけど、自分の知っているリースリングではないから、飲んだことないけどしっかりとした酸を感じると言われるシュナン・ブランにしました」といった考え方はやめてください。これは絶対に失敗します。

確かにリースリングは難しいと言えますが、特徴がしっかり出るワインに仕上がるので、その特徴を意識することが必要だと思います。重心の低さ、質感、ペトロール香を感じなくてもどこか(香りの奥の方や口に含んだあとの残り香などに)石油っぽいニュアンスを感じることが多いと言えます。

もう時間がないので、新世界のリースリングは捨ててください。フランスとドイツに特化してテイスティングしてリースリングらしい質感を感じてみてください。リースリングを攻略できればソムリエ試験的に白ワインはほぼOKです。

リースリングの特徴の捉え方を教えてください。どうもイマイチちゃんとつかめていない気がします。リンゴや洋ナシの香り以上にレモンを強く感じることがあり迷います。

もう一つ、リースリングに関する質問です。どんなリースリングをテイスティングするかによりますが、基本冷涼な産地を好むブドウですから、レモンを感じることもあると思います。特にドイツのリースリングにはミネラル感が全開で、白い花系の香りよりも、レモン的な柑橘のニュアンスが勝ったワインがあります。

私が思うリースリングの基本的なところはこちらやマニュアルに記載しました。基本は華やかな”白い花系”に分類できることです。柑橘の香りも、果実味も、ミネラルもしっかり感じますが、これら以上に華やかな甘い香りが主体なんです。果実味も爽やかな柑橘ではなく、リンゴの蜜のような甘い香りが主体です。そこからペトロール香を感じればそれだけでリースリング決定。もちろんペトロール的なニュアンスを感じないワインもあります。

自信のないかたは白い花系に分類して青さを一切感じず、ゲヴュルツでなければリースリングでいいと思います。

酸に関して、ミュスカデやソービニヨン・ブランのような溌剌、シュワシュワ、すっきりした酸ではなく、重心が低く違った存在感があります。ドイツは流れるような清涼感につながる酸、フランスはややオイリーでミネラルと共に伸びるタイプか、滑らかで丸いタイプがあります。豪はフランスがちょっと太くなった感じです。

そして、ご質問いただいた、ミネラル感全開のレモン的なリースリング(ドイツの可能性大)ははっきり言って難しいです。←2018年の8月のテイスティングセミナーで当たりました。このようなよくわからない、とらえづらい微妙なワインが出題された場合、ブドウ品種はあきらめて、強弱をしっかり感じて、テイスティングコメントで得点を稼ぎましょう。なんとかタイプ分けした後に、どうしてもブドウ品種がわからないときは、ブドウ品種をウダウダ考えずにスッパリ捨てるんです。無駄にわからない、わからないと時間を使ってあせって他のアイテムのテイスティングに影響がでるくらいならきっぱりあきらめて、(できればタイプ分けした後の)コメントだけしっかり取る、これで十分です。

やっぱり、ソムリエ試験の白ワインのポイントはリースリングですね。

テンプラニーリョとマスカットベーリーAの特徴について教えてください。

テンプラニーリョの印象についてはどこかでお伝えしたように思いますが、セオリーとしては外観で濃い系・ガーネットから入り、やや熟成、もしかして濃い系にしてはちょっと淡い?少なくとも若々しさを感じないところからスタートします。香りの印象は黒果実系+熟成タイプに分類されます。ただ、樽のニュアンスに隠れている事が多いですが、結構赤いんです。黒系の中ではかなり赤果実寄り。

熟成タイプだと、イタリアかスペインが怪しいということで、土っぽさのニュアンスがイタリアチックなのか、スペインのやや湿った粘土っぽさなのかを判断します。また、イタリア品種にない、わかりやすいアメリカンオークのニュアンスが感じられることが多いといえます。

味わいはイタリアの二品種に比べてなめらかで、酸の溌剌さを感じません。丸く、やや重い印象です。

このテンプラニーリョ、一言で言えば丸いんですよ。角があまりない。そしてそこそこ全てが濃いけど、そんなに特徴がない。だから、メルロと混同することがあります。でも、メルロよりも圧倒的に赤さ(黒い中に赤い色調、赤い果実)を感じます。

マスカットベーリーAですが、色調は淡い系、香りは赤い果実に分類されます(それでも、ピノよりは基本的に濃い)。もう少し突っ込んで言えば、赤い果実ですが、かなり甘ったるい香りが特徴で、香りも味わいも単調、渋みをほとんど感じません。ただ、淡い系で赤果実と想定したのち、ピノではない違和感を感じた時にはじめて検討しましょう。

フランスのカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーを間違えます。良い見分けた方を教えてください。

こちらの質問は先日のセミナーでも、シラーズとカベルネ・ソーヴィニヨンの違いについての質問をいただきました。もちろん私も絶対に100%利きわけられるとはいいませんが、この二つのブドウの印象はかなり違います。

一言で言えば、鋭角なシラー(構成要素が少なく三角形のイメージ)と、より複雑でいろんな要素が主張するカベルネ・ソーヴィニヨン(いろんな要素がそれぞれしっかり主張するので八角形とか十角形のイメージ)です。ですから、単純にシラーの方が香りにも味わいにも酸味をはっきりと感じやすいと言えます。

違った見方をすると、”マリネしたオリーブ”を感じる方はもうそれだけでシラー/シラーズ確定です。ただ、私の云う”オリーブ”が万人に受け入れられるわけではないようです。ある意味、自転車に乗れるようになるようなものでして、このオリーブっぽいニュアンスが一度わかってしまえばかなり高確率でシラー/シラーズを判別できます。

ただ、ソムリエ協会のコメントにもオリーブは出てきませんので、私はマイノリティーなのかもしれません。
このような自分なりのポイントが見つかると一番良いんです。

でも、そんなこと言ってられませんので、どう感じるかということを比べてみました。どちらもかなり高いレベルで下記の要素を持っているという前提で比べています。

酸味   シラー > CS  
渋み   シラー = CS
果実味  シラー > CS 
赤 シラー ⇔ CS 黒
複雑さ シラー < CS

カベルネ・ソーヴィニヨンとシラー/シラーズ、ともに青さまたは緑っぽいニュアンスを特徴として持ちます。ただ、この青さのタイプが全然違います。

シラー/シラーズの最大の特徴である(と私が思う)肉厚感のある暖かい青さ、”マリネしたオリーブ”のニュアンスはカベルネ・ソーヴィニヨンでは顕著ではありません。
このマリネオリーブを感じない方へ、上質のオリーブオイルの青い感じはいかがでしょう?本当は私のイメージとは若干違いますが、オリーブオイルの滑らかで丸い青さ(緑の感じ)、どっしりとオイリーな感覚、この青さがシラー/シラーズにはあります。

一方でカベルネ・ソーヴィニヨンの青さ(緑の感じ)はまさに森の中です。ちょっと土っぽくて、ひんやりした感じもあり、針葉樹林のイメージの青さです。加えて、もっと鋭角なピーマン的な青さを感じる時もあります。少なくともシラー/シラーズにピーマンはありません。

色調や香りのベリー系の色に関しても、どちらも濃くて黒い系統ですが、この二品種を比べるとシラー/シラーズの方がどこか赤いニュアンスを感じます。

ただ、ソムリエ試験的に濃い系で黒果実をしっかり取れたなら、フランス産か新世界産かさえ間違えなければ、カベルネ・ソーヴィニヨンとシラー/シラーズを取り違えてもテイスティングコメントはそんなに違わないので、取りこぼしは少ないはずです。

フレーヴァーのコメントの”ベジタル”の意味を教えてください。

緑の野菜のことです。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどに感じる緑のニュアンス、例えばピーマン的な香りなどがより顕著に感じられる場合に選ばれるコメントです。基本、この二つの品種以外では選択しません。他の黒ブドウ品種に緑のニュアンスがないからではなく、他の特徴の方がより顕著である可能性が高いからです。

1. コニャックとアルマニャックの香りの違い
2.マディラもわかりにくい香りがします。

手掛かりになる何かがあれば、教えて頂きたいのですが。

1. この分野を言葉で説明するのはけっこう大変です。本当はワインも大変なのですが、ワインは言葉で表現するようになり、世界中である程度共有されているので私がこのような場でお伝えすることができたのです。でも、二次試験前、何かきっかけは欲しいですよね。
コニャックとアルマニャックの違いですが、アルマニャックはコニャックより鋭角なニュアンスで男性的と言われます。よりフレッシュな味わいでアンズのような香りを感じることが多い気がします。

対して、コニャックはバランスに優れ、エレガントで落ち着いた雰囲気を持っており、どこか甘いニュアンスを感じます。また、より青りんごのニュアンスがあると言われています。→おそらく過去に選択肢としてコニャックとアルマニャックの両方が並んだことはないんじゃないかと。

2. マディラは温める工程が独特の風味をくわえます。この温めたことによる香りの部分をしっかりと感じられると比較的わかりやすいといえます。
・ヨード、磯の香りを感じる

・キャラメル、アーモンド、胡麻っぽさ、たばこ
・熱を加えた果物の香り

質問コーナーあと一回やります。

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