実践セミナー2023 ワインの解説

号外
9/27
すみません。第2・第4ラウンドの解説の冒頭を修正しました。深夜でボケていたようです・・・。ワインが色々逆になっていたので。
こちらは9/12〜9/26に東京、大阪、名古屋で開催中の実践セミナーのワインの解説です。受講されていない方もイメージトレーニングのつもりで読んでみてください。このイメージトレーニングがスムーズにできるようになれば合格間違いなしです。
※10月上旬に直前セミナー(東京・大阪)を開催しますので、こちらも是非ご覧ください。
ソムリエ試験二次のテイスティング対策関連のご案内
◆「二次のテイスティングをなんとか乗り切るための必勝マニュアル2023+必勝講座」のご案内
→詳しくはこちらをご覧ください。→9/30で今年の販売は締め切ります。◆【東京・大阪】10月開催 二次のテイスティング対策最終章
今からでもなんとかします!そんなにわかっていなくても合格する為の直前セミナー
→詳しくはこちらをご覧ください。→間もなく大阪開催の応募を締め切ります。
実践セミナー2023 ワインの解説
早速始めます。
※青や赤の色付きの文字はそのブドウ品種の一般的な特徴です。
◆第1ラウンド
白ワインが3種並びました。両端の二つはほぼ同じ様子、やや濃さを感じるものの、白ワインとしてごく一般的な色調からはみ出ない感じ。白2はどう見ても最も淡い色調。
3種ともにやや緑がかっており、手を触れずに外観からイメージできることは、白2はやや冷涼な生産地、両サイドは温暖の可能性を残しつつも、冷涼も十分考えられるレベルだということでした。そして樽を使ったシャルドネ系は可能性が低そうかな?というこでしょうか。←樽に入れるということは空気に触れることでもあり、また時間をかけることでもあるので黄色みがまします。ただ、両サイドの色で樽熟成のワインもありますので、あくまで可能性です。白2の圧倒的な淡さは?色調の出ないブドウ品種?などと思いつつテイスティングを始めます。このようにテイスティングを始める前にしっかりとイメージし、道筋をおおまかに想定しておくことがとっても大切です。
白1 ソーヴィニヨン・ブラン/フランス/2021 Alc13%
外観
やや濃さを感じるものの、白ワインとして中庸な外観の範囲。どのように転んでもおかしくない感じ。少しグリーンがかっていると感じられた方はとても順調です。濃淡はやや濃いめ。→ものすごく濃いわけではなく、白ワインとして一般的なレベル。さて、粘性はやや強め。若々しく、どちらかと言えば、温暖な産地かな、黄色が強くないので樽は感じないだろうな、反対にニュートラル系(甲州・ミュスカデ)ではないよねくらいのイメージでテイスティングスタート。
香り
白ワインは三つに分けます。「柑橘主体の爽やか系」「白い花や蜜の華やか系」「樽=シャルドネ」です。
さて、第一印象は酸味を感じそうな溌溂とした風味と奥の方からちょっとだけキンキンとした鉱物的なニュアンスを感じました。その後、この鋭角さから柑橘的な風味が続き、であれば「青さ」がどうなのかと確認したところ、比較的わかりやすく「青さ」がありました。その青さもフレッシュハーブ(フランスのSBの特徴)を刻んでいるときの爽やかなイメージです。→ここで「猫のおしっこ」を感じることも多いそうです。このニュアンスでソーヴィニョン・ブランがわかるという方がたくさんいらっしゃいます。
良く熟したフルーツの印象もあり、もしかしたらパッションフルーツ?という香りも。外観でちょっと温暖かなと感じていただけに、軽やかな溌溂さとフレッシュハーブ感を感じつつも、温暖産地かもと思われた方も多いと思います。柑橘はレモンからグレープフルーツといったところ。もちろん、白い花の香りも存分に感じるのですが、柑橘の方勝っていますし、どう感じても鋭角で樽は感じません。→先ほども触れましたが、樽に入れることで酸化的に進むこととなり、柔らかく丸くより穏やかになる可能性が高いです。鋭角な還元状態と反対です。
