実践セミナー2024 ワインの解説(仙台開催参加の方は見ないでください。)
号外
※仙台開催に参加を希望されている方はまだ見ないでください。
こちらは8月9月に東京、名古屋、大阪、仙台で開催した(している)実践セミナーのワインの解説です。受講されていない方もイメージトレーニングのつもりで読んでみてください。このイメージトレーニングがスムーズにできるようになれば合格間違いなしです。
※9月下旬、10月に直前セミナー(東京・大阪)を開催しますので、こちらも是非ご覧ください。
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実践セミナー2024 ワインの解説
早速始めます。
※青や赤の色付きの文字はそのブドウ品種の一般的な特徴です。
◆第1ラウンド
白ワインが3種並びました。右端の二つはほぼ同じ様子、1がやや濃さを感じるものの、白ワインとしてごく一般的な色調からはみ出ない感じ。白2は最も淡い色調。
3種ともにやや緑がかっており、手を触れずに外観からイメージできることは、白2と白3はやや冷涼な生産地、白1は温暖の可能性を残しつつも、冷涼も十分考えられるレベルだということでした。そして樽を使ったシャルドネ系は可能性が低そうかな?というこでしょうか。←樽に入れるということは空気に触れることでもあり、また時間をかけることでもあるので黄色みがまします。ただ、両サイドの色で樽熟成のワインもありますので、あくまで可能性です。白2の圧倒的な淡さは?色調の出ないブドウ品種?などと思いつつテイスティングを始めます。このようにテイスティングを始める前にしっかりとイメージし、道筋をおおまかに想定しておくことがとっても大切です。
白1 ソーヴィニヨン・ブラン/フランス/2022 Alc13%
外観
やや濃さを感じるものの、白ワインとして中庸な外観の範囲。どのように転んでもおかしくない感じ。少しグリーンがかっていると感じられた方はとても順調です。濃淡は淡いからやや濃いめ。→ものすごく濃いわけではなく、白ワインとして一般的なレベル。さて、粘性はやや強め。若々しく、どちらかと言えば、温暖な産地だろうか、黄色が強くないので樽は感じないだろうな、反対にニュートラル系(甲州・ミュスカデ)ではないよねくらいのイメージでテイスティングスタート。
香り
白ワインは三つに分けます。「柑橘主体の爽やか系」「白い花や蜜の華やか系」「樽=シャルドネ」です。
さて、第一印象は酸味を感じそうな溌溂とした風味とリンゴを思わせるような果実の香りを感じました。その後、この鋭角さから柑橘的な風味が続き、であれば「青さ」がどうなのかと確認したところ、かすかに「青さ」がありました。その青さもフレッシュハーブ(フランスのSBの特徴)を刻んでいるときの爽やかなイメージです。ただ、非常に控え目な青さで、確信を持つに至らない方も多かったでしょう。→ここで「猫のおしっこ」を感じることも多いそうです。このニュアンスでソーヴィニョン・ブランがわかるという方がたくさんいらっしゃいます。
良く熟したフルーツの印象はあるものの、パッションフルーツのような南国の香りは無し。外観でちょっと温暖かなと感じていただけに、すこし軌道修正。軽やかな溌溂さとフレッシュハーブ感を感じつつ、柑橘はレモンからグレープフルーツといったところ。もちろん、白い花の香りもありますが、柑橘の方勝っていますし、どう感じても鋭角で樽は感じません。→先ほども触れましたが、樽に入れることで酸化的に進むこととなり、柔らかく丸くより穏やかになる可能性が高いです。鋭角な還元状態と反対です。
溌溂とした鋭角さからの柑橘の風味、そこからフレッシュな「青さ」をしっかり感じてソーヴィニョン・ブランですね、と思えた方はパーフェクトです。
味わい
香りから冷涼な柑橘系をイメージしつつ、味わいで確認。それほど強くないアタックと甘み、ただ、香りの印象から冷涼産地を想定していますが、アルコールのボリュームやや強め。それでも、ここまでアルコール感を感じながら、味わいも鋭角で、酸がしっかり主張しているところがソーヴィニヨン・ブランかなと。香りで「青さ」が取りにくかった方は余韻からの方が感じやすかったかもしれません。青さが取れなかった方はニュートラルに振っても良いかなと思えるおとなしめの香りでした。
