第107回 私のシニア試験テイスティング時の苦悩

   

さて、二次試験対策を始めてまいります。

最初に自分の恥をさらすようですが、私が2011年に受験したシニア試験のテイスティング時の苦悩をお伝えしたいと思います。シニア試験終了直後にワインマニアな友人宛に受験記録を伝えたのですが、そちらを加筆・修正したものです。→その後、彼女もエキスパート呼称に合格しました。

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第107 私のシニア試験テイスティング時の苦悩

2011年のシニアソムリエ試験は最初に筆記試験・60問が行われ、その後引き続き(トイレ休憩もなし)テイスティング試験に移るという流れでした。

ちなみに私は絶対に合格するつもりで自信満々でしたが、筆記試験対策と過去のテイスティングコメントに関しては本気で研究しました。←この時の研究が今の必勝マニュアルに引き継がれています。
ただ、前にお伝えしたように入院中であった為、9ヶ月間全く一滴のワインにもふれていない状況で当日を迎えました。

さてテイスティングの内容です。ワイン三種類、その他二種類の合計五種類でした。

正解から書きます。こちらは終了後、会場出口で正解が発表されていました。

〈A〉オーストラリア・マーガレット・リヴァー・シャルドネ 2008
〈B〉フランス・シノン・カベルネ・フラン 2008
〈C〉スペイン・リオハ・テンプラニーリョ 2005
〈D〉シャルトリューズ・ヴェール
〈E〉スコッチウィスキー
※〈A〉~〈C〉の外観・香り・味わいなどは選択式、生産国・ブドウ品種などは記述式でした。〈D〉と〈E〉はそのアルコールの名称のみを問う問題でどちらも選択式。

→一般呼称の二次のテイスティングでは生産地域(AOCなど)は問われません。ただ、今年も同じとは言いきれませんが。でも、私は問われないと思います。

まずは最初に白ワインから
〈A〉オーストラリア・マーガレット・リヴァー・シャルドネ 2008

白ワインは一種類でしたのでこちらだけを見つめました。色合いは薄く若々しいのですが、輝き具合、緑色の強弱から出来立てホヤホヤという訳でもない感じです。適度に粘性もあり、一年は樽に入れて熟成させるレベルのワインであろうというイメージです。
時期的に(試験は2011年4月)輸入され市場に流れ試験のアイテムとして選ばれること考えると2009年ものでは早すぎてタイミングが合わない感じがして2008年だろうと予想しました。

香りはやや熟した黄色く甘い果物香ばしいナッツ系の香り、そして軽くミネラルを感じます。そして、なんといってもこの樽のニュアンス!この段階でフランス以外のシャルドネであることがわかりました。独特の新世界っぽい強いニュアンスです。シャルドネはブドウ品種としてはそれほど特徴がないと言われますが、シャルドネに慣れている人には”らしさ”を感じることが多いものです。

味わいも酸味がやや乏しく、ほどほどにアルコールを感じ、余韻に苦味を伴います。ただ、その酸とミネラルからものすごく暖かい地域というわけではないイメージで、やや涼しいところ、やや高いところで造られたのかなと想像しました。

以上より、私はカリフォルニアでも比較的涼しいソノマのシャルドネをイメージしました。

私の解答:シャルドネ/アメリカソノマ/2008年←シャルドネと2008年のみが正解。

〈B〉 フランス・シノン・カベルネフラン 2008

とにかく色がかなり濃かったんです。その隣の〈C〉も濃いのですが、さらにこちらはまだ紫の色調を残しており、この段階でピノとガメイ、サンジョベーゼはないなと思いました。この3つにはありえない紫色だったからです。

次に香りからすぐにフランスだとわかりました(私はフランスの香りに慣れています)。いわゆるカベルネ的な感じです。黒い果実が主体、ピーマンやベジタルなニュアンスが強く、土っぽい。加えて、奥のほうにミネラル、さらにハーブっぽい余韻が感じられました。