溌溂とした鋭角さからの柑橘の風味、そこからフレッシュな「青さ」をしっかり感じてソーヴィニョン・ブランですね、と思えた方はパーフェクトです。
味わい
香りから冷涼な柑橘系をイメージしつつ、味わいで確認。それほど強くないアタックと甘み、ただ、香りの印象から冷涼産地を想定していますが、アルコールのボリュームやや強め。それでも、ここまでアルコール感を感じながら、味わいも鋭角で、酸がしっかり主張しているところがソーヴィニヨン・ブランかなと。香りで「青さ」が取りにくかった方は余韻からの方が感じやすかったかもしれません。
まとめ
外観での判断はやや難しめであったかもしれませんが、香りの溌溂とした感じ、鋭角さから柑橘系の爽やかタイプと判断し、そこから青さを感じられたので、ソーヴィニヨン・ブラン。外観とアルコールはやや強め、香りにも熟した香りがあったので温暖産地(新世界)をイメージしてもしかたないかな、といった感じではありました。ただ、冷涼産地(フランス)を感じるミネラルや酸もあり、難しい判断でした。コメントとしてはフランスなら少し強いイメージ。新世界なら優しいイメージでコメントしていければ完璧です。ブドウ品種を当てるよりもここが最も大切です。アルコールに関しては、近年のフランスは「温暖な年」が続いているとなんとなく思っていてください。
白2 甲州/日本/2021 Alc12%
外観
三つの中でもっとも淡い色調。粘性もやや軽め。外観から強さを感じることなく、この淡さは…と意識しながら香りに進みます。この段階で、甲州やミュスカデをイメージする必要はありませんが、冷涼な感じ、強いブドウ品種ではないであろうと思う必要があります。
甲州は果皮が赤紫色です。ですから、色調は淡いものの、外観になんとなく赤さ、またはややくすんだニュアンスを持つことがあるですが、このワインからはその点をほとんど感じることはありませんでした。→濃淡、粘性で2をマークしました。ここ「外観の第一印象」に連動しており、「2.軽快な」を選択します。同じく、濃淡、粘性で3の場合は「3.成熟度が高い」、4の場合も同様にほぼ紐づけられます。
香り
第一印象は特に果実の香りに乏しく、その一方で特徴的な丁子、日本酒の香りが飛び込んできました。とはいえ、セオリー通り3つのどれかに分けると、華やかな感じはなく、樽も感じず、どちらかといえば爽やか柑橘系に分類して欲しいところ。そして、爽やか柑橘系であれば「青さ」を見つけたいところですが、いまいち香りを感じづらかったかもしれません。というか、あまり香りがしない。少ない感じ。このあまり香りが取れない、もの足りない感じは甲州やミュスカデの特徴です。
味わい
果実味に乏しく、甘みも強さは全く感じさせずドライな印象。このワインは甲州らしく酸もおだやか。→甲州はなかなか酸がうまくのらない。すこし緩いイメージです。
苦味はおだやか、全体的にやっぱりぼんやりしています。味わいもすぐに口の中からなくなってしまいます。余韻に残る丁子の香りと「海の香り」的なニュアンス。これらをミネラルと呼ぶように思いますが、このミネラルがもっと鋭角でツンツンくるような感じであれば、ミュスカデの可能性があります。→海の香り、試験では優先順位は低めかな…と言った感じでした。ミュスカデのほうが強いです。
まとめ
特徴的な丁子の香りや日本酒的なニュアンス。もの足りなさ、はかなさを感じ、このあまり主張しないところが日本的なのかもしれません。
白3 ソーヴィニヨン・ブラン/NZ/2022 Alc13%
外観
白1-1とほぼ同じような外観、やや濃いめの色調、強めの粘性。こちらもどちらかと言えば温暖な産地かな、黄色は少ないなとイメージしてテイスティングスタート。
香り
華やかで白い花系ともとれなくもありませんが、これは柑橘タイプに分類して(グレープフルーツからライム手前くらいでしょうか)、青さを感じて。白1-1よりも強い(太い)青い香り。これがソーヴィニヨン・ブラン・NZです。→白1-1のようにフランスのソーヴィニヨン・ブランの青さはもっと繊細で、フレッシュハーブを刻んでいる時のような香りでしたね。今回はフランスが強かっただけに、ここが判断の分かれ目でした。
