三次試験対策!今年の論述試験について考える。「基本に忠実にいきましょう」
第130回
一次試験もあと残すところ10日になりました。
すでに一次試験を終えてちょっと気が抜けてしまった方、そろそろ気持ちを切り替え、テイスティング対策、(ソムリエ呼称の方は)論述対策も取り組みましょう。今から始めればおそらくなんとかなるはずです。今年は2次試験の開始が早いので、あまりのんびりしている暇はありません。
CBT方式6年目である昨年の一次試験問題、新しい形の出題が登場し面食らった方が大勢いました。今年もおそらく同じような出題があるのでしょう。しかし、”こーざ”で取り上げた過去問・想定問題をしっかりと繰り返していれば正解できる問題もかなり出題されたとも聞いています。そして、今年もまったく同じような感想を多くいただいています。←それをどこまでできるか…が勝負だったと思います。
一次試験期間終了まで、あきらめずに頑張ってください。大丈夫、必ず合格できます。
さて、ソムリエ呼称の方は、テイスティング対策ももちろん大切ですが、同日に行われる論述試験対策も侮れません。こちらは一夜漬けに向かず、コツコツと地味な試験対策を繰り返す必要があります。一次試験が終わったのにまた勉強か…とお思いでしょうが、特にソムリエ呼称の方は職業としてワインを扱うわけです。プロとしての生きていくための知識を身につけると考えて、しっかりと論述試験対策を行ってください。
今回は本年度の論述対策について考えてみます。
ソムリエ試験二次のテイスティング対策関連のご案内
◆「二次のテイスティングをなんとか乗り切るための必勝マニュアル2024+必勝講座」のご案内
→詳しくはこちら◆【名古屋、東京、大阪】ソムリエ試験二次テイスティング対策「実践」セミナー8月・9月開催
→詳しくはこちら
・実践東京28>> 日時 8月28日(水)14:30~17:00
・実践名古屋2>> 日時 9月2日(月)15:00~17:30
・実践東京3>> 日時 9月3日(火)14:30~17:00
・実践大阪9>> 日時 9月9日(月)14:30~17:00
・実践大阪10>> 日時 9月10日(火)14:30~17:00
・実践仙台17>> 日時 9月17日(火)14:30~17:00
◆ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ 二次試験対策メルマガ 登録はこちらから
◆こーざと連動してインスタグラムで日々の勉強をちょっとサポート。フォローはこちらから
→2次試験対策、ちょっとアップします。
合格を信じて前進してください。
三次試験対策! 今年の論述試験について考える。
【論述】を辞書で引くと
ろんじゅつ
意見や考えを筋道立てて述べること。また、その述べたもの。
と書かれています。
以前、この”こーざ”にいただいたメッセージです。
”こーざ”で勉強し、テイスティングセミナー
に参加させていただいて、昨年二次試験までクリアしました。その節はお世話になりました。 ありがとうございました。 ですが…三次試験にパスすることができず苦戦しております。論述の問題に上手く答えることができないようで…。論述試験対策も”こーざ”の方でお伝えいただけるならと思いまして。
二次試験と同じ日に行われる論述試験。昔は口頭試問と呼ばれ、テープで流れる問題を聞いてマークシートに解答するといった時代が長く続きました。その後、数年前まで存在したワインアドバイザー呼称では完全に面接形式で、試験官から直接問題が出され、口頭で答えるといったけっこうハードルの高い試験になりました。その後、アドバイザー呼称がソムリエ呼称と統合された結果、現在の論述試験というスタイルに落ち着いたようです。
2016年から始まったこの論述試験、過去五回は三問の出題でした。三問ですが論述の名の通り、それなりに文章を書かなくてはいけません。これまでの一次試験対策とは違い、ある事柄に対して自分自身の意見を言葉で伝えなくてはならない、またはある事柄について文章で説明できないといけないということ、「言葉にして、文章にして説明する」この点を意識してワインについて勉強する必要があるということです。
始める前にソムリエ呼称受験の方へ
2020年度より、新型コロナ対策として吐器が無くなったため、テイスティングのまえに論述試験が実施されていましたが、2022年の試験から以前の順序に戻りました。
つまり、テイスティングしたワインについて論述が求められるということです。そこはしっかり頭に入れておいて下さい。
それでは、これまでの出題を並べてみたいと思います。
2016年
①「赤ワインを冷やして飲みたい」とおっしゃるお客様に薦めるワインとお料理を提案してください。
② 初めてワインを飲むお客様に、テイスティング赤2(正解はシラーズ:豪)のワインについて説明してください。
③「ひやおろし」とは何か説明しなさい。
2017年
① テイスティング白1(正解は甲州)のワインに合わせてお勧めする料理を提案してください。
