ブルゴーニュの基本「ブルゴーニュのラベル、ちゃんと読めますか?」

第26回
おはようございます。
アっという間に二月も半ばにさしかかろうとしています。お雑煮を食べながら過ごしたのんびりとした日々が遠い昔のことのように思えます。このように時間はアッと言う間に過ぎてしまいます。
ソムリエ試験対策に関してはまだあわてる必要はありません。あわてる必要はありませんが、そろそろ意識し始めましょう。
さて、今日からブルゴーニュです。
先日学んだボルドーと双璧をなす産地ですが、栽培されるブドウはもちろん、生産者の規模からAOCの区分まで全く異なります。ボルドーとは違ったとらえ方をする必要があるわけです。
松岡さんが寄稿したブルゴーニュの記事が、基本を学ぶ上でとても参考になります。まずはこの記事を読んでみて下さい。
ボルドーはシャトー〇〇って感じでまだわかるのだけど、ブルゴーニュは同じ名前の違うラベルのワインがたくさんあってとっても難しい。 脱ワイン初心者、ブルゴーニュワインを楽しむための基本です。
『例えば、Gevrey‒Chambertinってワインがたくさんあって、どう違うのかわからないんです』
こちらはアルマン・ルソーさんが造ったGevrey‒Chambertin(ジュヴレ・シャンベルタン)
※ラベル下部にあるDOMAINEとはドメーヌと読み、ワイン生産者を指します。
こちらはデュガ・ピィさんのGevrey‒Chambertin
こちらはブリューノ・クレールさんのGevrey‒Chambertin。さらに、Gevrey‒Chambertin村にあるClos St Jacques(クロ・サン・ジャック)という名の畑のブドウから造られたワイン。
※ブルゴーニュの場合、村の名前の下に書かれた名称は畑を指していることが多い。『まず、Gevrey‒Chambertinというフランスを代表する赤ワインを産する村がブルゴーニュ地方にあります。上記三つのワインはその村で収穫されたブドウから造られたワインです。そして、Gevrey‒Chambertin村には数十人の生産者がいます。
日本的に言えば、新潟県産のコシヒカリを佐藤さん、山下さん、伊藤さんなど、いろんな農家さんが作っているイメージです。さらに、ワインに畑の名前が付いているものは新潟県”魚沼”産コシヒカリと考えるとわかりやすいのではないでしょうか。より特定された優秀な産地(畑)ということです』『うんうん。Gevrey‒Chambertin村には複数のブドウ栽培農家、ワイン生産者がいるから、”Gevrey‒Chambertin”とラベルに書かれたワインがたくさんあるんですね』
最初に登場したアルマン・ルソーさんのGevrey‒Chambertin Clos St Jacques『あれっ、Gevrey‒Chambertin村のワインだけでなく、Clos St Jacquesという畑のワインもいろんな人が造っているんですか?』
『そうなんです。一つのブドウ畑に数人から数十人の所有者がいるんです。ちなみにこのClos St Jacquesは5人です。規模は違いますが、魚沼産のコシヒカリもたくさんの農家さんが作っていますよね。
そして、このアルマン・ルソーさんに限らず多くの生産者がGevrey‒Chambertinという村の名前のワイン以外にもClos St Jacquesのように畑の名前を付けたワインを造ります。さらに生産者によっては他の村にも畑を持っていることがあります』
※ブドウ畑というのは一つの区画、畑の名前は住所と考えてよい。『一つの畑をわけ合っているということ?』
『はい。大昔は一つの畑・区画でしたが、フランス革命(1789年)によって国有化された多くの土地が新興富裕層の手に渡り、その後相続と売却を繰り返したことで一つの畑・区画を多くの所有者でわけ合う形になったんです』
先ほどのブリューノ・クレールさんのMorey Saint-Denis。この生産者がモレ・サン・ドニ村に持っているEn la rue de Vergyという畑のブドウから造られたワイン。
『ブルゴーニュではこのようにいくつかの村に畑を持っていることはとても一般的です』
『少しわかってきました。一人の生産者がいろんな村のいろんなところに畑を持っている事もある、ということですね』
『その通りです。生産者によってはどんどん畑を買い増ししていて、さまざまな村の多くの種類のワインを造っています』