この青さ(緑)の強弱を感じることができるようにならなくてはいけません。夏の日の草原にいるような熱感を伴った青さ。さらにマスカットやパッションフルーツなど、フランスワインにはない南国フルーツの華やかな香りを感じることも。→3番に入ったタイミングで、1番のワインの評価を見直したくなった人も多かったのではないでしょうか。
味わい
香りの温暖なニュアンスから思ったほど強くはないアタック。それでも冷涼産地決定というほどでもない。そして、グレープフルーツを思わせる(やや酸っぱい系の)爽やかな酸があり、口中をドライに引き締めます。このドライ感が曲者で、フランスと新世界を悩ませました。それでもフランスのソーヴィニヨン・ブランに比べてアルコールを強く感じました。→表示は一緒ですがおそらく0.5度ほど高いかと思います。香りの太い青さを信じてNZからぶれなかった方は素晴らしいです。
まとめ
白1-1よりも全体的に「熱感」を感じられた方は素晴らしいです。白ワインに限らず、温暖からくる「おおらかさ」は温暖な産地の特徴とも言えますが、今回は難しい選択でした。新世界(NZ)であればもう少し強さがほしいところでしたね。ソーヴィニヨン・ブランに限らず、近年は新世界的な強さを表現しない生産者がどんどん増えています。
また、このワインの香りを経験しているかどうかは大きいと思います。このソーヴィニヨン・ブラン・NZの香り、非常に特徴的でわかりやすいので、数本経験して確認してみてください。そして、特徴的な夏の日の草原にいるような熱感を伴った青さを感じてください。
◆第2ラウンド
白5は第一ラウンドの1、3と同じような外観、白4はもう少し濃く黄色が強い印象。ただ、ものすごく濃いわけではありません。このようにわかりやすく並ぶことは少ないと思いますが、この白5のやや緑色をソーヴィニヨン・ブラン、白4のやや濃いめ黄色をシャルドネかもとほんのりイメージしてもいいかもしれません。→想定通りであれば良し、あれ?これは違うぞと感じた場合はよりその違いを意識できるようになります。このように外観からイメージすることはとても大切で、そのパターンに沿ってテイスティングし、違和感を感じた時に考える。そして、そのイメージの先にあるブドウ品種を想定すべきで、いきなり「私のしっている〇〇に似ているから△△かなぁ」とイメージすると失敗する可能性が高くなります。
赤ワインは「淡い系確定」ということで、ピノノワール・ガメイあたりだといいなぁという感じで進めます。
白4 シャルドネ/仏/2020 Alc13%
外観
白1と白2と比較的近い色調、「この緑っぽさはもしかするとまたソーヴィニヨン・ブラン系かな」とイメージされた方もいらっしゃると思います。→このようにあくまでイメージで、ソーヴィニヨン・ブランであると決めつけてはいけません。かもしれないなと想定し、その後違和感を感じたらすぐに修正する必要があります。粘性はやや強め、先ほどの甲州のような淡さはなく、かといって温暖産地確定の強さではないなと思い香りに進みます。
香り
第一印象は柑橘から続くミネラルや石灰のニュアンス。→こちらはシャルドネというよりも「シャブリ」の特徴ですね。だからシャルドネは難しい。やや還元的な印象。鋭角さも感じつつ…。外観の緑っぽさでソーヴィニヨン・ブランをイメージされた方は、この柑橘や鋭角な印象から青さを探したと思われます。でも、見つからない。さて。→白ワインとしてタイプ分けしづらいタイプです。このような場合は先に味わいに進み、とにかくコメントを埋めてしまうのも一つの手です。外観、味わいはブドウ品種がわからずともコメントを選択できます。どうしてもブドウ品種のイメージが持てなかった場合は、あきらめてこのコメント(ワインの強弱)に全力を注ぎましょう。ブドウ品種をわからない、わからないと考え続けると失敗します。