②「オレンジワイン」について説明しなさい。
③ 2018年10月30日に施行される新しい「日本ワインのラベル表示ルール」について説明しなさい。
2018年
① テイスティング白2(正解はリースリング:仏)のワインに合う料理とその理由を答えなさい。
② ジョージアワインについて説明しなさい。
③ 日本におけるチリワインの今後の展望について述べなさい。
2019年
① 二次試験においてテイスティングした白ワイン1(正解はアリゴテ)をワインを初めて飲むお客様に説明しなさい。
②「ケソ・マンチェゴ」について説明しなさい。
③ 日本ワインの地理的表示について述べない。
2020年
① ワイン初心者のお客様に自宅で飲むワインをお勧めしてください。
② マスカット・ベーリーAと相性の良い料理を1つあげ、その理由を書きなさい。
③ オーストリアのゼクトg.uについて説明しなさい。
2021年
①カリフォルニア/シャルドネ種の白ワインを飲むお客様に対して、お勧めの料理を 1 つ提案し、理由を含めて説明してください。
② 小売価格 1 万円相当のワインを注文(または購入)したお客様から、「味がおかしい」というクレームがありました。あなたの対応を詳細に説明してください。
③ ワインの生産から消費までの過程において、「サステイナブルな取り組み」の事例を 1 つ挙げて説明してください。
2022年
①テイスティング試験で供出 3 番目のワイン(オーストラリア:シラーズ)と相性が良いと思われる料理を 1 つ挙げ、理由と共に 200 文字以内で説明してください。
② ロゼワインの醸造法とそれぞれのタイプの魅力、楽しみ方について 300 字以内で説明してください。
③ ワインを「熟成させる保管」をするために必要な条件について説明してください。
2023年
①テイスティング試験で供出された1番目のワインをワインショップで販売するにあたり、POP(Point of Purchase)
を作成することになりました。自身のテイスティングに基づき、枠内を自由に使用してコメントを書いて(描いて)ください。
1番目のワイン:ソーヴィニヨン・ブラン 2021 年(フランス/ボルドー)
② ワインにあまり詳しくないお客様からオーガニックワインについて聞かれました。300 字以内で説明してください。
③ 料理に相応しいワインを考察する上でのポイントを述べてください。
さて、どうでしょうか?
まず目を引くのは昨年の①です。まさかPOPを作成しろという問題が出るとは…。
予想していた人は少なかったでしょうが、冷静に考えれば、ワインのセールスポイントを伝えるということは、料理との相性を記述する問題とそこまで大きな違いがあるとも思えません。十分戦える余地のある問題とも思えます。ただ、私もそうですが絵心のない方は余計に焦ったかもしれませんね。普段からポップを作っていれば慣れたものでしょうが、ただ文章を書くのとは違うところで頭を使わされそうです。試験時間が短いだけにゆっくり時間を使うわけにはいきませんから。→実際にこの問題を最後に回した方もご報告の中にいらっしゃったかと。それはまた後の回で。
評価のポイントは模範解答で開示されており、一番のポイントが「買いたくなるか」。文章だけでも評価し、イラストやデザイン性のあるものは特別加点としたとあります。その他、銘柄・ヴィンテージ・価格の記載(ブラインドテイスティング能力部分)や、特徴・味わいの記載、シチュエーション(楽しみ方)、購買意欲をそそる文言などに加点が与えられたようです。
この問題については、出題ワインの解答が試験中に提示されるという精神的な負荷も特徴的でした。後から聞くほうにすれば、少し笑い話になるようなことですが、真剣にブラインドテイスティングに臨んだ受験生にしてみれば、いきなり論述の一問目で不正解を言いわたされるのは相当なショックでしょう。ここは試験の内容以上に心の準備をしておく必要があるかもしれません。論述試験は時間の短い試験ですから、ダメージを受けている暇はないんです。外すことも前提に準備しましょう。
さて、全体に戻りますと、2016年から2019年まではテイスティング試験の後に論述試験が行われていたため「テイスティングしたワインについて書く」という問題が出題されました。2020年~22年は論術試験が先であったため、「マスカット・ベーリーAと相性の良い料理を1つあげ、その理由を書きなさい」や「カリフォルニア/シャルドネ種の白ワインを飲むお客様に対して、お勧めの料理を 1 つ提案しなさい」という問題が出題されました。このように若干スタイルが変わってはいるものの、主要ブドウ品種の特徴と、合わせる料理について、シチュエーションまで想定し文章にして書けるような練習はしておきましょう。→シチュエーション系、ソムリエ協会好きです。例えば、重要な接待での会食において、秋の食材に合わせるなどなど。ソムリエはその日の食事の流れの中で、ワインを選ぶことも仕事ですから。さらに求めるなら、主要ブドウ産地と合わせて、その地方料理との相性について書けるようになればこの項目に関しては万全でしょう。2020年の「マスカット・ベーリーA」に関しては多くの方が”解答”を準備していたのではと思われます。2021年度の「カリフォルニア/シャルドネ」もオールドスタイル・モダンスタイルどちらの場合でも、しっかり方向性が示せていればどちらでも正解すると模範解答に書いてあります。
