第47回 赤ワインを比較する。

   

テイスティングについてのメッセージをいただいたので、こちらで紹介させていただきます。

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シラーの黒コショウっぽさが、さっぱりわかりません。
松岡さんが「オリーブのちょっと緑っぽい酸味」とおっしゃっているのはわかるので大丈夫かなと思っていたのですが、先日ブラインドテイスティングした南仏のシラーが全然わかりませんでした。サンジョヴェーゼはものによってなんとなくわかったり全然わからなかったりです。通っているワイン教室の先生の説明では「オレンジビール、ドライトマト、土の乾いた感じ」だそうです。なんとなく甘い感じの香りがわかる程度で私には???なのです。
ど素人が今年に入ってから勉強している程度ですから仕方ないと思いつつも飲んだワインの感想も書いてるし、もうちょっとわかってもいいんじゃないと思ったりもします。
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人によって感覚が違うもので、感じやすい香り・ニュアンスというものがあるようです。世の中にはブショネがどうしてもわからない人も少数ですがいるくらいですから。→ボルドーの某トップシャトーの元総支配人はブショネがわからないことで有名でした。

ですから、万人がシラーの黒コショウっぽさを認識できなくても不思議ではありません。ずっとわからないままかもしれませんし、何かのきっかけで気づくようになるのかもしれません。

私はシラーをテイスティングして黒コショウっぽいなと感じることはありますが、シラー=黒コショウという図式ではないので、それほど黒コショウに強くないのかもしれません。

シラーに限らずワインの特徴をとらえる時は自分の感じやすいポイントを見つけようと常に意識してください。何かを掴んだ後は、その得意な香り、ニュアンスを感じ取ることに意識を集中してほしいのです。全てを理解する時間はありません。

そして、二次試験において、なんとかブドウ品種を特定できたとしましょう←少なくとも大まかにタイプわけは出来なくてはなりません。その後、埋めるべき模範テイスティングコメントは暗記です。主要ブドウ品種の模範テイスティングコメントを暗記してそれらを当てはめるのです。←この件に関しては夏にご案内いたします。

多くの皆さんにとって、試験会場で香りを一つ一つテイスティングして感じ取っている時間はないと思っております。そして、過去五年間このやり方で多くの方より”合格しました”という連絡をいただいております。もちろん、絶対という方法論ではありませんが、私としてはそれほど経験のない方が、テイスティングを始めて一年くらいの方が、独学の方が、合格するための一番近道であると信じております。ちゃんとしたテイスティング方法なんて合格してから学べばいいんです。合格してしまえばこっちのものですから。

ですから今は主要ブドウ品種から造られたワインを感じて、各ブドウ品種のなんらかの特徴を掴んでいただきたいのです。→だからしつこく感じて書いてって言ってるの。

>「オリーブのちょっと緑っぽい酸味」とおっしゃっているのはわかる…

この感覚を共有できて私もとてもうれしいです。このオリーブの感じがわからないという方もいらっしゃいます。

このオリーブ感は南仏のシラーにもっとも感じるニュアンスなので、テイスティングされたワインがたまたま少し特異なものだったのかもしれません。何度も言いますが、同じ品種同じ地方でもさまざまなワインが存在します。そして、全てのシラーに通じる特徴などありません。

>サンジョヴェーゼはものによってなんとなくわかったり全然わからなかったりです。

これもある意味当たり前のことで、世界最優秀ソムリエでも100%ということはありません。特にサンジョヴェーゼはものすごく幅広く、軽いものからボルドー的な高級感あふれるものまでさまざななタイプが造られています。

今後、何年、何十年テイスティングを続けようと精度は上がるでしょうが100%わかるようには絶対になりません。そして、キツイ言い方をすればワインは数年程度の経験で簡単にわかるようになるものではないんです。おそらく、このまま”いまいちよくわからない”と思っているうちに二次試験当日を迎えるものです。それでも合格することができますから大丈夫です。ワインがわかることと合格することは別の話だからです。

明日ではなく、今日少しだけでも頑張りましょう。疲れているのは皆同じです!
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第47回 赤ワインを比較する。

さて、白ワイン同様に赤ワインを比較します。

赤ワインを比較する。

始める前に少しだけ、白ワインと赤ワインの味わいにおける一番の違いはなんでしょうか。わかりますか?