香りの強弱としては冷涼な印象。果実の凝縮感や強さは感じられません。そして、ここに気づけるかが大きなポイントですが、樽のニュアンスがちゃんとありました。さらに、樽を感じると少しマロラクティック発酵由来の乳酸的なニュアンス(バターやヨーグルトのような)も感じられます。←少し丸くなります。ここに気づけばソムリエ試験的にはシャルドネです。
味わい
樽を感じなかった方も少なくとも冷涼産地をイメージして口に含みます。3.やや強いを超えないアタック、同様に3.まろやかを超えない甘み(むしろソフト)、そして、中程度からやや強めのアルコール。香りのボリュームも考慮して、おそらく冷涼産地であることが確認できました。味わいは香りのやや硬く引き締まった印象とは違い、酸も穏やかで、全体的にバランスよく丸い印象。香りで樽が取れなかった方も、余韻から樽を感じることがあるので意識してみてください。
まとめ
結果として柑橘系はありつつも、しっかり樽があり、青さを感じさせるものはありませんでした。味わいでは丸みがあり、酸味はおだやか、何かが突出して感じられる鋭角さがない、このバランスが樽を使ったシャルドネの特徴の一つです。
2-2 リースリング/フランス/2021 Alc12%
外観
今回も白ワインとしてごく一般的な色調からはみ出ない感じ。ただ、甲州よりも濃い、でもSB2種とシャルドネよりは淡い感じでした。なんにでも転びそうで判断しずらい外観です。どちらかといえば冷涼産地ですが、温暖産地も捨てずらいというイメージで先に進みます。
香り
第一印象は甘いリンゴの蜜、そして白いお花のような華やかさ、ふわっとした香りです。→SBの溌溂としたはっきりとした香りとの違いを感じられた方は素晴らしいです。そして、リンゴ、柑橘が続きます。強弱的には凝縮感や南国フルーツ香等の暖かい感じはありません。外観でどちらか悩ましいところでしたが、これで冷涼な産地なんであろうと想定。
しばらくして、より香りが開き、お香のような香木の香りも感じられます。かなりの奥に、リースリングの特徴と言われる石油香的なニュアンスがありましたが、このワインはかなり微量でした。正直リースリングとわかってないと判別できないレベルです。←賛否ありますが、ペトロール香とも呼ばれ、石油と言っても灯油のようなイメージ。強ければコメントのチェックも必要です。石灰や貝殻などのミネラルも主張しますが、これは華やか系で取るべき香りでしょう。
味わい
香りで冷涼産地を想定した通り、アタックもアルコールからもそれほど強さを感じず、冷涼産地確定。そして、酸味は明確でしっかりと感じます。そして、一番のポイントですが、この酸の質感です。全体的に重心が低いというか、落ち着いているというか、なめらかで独特の質感を持ちます。これがリースリングの酸。一方で、ソーヴィニョン・ブランの酸はいわゆるレモンやグレープフルーツの”スッパイ”系の鋭角な酸味。この違いを理解してください。また、リースリングはそれほど苦みを伴わないことも特徴の一つです。
まとめ
華やかな香り、なめらかで独特の質感の酸とまずまずお手本のようなフランスのリースリングでした。→生産者もですし。
ヴィンテージの影響か、色があまり出ていなかったのでドイツと間違えられてもおかしくなかったとは思います。どちらでもコメント的には問題ないでしょう。
赤1 ネッビオーロ/イタリア/2018 Alc14.5%
外観
淡い系に分類される外観。単体で確認しても明らかに淡い。このまま淡い系だから「ピノかも」で進めて全く問題ありません。途中で違和感を感じるでしょうし。粘性はかなりしっかり、ここですでに違和感を覚える方もいるかもしれません。淡い系なのでピノの想定で香りに進みます。
ただし、しっかりと細かく見てみると縁がしっかりオレンジを帯びているのがみてとれます。明らかに熟成感を感じ、若々しさはない外観でした。ここはしっかり押さえたいところです。
香り
ここでフレッシュな赤い果実であればピノ確定。ですが、違和感、フレッシュな果実どころか、果実以外の要素がたくさんあります。乾いた印象を強く感じます、なんだか変な感じ。この違和感に気づくことが重要です。