さらにブリューノ・クレールさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze(クロ・ド・ベーズ)というワイン『Gevrey‒Chambertinではなく、Chambertin‒Clos‒de‒Bèzeって…また何かが違うんですか?』
『はい。これまではGevrey‒Chambertin村のブドウで造られたワイン、またはGevrey‒Chambertin村にある特定の畑のブドウから造られたワインという表記でした。
こちらもGevrey‒Chambertin村にある畑なのですが、この ”Chambertin‒Clos‒de‒Bèze”という畑は特に優れたブドウを生み出すとされるGrand Cru(特級畑)として法的に格付けされているんです。そして、この特級畑のみ畑の名前だけでワインを出荷してよいことになっています。ラベルの中央にGrand Cruの文字が見られます』
『はぁ、ややこしい…。ブルゴーニュのワインは村の名前のワインの他に、畑の名前だけが記載されたものがあるということ?しかもその畑にはたくさんの所有者がいる…』
『そうなります。Grand Cru(特級)に格付けされた畑から造られたワインは畑の名前がそのままワインの名称になります。いうなれば”魚沼産”とだけ書かれたコシヒカリといったところでしょうか。ワインの名前として通用するくらい有名で歴史のあるブドウ畑ということです。そして、その畑を複数の生産者が所有していればその分だけワインの種類は増えるということになりす』
※さらに言えば、ブドウを買ってワインを造る生産者もいるので、畑を所有する人以上にワインは存在します。
3度目の登場、アルマン・ルソーさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze
ロベール・グロフィエさんのChambertin‒Clos‒de‒Bèze『なるほど。ブルゴーニュには村の名前のワインから畑の名前のワインまであって、ラベルには例えば同じChambertin‒Clos‒de‒Bèzeと書かれていても、いろいろな生産者の造ったものが存在する。さらに、Chambertin‒Clos‒de‒Bèzeを造っている生産者が他の畑名のワインや違う村のワインを造っていたりする。という事ですね』
『おわかりいただけたようで』
『でも、同じ名前のワインでも生産者が違うと味わいも違うんですよね?』
『もちろんです。同じChambertin‒Clos‒de‒Bèzeでも味わいも価格もさまざまです。ちょっと違うかもしれませんが、同じ江戸前寿司でも札幌ラーメンでも四川料理でも、料理人やお店によって味も価格も違います。ワインも同様に、生産者それぞれの考え方や能力が違いますから、同じ名前(畑)のワインであっても平凡な生産者から本当に素晴らしい生産者まで存在します』
『ブルゴーニュにはワインを産する有名な村がいくつかあって、その村には特別な畑があったりする。そこから知っていく必要があるわけですね』
『最初はそこから入るのがよいと思います。基本的な村を押さえて、特級畑まで興味を持てるようになれば一端のワイン通です。ただ、ワインを造るのは人ですから、ブルゴーニュに限らずワインは最終的には”誰が造ったか”ということが一番大切になってきます』
まとめ
ボルドーは一部シャトー(生産者)に対して格付けがなされている為、生産者名主体でワインが流通しています。
一方、ブルゴーニュではワインに村の名前を表記することが一般的で、加えて畑に格付けがなされているので、ワインが村の名前または畑の名前で出荷されます。そして、どちらかといえば控えめに生産者名が記載されていることが多いのです。
また、相続と売却を繰り返してきましたので、一つの畑に複数の所有者がいること、また、いろんな生産者が他の村を含むいくつかの畑を所有していることもブルゴーニュワインの理解を難しいものにしています。
いかがでしたでしょうか。
ブルゴーニュワインを理解するために、まずはここを乗り越えましょう。乗り越えちゃうと興味深くて面白い世界が待っているのがブルゴーニュです。
ブルゴーニュに初めて接する方には大変だと思います。しかし、ブルゴーニュは世界のワイン愛好家の関心が非常に高い産地。
世界中で愛される素晴らしいワインが造られているということです。→最近の人気ぶり・高騰ぶりはすさまじいものがあります。
明日ではなく、今日少しだけでも頑張りましょう。疲れているのは皆同じです!