ただ、全体的にまとまりがなく、やや荒い印象でした。思い込んではいけないことなのですが、私はこの香りの段階でボルドーを強く思い浮かべてしまいました。試験でフランス・カベルネならボルドーだろうと安易に考えたのです。

味わいも黒い果実味が主体で渋味はまさにカベルネです。ただ、ボディが細めであり、やや強めの酸を感じたことは気になりました。

でも、まさかカベルネ・フランが出題されるなんて思いませんでした。←まったく、シニアをナメてました。これが、試験ではなく普通のブラインドテイスティングでしたら、いくらここまで濃い色調とはいえ、この酸とボディの細さについて思いを巡らせたかもしれません。まだまだ未熟であることを思い知らされました。

<試験にはぜんぜん関係ありませんが>

この先入観でブラインドテイスティングに失敗することが度々あります。例えば、微妙にチラッと見えたキャップシールの色が頭から離れず、そこからあらぬ妄想を始めたこと数知れず(仲間内ルールではキャップシールも完全に外します)。また、持ち寄りのワイン会で”〇〇さんが持ってきたワイン”だからと目の前のワインに向き合うことができず…などの失敗を繰り返している私です。

情けないです。フランスだけはしっかり答えなくてはならないのに。→私はその当時以前の数年間、日常的にフランスワインしか飲んでいませんでした。というか、入院まえは約7年間パリに住んでおり、フランスには基本フランスワインしかなかったんです。日本のように全世界のワインが揃うなんてことはありません。

ですから試験会場の私は順当にボルドーを選び、ポイヤックやサンジュリアンのような特徴的なカベルネ・ソーヴィニヨンではないので、(予算的にも認定試験向けのやや安価な)マルゴー村のやや外れの無名シャトーものかなと考えました。←ACマルゴーは幅広く、素晴らしいものからダメなものまで揃います。そして、最後まで頭から離れなかった線の細さ、酸に関してはヴィンテージの影響であろうと結論付けました。

ですから、比較的酸を感じやすい、そしてボルドー全体が線の細い年となった2007年と解答したのです。

結果的には反対でした。

酸を感じたのはロワールのカベルネ・フランだからで、果実味が主体でボルドーと思えるほど果実味があったのは、果実味が小さくまとまって比較的凝縮感の出る2008年のヴィンテージだからでした。

「酸が柔らかく、果実味主体の年のカベルネ・フラン」を「線が細く酸の年のカベルネ・ソーヴィニヨン」と間違えたわけです。

負け惜しみといえばそれまでなのですが、よくできたシノンだと思いました。フランスだけは外すまいと思っていただけにショックも大きかったです。

私の解答:カベルネ・ソーヴィニヨン/フランス/マルゴー2007年←正解はフランスのみでした。トホホ。

さて、順調に白一種、赤一種をテイスティングし終えた(と思っていた…)私は赤ワインの二つ目に取り掛かります。ここまでは全く問題なく(と試験中は思っていた)周りを見渡す余裕さえありました。ただ、その先にぽっかり落とし穴があるなど思いもよらずに…。

〈C〉 スペイン・リオハ・テンプラニーニョ 2005

これは本当に悩みました。

外観は〈B〉と同様に濃く、〈B〉に比べあきらかに熟成感と粘性を感じます。エッジの部分が赤い感じなのです。この段階で色調の薄い品種は外れました。

香りはフランスではない雰囲気で、さらにイタリアでもない。樽からくるであろうヴァニラの香りが前面に感じられ、どちらかといえば熟した赤から黒い果実のニュアンスが主体です。

ただ、外観から感じるほど香りに熟成感がなく、黒い果実を煮詰めてジャムになる直前といった感じ、とにかく甘いのです。さらにハーブっぽいニュアンスが少なく、香りにこれといった特徴がない。ここでカベルネやシラー(シラーズ)、ネッビオーロは外れ、迷いながらも新世界のメルロっぽいなと思い始めました。