見た目と同じく、熟成からの複雑な印象。コメント的にはドライハーブ、タバコ、土あたりが感じ取れました。また、フルーツは乾燥イチジクのような、やや乾燥させた感じ。ラズベリーの香りはあるものの、わかりやすく赤いフレッシュな果実ではないことに気づけた方は正解です。
味わい
アタック・甘みとも強めでした。それでも、しっかりした酸に渋みは収斂性があるといえる強さ。いつまでも口に残っているレベルでした。酸・渋みと共に鋭角な印象。味わいに果実感がしっかり出ていたものの、王道のネッビオーロでした。→サンジョヴェーゼは、どちらかといえば濃い系(ものすごく濃くはない)もう少し穏やかな、でもしっかりとした酸に、それなりにバランスが取れています。
まとめ
淡い系外観で、香りが取りづらくてフレッシュさがなく、味わいで強い渋みと全体的に鋭角なニュアンスでネッビオーロです。
◆第3ラウンド
どちらかと言えば、淡い系赤ワインが3種。どれも濃い系を外しきれない微妙な色調でしたが、かといって濃い系に振り切れる色調ではありませんでした。原則、「淡い系=ピノ・ノワールかも」との想定をしっかり頭に入れてテイスティングを始められるようにならなくてはいけません。
赤4が、この中では最も濃い色調。もしかすると、「淡い系」ではなく難敵「淡い系ではないけど濃いとも言い切れない」という毎年受験者をまどわせる難しいタイプかもしれません。でも、その時はみんな悩みます。最後はブドウ品種を捨ててもいいくらいなので、そのつもりで進めましょう。→セミナーでもお伝えしましたが、わかりやすく赤2→赤4に、紫のトーンがグラデーションしていました。「紫がかった」「若い状態を抜けた」の基準としてすごく良い教材でした。覚えておいてください。
赤2 マスカット・ベーリーA/日本/2021 Alc13%
外観
ピノ・ノワールを考慮しつつ、違和感を感じた時に他を考えようというタイプの外観。淡い系の中でも紫の印象がつよい。やや濃い色調で、むしろガメイやMBAを視野に入れておく必要があります。→この2つはピノより濃い時がままあります。若いワインであろう。粘性も”やや強め”で、確定はしきれずに香りへ。
香り
赤系果実であることは間違いありません。完全にフレッシュな赤果実です。ですが、それ以上に圧倒的に感じる甘さ。キャンディーや綿あめのような甘やかな香りに気づいてください。
ここで違和感を感じた方はその方向で進めましょう。全体としてはちょっともの足りないんです。単調というか、深み、奥行きがない。そして、この甘い香りです。でも、ジャムのような凝縮した新世界的な甘さではない…。
この綿あめのような、イチゴキャンディーのような平坦な「甘ったるさ」でしっかり違和感ととらえられれば大正解。そう思ってさらに探ると日本のワインに感じやすい丁子のニュアンスが。
淡い系の外観からピノ・ノワールの想定で違和感(単調で物足りない、平坦でより甘い)を感じた時のみ検討すべき仲間に、ガメイとマスカット・ベーリーAがあります。ピノ・ノワールは、それなりに複雑で、奥行き・広がりを香りにも味わいにも感じ、比較的長い余韻を持ちます。一方で、ガメイとマスカット・ベーリーAは、果実味をわかりやすく感じるもののイメージとして香りも味わいも“パッと開いてスッとなくなる”単調で奥行きがないイメージで、余韻も短いです。特にマスカット・ベーリーAは、ガメイ以上に独特の甘い香りをもちます。ガメイはここまで甘さを感じず、もう少し複雑さがあります。そして、まるでブドウジュース(ブドウ香料)のような香りを感じるのもMBAの特徴です。
味わい
”やや軽め”のアタックに“やや軽め”から”中程度”のアルコール、思いのほかドライな味わいに驚いた方もいたのでは。収斂性はほとんど感じません。キレよくまとまっていますが、余韻は短い。
まとめ
まず、この単調さ・甘さを理解してください。非常に特徴的です。ただ、あきらめる方は軽いなぁ、弱いなぁと思ってピノでもかまいません。
赤3 ピノ・ノワール/NZ/2021 Alc13.5%
外観