そして、もちろん今年もテイスティングしたワインに対してもコメントが求められるでしょう。料理なのか、またポップのような題材になるのかはわかりません。正解が明示されるのかも定かではありませんが、ブドウ品種の正解がその段階ではわからないとしても、ご自身が想定したブドウ品種の特徴をしっかり明記しながら解答してください。→後日アップする報告を読んでください。ブドウ品種を間違えていてもしっかりと書いた方が合格されています。以前はブドウ品種を明記しましょうと言っていたのですが、最近の模範解答はブドウ品種の特徴はしっかり書かれていたものの、品種の明記はありませんでした。このことから、今までも品種を外してもそこまで大きな減点にはならず(おそらく加点方式で減点もない)、特徴をしっかりとらえているかが重要だったと考えられます。ブドウ品種を明記した方は、特徴をより明確に記述する分、系統が大きく違わなければ加点要素が大きかったのだと思います。ソムリエコンクール等でも曖昧な解答やコメント無しは間違っているよりもマイナスだと聞きます。→ソムリエとしてはっきりと発言することはとても大切です。曖昧でぼんやりしたことしか言わないソムリエに接客してもらいたいでしょうか。
さて、あと二問はどのようなことが問われるんでしょう。2019年度の「ケソ・マンチェゴ」は試験終了後、ネット上でかなり話題になりました。これまでの流れとはやや違いましたから。2020年の「ゼクトg.u」は一次試験対策をしっかりと行っていた方は取れたでしょう。でも、ほとんどの方が論述で問われるとは思っていなかったであろう項目でした。
ただ、2021年に出題された「サスティナビリティ」については、ソムリエ協会が大好きな、つまりまさに出題しそうな題材でした。準備していた方も多かったのではないでしょうか。
手前味噌ですが、この”こーざ”でも「サスティナビリティ」は絶対に押さえて下さいと明言していました。ソムリエ協会はこのような流行に敏感です。2023年のオーガニックワインも言ってみればサスティナビリティの枠の中です。
ここの出題をピンポイントで予想するのは難しいですが、ちょっと考えてみます。
昨年以前の過去5回、「日本」に関連した出題は必ず見られまました。
2016年度:「ひやおろし」で日本酒でしたが、2017年度:「日本ワインのラベル表示ルール」、2018年度:「日本におけるチリワインの今後の展望」、2019年は「日本ワインの地理的表示について述べよ」となっており、教本の「日本」の箇所をしっかりと読み込んでおくことが大前提でした。残念なのか、2020年はマスカット・ベーリーAでしたが。
その他、「ケソ・マンチェゴ」から「ゼクトg.u」の流れは少々考えさせられます。この手の事柄を文章で”なんとか”説明できるようにならなくてはいけないということ。この二つの並びからその後どうなるかがいまいち読めなくなりました。オーストリアはCBT方式以降、出題が急増しており、注目する必要があったのかもしれません。この流れで考えると、チリ、南アフリカ、NZあたりは狙われるかもしれません。しかし、2022年は、基礎に立ち戻ってワインの保管とロゼワインでした。こちらの考えを見透かしたのでしょうか。→でもロゼワインは世界で流行っています。日本ではいまいちですが。
そして、2023年にはワインと料理のペアリングについてという、やや王道寄りの設問でした。ただ、ここはこの年の教本から「ペアリング」の新章が追加されましたので、勘の良い人はチェックしていたかもしれませんね。このように新しく追加されたところは要チェックです。例えば、最近教本での記述改定が著しいハンガリーのトカイワインや、スペインのシェリーの製法なども狙われるかもしれません。
また、協会のセミナーや機関紙「Sommelier」の中にはヒントがあるのかもしれません。ですから、教本中心の勉強になると思いますが、ソムリエ協会に入会した方は機関紙「Sommelier」もしっかり読んでみましょう。今入会してもバックナンバーを電子書籍版で読むことができます。そして、ある程度頭に入ったところで自分なりにいくつか設問を考えて、その答えを文章で書いてみましょう。まずは、その設問を考える行程が大切で、より理解が深まり、頭の中が整理されます。その後、文章にする練習をしておくことで、想定外の設問であっても何かが書けるようになると思います。→オレンジワインなども機関誌にしっかり載っておりました。
まとめますと、設問を意識しつつ、教本および機関紙「Sommelier」を読み込む。そして、なんとなくピンときた箇所に関して、文章にして書き留める。この項目は満点とはいいませんが、なんとか書けるようになりたいですね。