味わいも甘く、丸い印象。酸は控えめです。そして、ことのほかスッキリした後味が印象的でした。

やはりメルロっぽい。新世界のものならこれくらい甘くてもいいのではないか…。ただ、ここでこのスッキリ感(アルコールのボリューム感だと思ってください)にアレっと思い、さらに外観と香りの熟成感とのバランスに違和感を感じ始めました。新世界にしてはスッキリし過ぎている。また、香りの印象以上に外観が熟成しているように見える。そう、赤味が強いのです。→メルロであれば、香りに対して色調が赤すぎると思ったということです。

ハマったと思いました。純粋なブラインドテイスティングでこのような状況はよくありますが、まさかシニア試験レベルでここまで迷ってしまうとは思いもよりませんでした。←この人、何様でしょう?

本当に焦りました…。いや、ここまで前の二つのテイスティングがある程度得点になっている(と思っていた)はずなので焦る必要はなかったのですが、つまらないプライドが…。

ここで小休止。深呼吸してテイスティングを再開します。

メルロのように特徴的な香りがとらえづらく、全体的に穏やかで甘いといえばテンプラニーリョもありです樽のニュアンスからもやや赤いニュアンスからもテンプラニーリョの可能性が急浮上してきました。
けれど、私にとってテンプラニーリョの香りはもっと土っぽく、複雑さがあるんです。このワインからは凝縮感もあり強いけど、シンプルでより果実のニュアンスが前面にでる新世界の香りに近いものを感じていました。

でも、このスッキリさは新世界ではないのでは…。また、香りは新世界っぽい…。やや赤味が強い…。そして、このやや熟成のニュアンス…。

新世界メルロかテンプラニーリョのどちらかだろうと、ここまでは絞りましたが決定打がありません。どちらとも言い切れない感じで時間だけが進んでしまいました。

二次試験的にはここまで絞ればまずどちらを選んでもテイスティングコメント的には問題ありません。でも、私はちゃんと取りたかった。受験前に偉そうに言ってましたし。

そして、悩みに悩んだ末、テンプラニーリョを選びました。もしかするとメルロと書いたものを書き換えたかもしれません。このあたりはかなり焦っていました。とにかく私はたぶん55%くらいの確率でテンプラニーリョだと思ったのです。→ここ数年試験対策を続けている今となっては、熟成系なのでもう少しシンプルにテンプラニーリョで良かったのかもしれないなと思います。

もう時間がありません。ちょっと熟成しているから2006年と解答。テンプラニーリョっていったらリオハしかないでしょうということで、すべてを書き終えたときに時計を見て驚きました。もう時間がない!

私の解答:テンプラニーリョ/スペイン/リオハ/2006年→これは本当に当たった!という感じで素直にうれしかったことを思い出します。

ただ、試験を終えてから冷静に考えると2005年はヨーロッパ全体がとっても暑かったんです。2005年ヴィンテージはフランス全土でグレートヴィンテージと言われており、時にはローヌのワインを思わせるブルゴーニュ・ピノがあるくらいです。より緯度の低いスペインの2005年となれば新世界的な強い香りになってもおかしくはないなと思いました。

〈D〉 シャルトリューズ・ヴェール
ひとつ前の赤ワインにこだわりすぎたあまり、時間がかなり過ぎていました。←これは絶対にやってはいけないことです。トータルで得点を重ね、合格すればいいんです。ブドウ品種を当てることではないんです。

あと五分を切っている状況で、本当にあせっていました。〈D〉はマークシートに選択肢が並んでいました。色と香りで選んで正解。この独特の香りを知っていました。

私の解答:シャルトリューズ・ヴェール

〈E〉 スコッチウィスキー

残念ながらこちらは試験中にはわかりませんでした。時間が足りなかった事もあるのですが、微妙にくすんだ灰色に近い薄いロゼワインのような外観だったこともあり、さらに香りも乏しく???となってしまいました。今思い返しても、あんな色のスコッチを飲んだことがありません。