一応、淡い系に分類したものの…ちょっと引っかかる感じ。ただ、この外観で「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」はありません。考えなくてもいいですが、カベルネ・フランならあるかもしれませんが。
ここで悩んでも仕方がないので、上記のように思いつつピノ・ノワールであったらいいなと想定。やや紫のニュアンスも取れ若々しい印象。そして、粘性はやや強め。となると、淡い系(ピノ)で暖かいところではないかとあたりをつけて、赤い果実を期待して香りに移ります。この微妙な外観、もし、赤い果実でなければその時は…。
香り
非常にわかりやすいフレッシュな赤い果実の香りでした。よかった!これは(ちょっと濃いけど)淡い系で赤い果実でピノ・ノワール確定です。ラズベリーからブルーベリーが当てはまる赤い果実の香りに、華やかなバラや牡丹の香りのコメントが並びます。特徴的なピノ・ノワールの香りです。
濃淡・粘性から考えると温暖地域かもと思いつつ、ここの良く熟した果実味。ただ、ジャム感までいかない…けど、この強さは…外観の印象からもどちらかといえば温暖な産地であろうと。
味わい
アタックはやや強め、甘みが伸びる感じです。さらに、アルコールも中程度からやや強めとこちらも温暖な部類。この強さに対して酸がしっかりしており、濃い系ほどではありませんが、ほどほどに心地良い渋みもあります。凝縮感があり温暖な産地確定!というほどではなけど、温かい印象で新世界。
まとめ
先ほどのマスカット・ベーリーAとは違い、ピノ・ノワールは細くても長く伸びます。この伸び、広がりがピノ・ノワールと言っても過言ではありません。
また、このワインの少し強い感じ、NZ・ピノ・ノワールとすれば納得がいきます。ピノ・ノワール関してはここ数回連続NZが出題されています。強弱的にピノ・ノワールの生産国を並べると、フランス→NZ→→→→アメリカで、NZは完全にフランス寄りのイメージです。
赤4 テンプラニーリョ/スペイン/2019 Alc14.5%
外観
濃い系にしたいのですが、革新が持てない微妙な色調。そして、粘性も強く、濃い系で「シラーまたはカベルネ・ソーヴィニヨンだったらいいなという」のイメージで香りに進みます。→最終的にこのブドウ品種はテンプラニーリョで、近年のこのブドウ品種の協会発表の模範解答ではほぼ「ルビー/ラズベリーレッド」が正解になっています。今回も濃いですが、やや赤さや明るさを感じる微妙なラインでした。
香り
第一印象は粘土のような土っぽさ、そこからくるシダのような土っぽい森の香り。黒果実はその奥に…。フレッシュ…と取れなくもない香りはありましたが、私はそれ以上に干しプラムのような少し凝縮した雰囲気を感じました。陰干ししたブドウのニュアンスに近いです。といっても、新世界的なジャムのような若々しい凝縮感ではありません。そして樽。樽からくるであろう甘いヴァニラの香りがありました。この香りはアメリカンオークの印象。
ここで違和感を感じなかった方、または熟成系(イタリア・スペイン品種)を捨ててシンプルに行く方は、「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」の濃い系王道パターン、この凝縮感とアメリカンオークの印象から温暖地域で進めていただいても問題ございません。→セミナーでの手応えを感じるに、そのような方も多かったと思います。
さて、濃い系で、香りも確かに黒系果実だけど、なんだかちょっと違和感。フレッシュとは言い切れない?どこか赤さを感じ、温暖産地にもっていくにはやや弱い。また、フランスにするにはちょっと強く、このアメリカンオークの印象はありえない…。
この違和感を感じたときに初めて熟成系を思い出してください。初めから「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」以外のブドウを考える必要はありません。→何度も言っておりますが、ブドウ品種を当てることが合格につながる試験ではありませんし、特に経験の少ない方がご自身の知っているブドウ品種から探ってうまくいくとは思えないからです。
