ジョージアワイン紀行

   

ヴァンナチュールからのオレンジワイン。クヴェブリという大きな甕(かめ)に収穫したブドウを放り込んで蓋をしておけば自然とワインができる。何もしない、できるワインは神のみぞ知る昔ながらのワイン…。

と思っていましたが、認識が180度変わりました。


2018年秋、ジョージアに行って参りました。ドーハ経由で首都トビリシに到着。昼食で軽く(いや、普通に)ジョージアワインを飲んで、いざカヘティ地方へ。

車に揺られる事数時間、夕暮れ時に到着という事で、ちょっと休憩して軽くジョージアワインをテイスティングして、いざ晩餐へ。

ジョージアの郷土料理

お正月に食べるようなクラシックな(だそうです)ジョージア料理の数々でおもてなしいただきました。思っていた以上に、聞いていた以上にとても美味しい!そして、ジョージアワインがこれまた美味しい!正直、東欧の料理は…と思っていましたが、完全に覆されました。

料理の香りとジョージアワインの香りが見事に調和していることに気づきます。
さらに、ジョージア料理はワインが進みます。そして、ほぼ完ぺきなマリアージュ。おそらく、ジョージアの人々は料理との相性なんて考えておらず、いつも一緒に食べて飲んでいるだけだよくらいに思っているのでしょうけど。でもそれが、郷土料理とその土地のワイン。そして、ジョージア人はものすごく飲みます。日本人の数倍と言ってもイイくらいに。楽しくて美味しいはずです。



ただ、食べきれないほどテーブルを埋め尽くすことがおもてなしだそうで、後半は料理の上に料理がお皿が積み重ねられていきます。このような晩餐が最終日までずっと続きました。だから、毎日おなかがパンパンでした。

ジョージアの誇り

ワイン造りの歴史と列強ヨーロッパ、ロシア、またイスラム諸国から蹂躙され続けた歴史。

ジョージアは敬虔なキリスト教の国、石造りの教会が国内のいたるところに点在するようですが、西洋の教会に比べ、どこか陰鬱さ感じます。

ある立ち寄った教会では、ロシア統治時代には内壁のフレスコ画を真っ白に塗り固められたと聞きました。(現在はなんとか修復されていました)


独立してまだ20数年、争いのない時代はなかったと皆口にします。だからジョージアの男は生れながらにして「戦士」なのだそうです。

今や、ユネスコ世界無形文化遺産に認定されたこの”クヴェヴリによるワイン造り”も、ロシア統治時代には禁止されておりました。人々は自分たちが口にする分だけの為に細々とこのクヴェヴリを使い続けたと言います。

歴史の狭間でしっかりと生き、伝えられてきたジョージアのワイン文化。ジョージア人にとってワインは、生活であり、心の支えであり、そして誇りなのだと。

このワイナリーでは伝統衣装を身に付け、剣を持った男たちにお迎えいただきました。

ジョージアワインは、イメージする自然派ワインやオレンジワインではありませんでした。

ジョージアワイン、8000年以上の歴史を誇り、クヴェヴリという大昔からある甕(カメ)で、ワインを造るという。
その大きな甕は地中に埋められており、その甕に収穫したブドウを放り込んで蓋をすると発酵が始まり、自然にワインができる。大昔から変わらない製法、何もしない、出来上がるワインは神のみぞ知る…。

こんなイメージを持って、自然派ワイン、ヴァン・ナチュール系なんだろうなと思って初めてのジョージアに降り立ちました。
しかし、確かにクヴェヴリという大きな甕でワインを造っているのですが、香りも味わいもいわゆるイメージするヴァン・ナチュール、オレンジワインではありませんでした。(自然派ワイン、ヴァン・ナチュールの定義はさておき…)

まず、発酵もブドウをクヴェヴリに入れて放置、何もしないということはなさそうでした。マロラクティック発酵一つをとっても、ある生産者は「絶対に必要だ!」と主張し、次に訪ねた生産者は「やらないよ」と。

※マロラクティック発酵:ワイン中のリンゴ酸を乳酸に変える発酵で、あるタイプのワイン醸造では非常に一般的。


クヴェヴリに温度管理設備を整えている生産者もいれば、タイミングを見てクヴェヴリからクヴェヴリ移し換えるという方もいらっしゃいました。圧巻はパパリ・ヴァレーという元物理学者が造るワイナリーで、科学的見地から完全に数値管理されたワイン造りをクヴェヴリにて行っていました。その数値表を見せていただきましたが、もちろん私にはさっぱりなんのことだかわかりません。

ジョージアワインの多くがオレンジワイン(アンバーワイン)のカテゴリーで、一般的な白ワインとは違った製造工程を経ており、そのオレンジワインとしての香り、味わいを持ちます。

※オレンジワイン=アンバーワイン:一言で言えば、赤ワインの製法で作った白ワインのこと。一般的な白ワインは果皮や種などを取り除いた果汁だけを発酵させますが、赤ワインのように果皮や種なども一緒に発酵させます。

私が知るほとんどのオレンジワインはヴァン・ナチュール系のイメージでした。現在のオレンジワインブームの火付け役となったイタリアの「ラディコン」や「グラブナー」といった生産者たちがいわゆるヴァン・ナチュール系の方たちで、オレンジワイン=ヴァン・ナチュールという図式が確立されたように思います。