【ヒント】
醗酵に至るまでの行程が違います。そして、黒ブドウから白ワインを造ることはできますが、白ブドウから赤ワインを造ることはできません。
※黒ブドウから造られる白ワインで有名なものにシャンパーニュのブラン・ド・ノワールがあります。

そうです。渋味の有無です。味わいに関しては単純に白ワインに渋味を加えると赤ワインと考えることができます。

赤ワインのテイスティングにおいて、渋味をどのように感じるかということがポイントの一つになります。

さて、始めたいと思います。

1. 見比べてわかること。

・濃淡を見る。
過去に出題されたブドウ品種の中では、ピノ・ノワール以外は基本的に濃いと判断できます。(ガメイ・マスカット・ベーリーAはどちらか悩むこともあります。また、カリフォルニアなどには色の濃いピノ・ノワールもあります)また、白ワインと同様に、暖かい地域のワインほど色が濃くなります。

・「赤っぽい」か「黒っぽい」かを判断する。
赤ワインの外観を見るときの一番のポイントがここです。過去に出題された中で最も「赤っぽい」ものがピノ・ノワールで、「黒っぽい」ものがカベルネ・ソーヴィニヨンになります。
また、熟成によっても色調が変わります。若いワインは紫のニュアンスが強く、熟成が進むにつれて赤く(褐色)なっていきます。

「赤っぽい」  →  「黒っぽい」
ピノ・ノワール → ガメイ→マスカット・ベーリーAサンジョヴェーゼ → テンプラニーリョ/ネッビオーロ → シラー(シラーズ)→ メルロ → カベルネ・ソーヴィニヨン

イタリアワインは相対的に赤味を帯びる確率が高くなります。熟成に関する規定があることからも理解していただけると思います。その流れで、どちらかといえば、もともと紫の色調であったワインが私たちが目にする頃には赤味を帯びている可能性が高いのです。反対に若くて果実味たっぷりのワインが好まれるアメリカのワインは、紫の色調を感じる確率が高いといえます。

・粘性
上記の「赤っぽい」→「黒っぽい」の順が、粘性の「弱」→「強」に当てはまると言えなくもないのですが、ブドウの特徴に加えて、生産国・地域によるアルコール分に由来することも加味しなければなりません。

粘性が「弱い」 → 「強い」
フランス/日本 → スペイン/イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ

このくらいのイメージでしょうか。ワインをテイスティングする上で、外観は大切な要素ですが、これらの情報だけでワインを絞り込むことは難しいと言えます。

2. 香りを比較する。

・「赤い果実」系と「黒い果実」系にわける。
白ワイン以上に複雑な香りを持つ赤ワインですが、単純にわけてしまいます。香りのニュアンスはワインの色調にそれなりに比例します。

「赤い果実」系 → 「黒い果実」系
ピノ・ノワール/ガメイ/マスカット・ベーリーA サンジョヴェーゼ/テンプラニーリョ→ネッビオーロ/シラー(シラーズ) → メルロ/カベルネ・ソーヴィニヨン

徐々に黒い果実(カシスやミュールなど)のニュアンスが強くなります。私はテンプラニーリョまではどちらかというと赤系の方が強いように感じます。とはいえ、いろんな香りが複雑に交わっています。

ブドウそれぞれの特徴的な香りと合わせて感じられるようになってください。

・それぞれの国のニュアンスの違い
なんとなくですが、それぞれの国、地域によってそれなりに系統立った香り、ニュアンスを感じます。それらがとくに赤ワインに顕著に感じられるので、少しだけ紹介してみます。

・フランス
どの国よりも酸・ミネラルのニュアンスを感じます。また、ハーブっぽさも一番強い。

・イタリア
土っぽさ、埃っぽさ、どこか垢抜けない感じ、そして時折、酸化的なニュアンス。

・スペイン
こちらも土っぽさを感じますが、イタリアよりしっとり丸く暑い感じです。

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新世界ワインに使われる樽のニュアンスについて

主にアメリカンオークが使用されます。フレンチオークよりも個性が強く、チョコレート、ヴァニラ、ココア、ゴムなどのわかり易い香りを強く感じます。
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・アメリカ
過熟感、熱感。樽の強いニュアンス。酸、ミネラルの感じはどの国よりも少ない。

・オーストラリアかなり
アメリカ寄りですが、特有の「ユーカリ」ぽさを感じることが多いように思います。

・チリ
なんと言ってよいのか、独特の香りがします。酸っぱいような、うーん…ちょっと他の国にはない雰囲気です。アメリカほど強い過熟感、熱感はありません。

あくまで私のイメージです。言葉では伝えようのないことも多いので、今回はなんとなく通りすぎて、いつか共感していただければと思います。(いや、違う!でも)

3. そして、味わいの違いを感じる。

赤ワインは香りが複雑ですから、判断基準に事欠きません。これまでの段階である程度まで絞ることができれば理想的です。→残念ながらそう簡単にはいきませんけどね。

・渋味を感じる
赤ワインと言えば渋味です。渋味の強弱を感じてください。

渋みが弱い →  強い
ガメイ/マスカット・ベーリーA→ ピノ・ノワール → サンジョヴェーゼ/テンプラニーリョ/メルロ → ネッビオーロ/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン

・酸味を感じる
酸味が強い → 弱い
ピノ・ノワール → ネッビオーロ/サンジョヴェーゼ → ガメイ/マスカット・ベーリーA/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン/テンプラニーリョ → メルロ

カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロにもしっかりとした酸があるのですが、カベルネ・ソーヴィニヨンは酸以外の要素も十分に主張する為、メルロは豊富な粘性の陰に隠れている為、それほど感じないのです。反対にガメイ/マスカット・ベーリーAは酸だけではなく全体としてそれほど主張しない感じです。

・ボリュームを感じる
軽め → しっかり
ガメイ/ピノ・ノワール/マスカット・ベーリーA → 【ここに大きな差があります】 → サンジョヴェーゼ → テンプラニーリョ/メルロ/ネッビオーロ → シラー(シラーズ)/カベルネ・ソーヴィニヨン

ボリューム感を国別で比べてみます。

軽め → しっかり
フランス/日本 → スペイン/イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ

粘性と同じ並びですね。

駆け足でしたが、一通りまとめてみました。とはいえ、ワインはさまざまな国のこれまた千差万別の考えを持った人々がさまざまな天候の中、毎年造っています。一言でこうですとは言えないものです。

一つの考え方としてはフランスを基準にしてみることです。例えばカベルネ・ソーヴィニヨンなら、ボルドーに見られるピーマンや森の緑のニュアンスを起点とします。そして、ブラインドテイスティングの最中にカベルネ・ソーヴィニヨンかな?と思い当たったとします。そこで自分の基準とするボルドーのカベルネではない要素、違和感(ピーマンっぽさよりもジャムのようなニュアンスが強いなど)を感じた時に新世界のカベルネを思い浮かべるといった流れが私には自然でわかりやすいように思います。これらはあくまで私の感じ方です。皆さんも自分の中に基準を持てるように頑張りましょう。

4.そして判断する

あくまで一例ですが、フローチャートっぽくまとめてみました。
※ガメイとマスカット・ベーリーAは最後にどちらか判断するものとして、ここではひとまずひとくくりで考えます。

ピノ・ノワール=P
ガメイ=G
サンジョヴェーゼ=Sa
テンプラニーリョ=T
ネッビオーロ=N
シラー(シラーズ)=Sy
メルロ=M
カベルネ・ソーヴィニヨン=C

外観
色調から三つにわけます。

a 淡くて赤っぽい → おそらくP(ピノ・ノワール)、もしかしたらG
b 濃くて赤っぽい → G、Sa、T、N、Sy
c 濃くて紫っぽい → Sy、M、C

香り
香りのタイプでさらに五つにわけます。

a 外観淡赤/香り「赤い果実」系 → ほぼP、もしかしたらG
b1外観濃赤/香り「赤い果実」系 → G、N、Sa、Sy、T
b2外観濃赤/香り「黒い果実」系 → (可能性ありN)、Sy、Sa、T
c1外観濃紫/香り「赤い果実」系 → Sy、(可能性ありN、Sa、T)
c2外観濃紫/香り「黒い果実」系 → Sy、M、C

・味わい
渋味・酸・ボリュームを意識して判断します。

a 淡赤/「赤い果実」系→ほぼP、もしかしたらG
・香りも味わいも酸が奇麗で、それほど複雑な感じがしない。渋味もないわけではない。→ピノ・ノワール
・香りがやや単調で、イチゴキャンデーっぽさとバナナっぽさが前面に出ている。渋味を感じない。→ガメイ

b1 濃赤/「赤い果実」系 → G、N、Sa、Sy、T をさらに分類します。

渋味 全体的なボリューム
弱い→軽め→G
弱い→重め→Sa、T
強い→重め→N、Sy

・Sa、T:テンプラニーリョの方が丸く、サンジョヴェーゼの方が酸をより感じます。
・N、Sy:ネッビオーロは強くて渋く、フレッシュさに欠けます。シラーはより緑っぽく(オリーブ)、よりスパイシー。酸の質が違います。

b2 濃赤/「黒い果実」系 → 可能性ありN、Sy、Sa、Tは上記と同様に考える。

C2 濃紫/「黒い果実」系 → Sy、M、C酸味が一番強いのがシラー、丸く滑らかなのがメルロー、渋味が強く四角いものがカベルネ・ソーヴィニヨン。

あとは樽のニュアンスや熟したニュアンス、粘性を確認して生産国を選びます。

…なんて、すんなりいくわけがありません。色合いの濃淡にしても、赤い果実の香りのニュアンスにしても微妙なことが多く、渋味、酸、ボリューム感を上記のように明確に判断することは難しいものです。

最初はうまく感じられないものなので、あまり深く悩まずにどんどんこなしていきましょう。このワインはこちらのものよりもちょっと渋いかな?ってなところから始めてそれらの経験を重ねていってください。数ヵ月後には自分の基準がなんとか出来上がり、ブドウ品種を探し当てられるようになることを目指します。ヴィンテージや生産地、生産国などは後回し、もしくは勘でもいいくらいです。

テイスティングの話をもう少し続けます。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩
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