違和感から熟成系をイメージするとタバコや土っぽさなど果実味以外の香りがかなり主張していることに気づきます。ちょっと不思議な感じ。そうなると、ソムリエ試験二次的にはイタリアかスペインを検討します。
味わい
アタックもアルコールも3~4の間で、凝縮感やアルコールのボリュームからくる甘みも強めですが、新世界とは違った酸、そしてドライな印象も感じられます(違和感2)。香りと同様に全体的に丸く、なめらかですが、やや強めのタンニンが主張しています。余韻はやや甘みを伴い、そしてしっとり。
まとめ
粘土のようなしっとり感とアメリカンオークの香り。全体的に丸く、やや甘みを伴い、酸も渋みもそれなりにある。このワイン、まずまず典型的なテンプラニーリョ(リオハ)です。
攻略としては違和感を感じるかどうか。ここに尽きます。ですから、初めから熟成系を想定するのではなく、あれっ?と思ってから検証する。これがソムリエ試験的には正解です。最初から幅を広げてアレコレ悩む理由はありません。
◆第4ラウンド
淡い系に引き続き、濃い系が並んでいます。両サイドは「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」であったらいいなと想定する外観です。ただ、特に赤5はMAX濃いわけではない。そして、もしかするとメルロかもマルベックかもしれませんが、難しいことを考えて取るべきコメントを落としては意味がありませんので、そんなブドウ品種は無視して進めます。真ん中の赤6は若干淡い系です。このワインは両サイドとはタイプが違うかもな、と思いながら進めます。
細かく見てみると、赤5がやや赤く、赤6が最も紫で赤7がその間くらいだったでしょうか。→そして、それらはその通りヴィンテージを表していました。いつもこうというわけではありませんが。
赤5 カベルネ・ソーヴィニヨン/米/2019 Alc14.5%
外観
またもや濃い系なんですが確定しきれない微妙な色調。ただ、MAX濃いわけではない。そして、他に比べてやや縁が赤い。熟成とかそんな感じではなく、ほんの些細なことですが、若いのか、ちょっと時間が経ったのかわかるだけでも全然違います。ヴィンテージは当たらないので、当てなくていいのですが。
粘性も強い。「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」パターン、外観の方向性でまずは見ていくべきです。そして、シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンどちらも強いワインになるため、濃いけどMAXではないレベルであればフランスか新世界かは香り以降で判断です。
香り
果実は赤か黒かといえば、間違いなくフレッシュな黒果実。良く熟した感はあるものの、ジャムほどの強さは無く落ち着いていました。
さて、濃い系でフレッシュな黒果実を感じましたからカベルネかシラーのどちらかであろうと。三角形より鋭角なシラーズなのか、八角形複雑なカベルネ・ソーヴィニヨンか。このワインから針葉樹っぽい緑のニュアンス(杉のような)に、タバコや土。これらの要素と果実味が相まってより複雑な印象。
味わい
アタックはしっかり強さを感じました。甘みは豊かなのちょっと手前、アルコールはけっこう強い。香りは抑制がきいていましたが、味わいは甘みから続くアルコールのボリュームまでグーンと盛り上がる感じで余韻まで続きました。果実味、酸、渋みそれぞれがしっかり主張し、それなりにまとまっていることからもカベルネ・ソーヴィニョン。フランスを検討した方はこの味わいで新世界に振ってほしい強さがありました。
まとめ
カベルネかシラー、どちらなのか。難しいところでしたが、何かが突出している「三角形で鋭角なシラー」というよりはより多くの要素が主張しつつ複雑な「八角形で複雑なカベルネ・ソーヴィニヨン」の方かなと。