見方を変えると、論述試験は細かい知識を問うというよりはお客様に質問されるような事柄をちゃんと答えられますか?もう少しつっこんで、ワイン好きのお客様と意見の交換、議論ができますか?というようなことが問われているように思います。一昨年の2つ目の設問(クレーム対応)はやや現場の感覚を要しますが、お客様との対話という意味では同じ系統ですし、2022年の2つはまさにといったところです。→ワイン好きの方はレストランやワイン会などで延々とワインの話をされます。私たちはその方たちと相対さなくてはなりません。もちろん、そのお客様から教わることもたくさんあります。もちろんクレームをいただくことも・・・。
そして、採点基準はわかりませんが、不合格になった方の話を総合すると、あまり書かなかった方、自信がないからといってぼんやり書いた方がダメだったように感じました。ですから、嘘でもハッタリでもいいので、火事場のなんとかで自分の思ったことを、知っていることを総動員して何か書くことです。
今から約1ヶ月半ほど時間があります。自分なりにテーマを想定して←ここが大事です。今年は何が出題されるだろうと考えることに意味があります。書く練習をしましょう。何が出題されるかはわかりません。わかりませんが、とにかく設問を想定してその答えを書くことです。特に、ここしばらく文章を書いていない方は「書く」事にすら慣れていらっしゃらないはずです。
テーマはご自身で考えることが大切なのですが、出題者ならどのような出題にしようかと考えてみました。
・マイクロオキシジェネーションについて○文字以内で説明しなさい。
・近年の日本のワイン造りに関する変貌について思うところを書きなさい。
・信州ワインバレー構想について思うところを書きなさい。
・近年のイギリスのワイン市場について説明してください。
・剪定について時期と効果も含めて説明してください。
・白ワインと赤ワインの製法上の違いについて説明しなさい。
・マロラクティック発酵について説明してください。
・フィロキセラはどのように対処し現在に至っていますか?
・亜硫酸添加のメリット・デメリットを教えてください。
・ウィヤージュとは何ですか?ウィヤージュが特徴的な産地を例に挙げて説明してください。
・ボトリティス・シネレアについて説明してください。
・シュル・リー製法についてその効果も含めて説明してください。
・クヴェヴリについて、出来上がるワインの特徴も合わせて説明してください。
・スキンコンタクトによるメリット、デメリットを例をあげて説明してください。
・アルザス地方のワインの特徴について教えてください。
・モーゼル地方の産地の特徴を説明してください。
・ヴィン・サントとはなんですか?
・リアス・バイシャスについて説明してください。
・シェリーの楽しみ方について、いくつか種類を挙げて説明してください。
・ポートとマディラの製法上、味わいの上での違いを説明してください。
・「Vin de Constance」について説明してください。
・チリ「Entre Cordilleras」について説明してください。
・ワイン産業における日本とNZの現在の関係について説明してください。
・チリワインの日本への輸入量が2位に後退した理由を説明してください。
・トカイワインの「トカイ・アスー」と「エセンツィア」の違いを説明してください。
などなど。上記の問題がそのまま出題されるとは思っておりませんが、このようなタイプの設問が二問目、三問目に並ぶのではないかと考えております。
ソムリエ協会が注目しそうな流行を考えるなら、やはり「サスティナビリティ」、「温暖化」といった時事は多少押さえておきましょう。エネルギーや原材料の高騰なども含め、このあたりの話題には事欠きませんので。教本にもそのあたりの記述はどんどん書き加えられています。
近年はとうとうブルゴーニュやボルドーでも森林火災がおきました。ワイン業界においても「温暖化」は待ったなしの状況になっており、生産者の中でも温室効果ガス削減の取り組みが進みだしています。カリフォルニアでは毎年当たり前のようにワイン畑が消失し、カナダでも大規模な森林火災が起きました。「温暖化」がワインに与える影響は枚挙にいとまがありません。押さえておきましょう。
輸送面のひっ迫なども含め、裏では「ウィズ・コロナ」も終わっていないのですが、2020年に一度関連しているであろう出題がされていますので、ここはそれほどでもないかもしれません。それでも、チリワインの輸入量後退はコロナからのコンテナ問題も寄与しています。また、コロナが明けてインバウンドが復活しはじめました。海外のお客様に日本のワインと日本の料理を勧めるなら?といった設問も考えられます。→もしかしたら日本酒の可能性もありますね。
これまでのワインの経験が問われるわけですが、イメージし、書いて準備しておくことで対処できる確率が上がるはずです。
今後、論述試験対策として過去の受験者の報告を順次アップしていきます。