言い訳をするならシャルトリューズの特徴的な香りの後で、うまく香りが取れなかったと言いたいところです。安物のブランデー?アルコリックでとてもチープな味がしました。←なんて毒づいてみる。何と解答したかは忘れてしまいましたが、スコッチと解答していないことは間違いありません。

そこで時間切れ。

解答用紙が回収されたあと、すべてのアイテムを〈A〉からささっと試飲してみて、〈E〉がスコッチであることがわかりました。そのときになって初めてかすかにピート香を感じたからです。

なにを隠そう、私はスコッチが大好きでよく飲んでいるんです。バカンスにアイラ島の蒸留所に行こうと思って飛行機を調べたこともあるくらいなんです。だから本当に悔しかった。

変なプライドからか妙に熱くなってしまい、〈C〉のテンプラニーリョで時間を取られたことで最後のリキュールに正しく相対することができませんでした。また、マーク数を間違えると(多くマークすると)その項目は”0点”になるのですが、その見直しさえできませんでした。

私はワインの表現をマークシートから選ぶという行為に慣れておりませんでしたが、入院中にこれまでの協会発表の正解テイスティングコメントを眺めては協会独特の癖や言い回しを注意深く見ておりました。

→それでも、私は暗記した模範解答を当てはめたわけではなく、試験中に私が感じたコメントをその場で選びました。

この時の経験が現在の必勝マニュアルの原型です。入院中の”テイスティングコメント”の研究をこのような形で皆さんにお伝えすることになるとは夢にも思いませんでしたが。

試験会場を出るとテイスティングアイテムの発表があり、二つ目の赤がカベルネ・フラン/シノンであったことを知りました。あれがシノンかと驚いたのも束の間、自分のふがいなさに体の力が抜けるようでした。

それはブドウ品種を外したという事実ではなく、試験そのものをナメていた自分自身に対する怒りでした。シニア試験にカベルネ・フランなんて出るはずがないという勝手な思い込みがありました。そして、当たったテンプラニーリョについても、時間をかけ過ぎだったし、偶然だったなと反省しました。→こんなことを言っては何ですが、私はテイスティングにそれなりに自信を持っております。ですから、主要ブドウ品種を特定してどうこうとは思わず、正々堂々と向き合ってどこまで取れるかと考えていたのです。もし、皆さんがテイスティングにそれほど自信を持てないのであれば、出題される可能性の低いブドウについて考えてはいけません。なによりもまず合格ありきなのですから。

それでも、合格は確信していました。筆記がまずまずよい感触であったことと、いわゆる当てるところ(ブドウ品種やヴィンテージ)で大外しはあったものの、テイスティングコメントはかなり自信を持って選ぶことができたからです。
今となれば〈C〉のテンプラニーリョを外しても合格だったと思えます。〈B〉にしても、カベルネ・フランを私は線の細い、酸のしっかりしたカベルネ・ソーヴィニヨンのイメージでコメントを選びましたからテイスティングコメントに関してはそれほど間違っていないと思うからです。

そして断言します。合格するためにはブドウ品種を当てることに心血を注ぐのではなく、的確に外観、香り、味わいのテイスティングコメントを選択することです。

私でも←何度も偉そうにスイマセン…。ここまで悩むのです。皆さんが悩まずにテイスティングできるはずがありません。ですから、なによりもテイスティングコメントを暗記して当てはめようとお勧めしています。

そして、テイスティングコメントの重要性を心からご理解いただけたなら、このような恥をさらした私も報われるというものです。

最後まで絶対にあきらめてはいけません。みんなどんぐりの背比べなんです。気持ちで負けては最初から勝負になりません。

ご自身の合格を信じてください。信じられる人は絶対に強いのです。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩
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