しかし、ジョージアでテイスティングした数々のワインは、もっと力強く、そして重心の低いもので、ワインのカテゴリーすら違うように感じました。もちろん、オレンジワイン特有のタンニンの強さをしっかり持ちながら、ヴァン・ナチュール的な軽やかさ、華やかさが特徴ではなく、もっと控えめで無骨ながらも複雑さと奥行きがあるイメージです。(酸のニュアンスは全く違いますが、無骨さと複雑味はロワールのシュナン・ブランに通じるものがあるとずっと思っていました)

特有のややスパイシーで落ち着いた香りと穏やかな柑橘の風味、オレンジワイン特有の渋みとしっかりめの味わいが良いバランスで、そこから複雑さ、ドライな余韻へとつながります。この滋味深い味わいが、幅広く食中酒として、特にシンプルな肉料理系には最適だと知るに至りました。

ジョージアワインと料理の相性

ジョージアでの滞在中、ずっとジョージアワインを飲んでいました。言うまでもありませんが、ジョージア料理との相性は最高です。その土地のワインと料理、長年共に食され飲まれてきたわけで、それぞれが寄り添うことに異論はありません。そして、このジョージア料理、日本人好みの味わいでもあります。

特に、毎回夕食にいただいた豚や鶏の炭火焼との相性は抜群でした。このように炭の香りを纏った肉料理、日本では”焼鳥””焼とん”などとは最高に楽しめると思います。

ジョージアの白ワイン(オレンジワイン)は、柑橘類の香りを、それもレモンやオレンジではなく日本の夏みかんや文旦のような少し穏やかで、優しい渋みを思わせながらも奥行きのある香りを持ちます。加えて、ややスパイシーと感じる独特の風味としっかり目のタンニン、芯のある味わいが特徴的です。
このスバイシーさと心地良い渋みが、炭火焼の風味、豚や鶏の味わい・繊維質からくる食感に同調するのでしょう。

同様に、この程よい渋みと芯のある味わいから、サバやアジ、サワラのような青背の魚との相性も想像できます。これらの特有の風味を持つ魚は軽い赤ワインと相性が良いのですが、近いイメージです。
さらに、この香りと重心の低い味わいは、アジア系の香草やスパイスを使った料理とも存分に楽しめると思います。ジョージアではパクチーとクルミをよく食べるのですが、これらが使われた食卓の香りがもう”ワインと合うよね”という感じで、最高でした。

さらに、私はこの”日本の柑橘の風味”を持つ白ワインをキノコ料理に合わせることがあるのですが、このジョージアの白ワインも今後一つの選択肢になるであろうと考えました。

ある意味無国籍な日本の食卓のイメージに近いジョージア料理。そのジョージア料理に合うワインなので、日本で食べる料理(日本料理とは限定しません)にもジョージアワインは寄り添ってくれるんじゃないかなとイメージしております。




このジョージアワイン、単体でも楽しめますが、やっぱり料理が欲しくなります。この食中酒としての存在が今後、私の中で何かに昇華されるような気がしております。

ジョージアワイン紀行 完結編〜ジョージアからの和歌山オテル・ド・ヨシノ

ジョージアの興奮も冷めやらぬまま慌ただしく準備し臨んだ、青山ラ・ブランシュ田代シェフと銀座タテルヨシノ吉野シェフとのコラボ。帰国後、届いていたメニューを見ることしばし…。田代シェフの代名詞とも言える「イワシとジャガイモのテリーヌ」が目に留まります。

この超スペシャリテは名前の通り、特有の風味を持つイワシを使い、周りにベーコンを纏っていることもあって、ワインペアリングのセオリーでは完全に赤ワイン。

また、ワインと合わせにくいジャガイモが鎮座していることもあり、なんとなく土っぽくて強いMCしていないボジョレ(ラパリュみたいな)を最初にイメージしていました。

※MC=マセラシオン・カルボニックの略:一般的に赤ワインはブドウを圧搾(潰して)して、その果汁を果皮・種と共に発酵させます。このMC法ではブドウを圧搾せずにそのまま丸ごと密閉タンクに詰め込んで一杯にすることで、ブドウ自らの重みでブドウが潰れて自然に醗酵が始まり、この時に出る炭酸ガスがタンク内に充満していきます。この炭酸ガスにより、色素抽出が促進され、また果皮や種から出る渋みが抑えられるためフレッシュで爽やか軽めのワインに仕上がります。ボジョレ・ヌーヴォーの醸造法として有名。今回はこのフレッシュで爽やかではないボジョレをイメージしました。

ただ、この前に提供される燻製した牛タンとフォアグラのテリーヌも赤ワインのイメージ。ここも強いガメイがいいなと思い、しばらく思い悩んでいると、ふとオテル・ド・ヨシノのソムリエールより「せっかくジョージアに行ったんですからジョージアワインをどこかで使いましょうよ」と言われた事を思い出しました。

そして合わせたワインは「クヴェヴリワインセラー ルカツテリ 2016」。

ルカツテリはジョージアを代表する白ブドウ品種です。特有のスパイシーな香りと穏やかな日本の柑橘のような風味、オレンジワインらしい強さと渋みが、イワシ・ベーコンの旨み・風味と良い感じであろうと、無骨ながらも複雑で奥行きのある味わいが、イワシ、ジャガイモ、ベーコンが三位一体となったテリーヌに寄り添うであろうとイメージしました。

結局、私はこの組み合わせを“イメージした”だけで、いただいてはおりませんが(泣)、料理はもちろん、ジョージアワインの美味しさも、そしてマリアージュとしても、たくさんのお褒めの言葉をいただきました。

経験したことが一つの形になる、そんな事を思いながら空になったワイングラスを眺めていました。

ご来店いただいた皆様、ありがとうございました。

ジョージアワイン、想像以上でした!

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