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ブルゴーニュの基本
【ブルゴーニュ攻略のためのポイント】
・ブルゴーニュはシャブリ、コート・ドール、コート・シャロネーズ、マコネー、ボージョレにわけられます。それぞれ重要なAOCを覚えることがブルゴーニュの攻略のポイントです。
・特にコート・ドールは地図を頭に入れましょう。→各村が北からどの順で並んでいるかなどが問われます。
・ブルゴーニュのAOCはボルドーとは違い、畑レベルまで細分化されていることが特徴です。そして、近年グラン・クリュクラスの畑の位置を地図上で問う出題が見られるようになりました。
・生産者名(Domaine、Negociant)は基本的に全く覚える必要はありません。例外はコート・ドールのGrand Cruのモノポールです。このモノポールだけは所有者と合わせて覚えましょう。<3>→モノポールに関しては所有者=生産者と考えてください。
目次
A ブルゴーニュのAOCのとらえ方
先ほど紹介した『どうして同じ名前のワインがたくさんあるの?~ブルゴーニュワインの基本』はそれとなく理解していただけたと思いますが、もう少し見てみましょう。
下記の写真を見てください。
こちらはChambolle-Musigny村から産するMusignyというワインです。Musignyというのはこの村にあるグラン・クリュに格付けされた畑の名前で、さらにAOC名でもあります。→単独AOCである理由として村名AOC Chambolle-Musignyは赤のみしか認められていませんが、その中にあるグランクリュAOC Musignyは白ワイン・赤ワイン両方の生産が認められています。
ボルドーでは村名までのAOCしかありませんでした。ブルゴーニュにはこのように畑の名前のAOCが存在するのです。→グラン・クリュのみが畑名のAOCとなります。そんなにたくさんありません…。さらに、これらの畑が多くの造り手によって分割所有されています。
こちらはVosne-Romanee村のグラン・クリュ畑La Romaneeで、AOC はLa Romaneeとなります。さらにモノポールの表示があり、こちらは特定の畑を単一の生産者が全て所有していることを意味します。→グラン・クリュのモノポール<2>は生産者名と合わせて全て覚えなくてはなりません。
一方、シャブリのグラン・クリュは畑名のみの表記ではなく、
Appellation Chablis Grand Cru Controlee(Protegee) + 畑名で表示されます。
AOC名はChablis Grand Cru、畑名は「Les Clos」→この方の造ったシャブリが大好きです!数年前はもうちょっと手に入りやすかったんですが…。
ブルゴーニュを理解するには、AOCやテロワール(ブドウの生育環境)を知る必要がありますが、最後は生産者レベルでの理解が何よりも大切になってきます。とはいえ、ソムリエ試験ではそこまで問われません。興味のある方はこのブルゴーニュの奥深さについて、試験に合格してから取り組んでみるのもよいと思います。はまってしまうとお金がかかりますが、ここ最近はとくに…。
B ブルゴーニュの主要ブドウ品種
白ブドウ
シャルドネ
アリゴテ
黒ブドウ
ピノ・ノワール
ガメイ
こちらもボルドーと違い、基本的にブレンドせず、単一品種でワインが造られます。→上記以外のブドウ品種は何となくでいいです。
本当に理解するには時間もお金もかかるブルゴーニュですが、試験対策としてはAOCレベルの勉強で十分です。とはいえ、フランス全体でAOCが最も多い地方なのですが…。←さすがに全部覚えなくてもよいです。
ちなみにブルゴーニュ、海とは縁遠い内陸に位置していて、高山というほど山の上にあるわけではないですよね。つまり気候は大陸性気候<1>です。
今日の本編はこれだけです。→前説が長すぎましたね。
さて次回、シャブリから始めます。