また、ワインの強弱としても、強烈に強いというわけではなく、新世界としてはやや線が細いイメージ。ちょっと冷涼なのか標高が高いのかもしれません。アメリカンオークのわかりやすい樽感も抑えめでした。
新世界の濃い系は、カベルネ・ソーヴィニヨンかシラーを取り違えてもコメントはほとんど変わりませんから問題ありません。
赤6 シラー/仏/2021 Alc13%
外観
両サイドに比べると明らかに淡い、向こうが透けて見える色調でした。そして、紫の若々しい印象。やや濃い目ではありますが迷わず淡い系を主軸に置く外観でした。ただ、それにしては粘性がしっかりと感じます。この品種には赤いトーンがあるため、外観ではピノ・ノワールをイメージされた方も多かったと思います。ですがそれでOKです。
香り
香りで、さらに違和感です。赤というより系果実が主体。フレッシュな果実です。イメージとしては、ちらかといえば冷涼産地(フランス)なんですが、ピノをあまり感じられません。
また、シラーとして特徴的な黒胡椒の香りや、マリネしたオリーヴの香りを明確に感じました。オリーブはフランス・シラーに特に顕著に感じます。また、どこか酸味を思わせる香りがあります。全体として鋭角な酸を感じる香りです。
この香りで、シラーをしっかり感じた方も多かったようです。ですがシラーと判別できた方が良いのか、良くないのかはチェックするコメント次第です。
味わい
どちらかと言えば冷涼(フランス)の印象で味わいまで進みました。が、アタック、甘み、アルコール全て思ったより強め。温暖産地はありまえせんが、淡い系のワインにしては、強いよねって感じでした。正直新世界の強めのピノ・ノワールでも強弱は間違ってないレベルでした。
まとめ
外観から全体的な強さも含め、例年のフランスシラーより明らかに弱かったです。このタイプが出た場合、シラーとわからず淡い系でコメントしてもそれなりに得点できるはずです。さらに突っ込んで言えば、たとえ香りでシラーを判別できたとしても、そのまま素直に濃い系のシラーのコメントを付けるのは危険です。王道ではないことを意識して、弱いコメントを付けていく臨機応変な対応が求められます。
赤7 シラーズ/オーストラリア/2020 Alc14.8%
外観
本日一番安心感のある「濃い系」、最強MAXに濃いわけではありませんが、粘性も強く、こちらは確実にカベルネ・ソーヴィニヨンかシラーのイメージでテイスティングを進めます。
香り
第一印象は甘やかでフレッシュな黒果実、その後強い樽の風味。ジャムと言ってもよいくらいの強い果実感。さらに、メントール的な清涼感もあり、温暖産地確定。そして非常にわかりやすく、ユーカリを感じました。→ユーカリはオーストラリアで最も感じる香りですが、南半球の特徴でもあります。近くにたくさん群生しているユーカリが直接香りをまき散らしており、それらがワインに含まれています。
味わい
味わいも強くて濃い。味わいからも新世界にもって行けたと思います。今回で最もインパクトのある味わいでした。
さて、新世界のカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーの見分けは非常に難しいです。先ほどお伝えしように八角系のカベルネ・ソーヴィニヨンと鋭角な(三角形)シラー(ズ)なのですが、温暖な地域特有の強さ、濃さ、果実味がその八角形、三角形の辺を押し出し膨らませ丸みを帯びるため形が似るためです。ですから、この二つを取り違えてもそれほどマイナスにはなりません。
まとめ
このワイン、わかりやすくユーカリを感じました。ソムリエ試験的にわかりやすいユーカリ香はオーストラリアと考えてよく、オーストラリアであれば確率的にシラーズでしょうと言うことで、ユーカリを感じれば自動的にシラーズでもいいくらいです。
新世界の濃い系赤はそれほどブドウ品種を意識する必要はありません。
ーーーー
セミナーにご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
牧野 重希