まとめ
外観での判断はやや難しめであったかもしれませんが、香りの溌溂とした感じ、鋭角さから柑橘系の爽やかタイプと判断し、そこから青さを感じられたので、ソーヴィニヨン・ブラン。外観とアルコールはやや強め、香りにも熟した香りがあったので温暖産地(新世界)をイメージしてもしかたないかな、といった感じではありました。ただ、冷涼産地(フランス)を感じるミネラルや酸もあり、新世界を確信できるほどのフルーツ感はありませんでした。コメントとしては新世界なら優しいイメージでコメントしていければ問題ないはずです。ブドウ品種を当てるよりもここが最も大切です。
白2 甲州/日本/2022 Alc12%
外観
三つの中でもっとも淡い色調。粘性も軽め。外観から強さを感じることなく、この淡さは…と意識しながら香りに進みます。この段階で、甲州やミュスカデをイメージする必要はありませんが、冷涼な感じ、強いブドウ品種ではないであろうと思う必要があります。
甲州は果皮が赤紫色です。ですから、色調は淡いものの、外観になんとなく赤さ、またはややくすんだニュアンスを持つことがあるですが、このワインからはその点をほとんど感じることはありませんでした。→濃淡、粘性で1~2をマークしました。ここ「外観の第一印象」に連動しており、「2.軽快な」を選択します。同じく、濃淡、粘性で3の場合は「3.成熟度が高い」、4の場合も同様にほぼ紐づけられます。
香り
第一印象は特に果実の香りに乏しく、その一方で特徴的な丁子、日本酒の香りが飛び込んできました。とはいえ、セオリー通り3つのどれかに分けると、華やかな感じはなく、樽も感じず、どちらかといえば爽やか柑橘系に分類して欲しいところ。そして、爽やか柑橘系であれば「青さ」を見つけたいところですが、いまいち香りを感じづらかったかもしれません。というか、あまり香りがしない。少ない感じ。このあまり香りが取れない、もの足りない感じは甲州やミュスカデの特徴です。
味わい
果実味に乏しく、甘みも強さは全く感じさせずドライな印象。このワインは甲州らしく酸もおだやか。→甲州はなかなか酸がうまくのらない。すこし緩いイメージです。
苦味はおだやか、全体的にやっぱりぼんやりしています。味わいもすぐに口の中からなくなってしまいます。余韻に残る丁子の香りと「海の香り」的なニュアンス。これらをミネラルと呼ぶように思いますが、このミネラルがもっと鋭角でツンツンくるような感じであれば、ミュスカデの可能性があります。→海の香り、試験では優先順位は低めかな…と言った感じでした。ミュスカデのほうが強いです。
まとめ
特徴的な丁子の香りや日本酒的なニュアンス。もの足りなさ、はかなさを感じ、このあまり主張しないところが日本的なのかもしれません。
白2 甲州/日本/2023 Alc12% (大阪・仙台)
外観
三つの中で中間くらいの濃さでした。しかし粘性は軽め。こちらも外観から強さを感じるほどではありませんが、先ほど説明した赤紫色の果皮からくる外観の赤い反射がやや見て取れました。甲州で決めつけられるほどの赤さではなかったので、難しいところです。グリを帯びたを付けるかどうか少し悩むレベルでした。
香り
第一印象は柑橘や青リンゴの果実の香り、その一方で特徴的な丁子、日本酒の香りが飛び込んできました。とても甲州らしい香りと言えました。とはいえ、セオリー通り3つのどれかに分けると、こちらも華やかな感じはなく、樽も感じず、どちらかといえば爽やか柑橘系に分類して欲しいところ。そして、上記の甲州と同じく「青さ」が無いので、甲州やミュスカデにいきたいところです。また、若干ですが酵母系(パン・ドゥ・ミ)の香りもあったように思います。
味わい
なかなか酸がうまくのらない甲州らしいすこし緩いイメージそのものでした。
苦味はおだやか、全体的にやっぱりぼんやり。余韻も短い。余韻に吟醸香を良く感じました。
まとめ
特徴的な丁子の香りや日本酒的なニュアンス。さらに若干グリを帯びた外観。あまり主張せず柔らかい味わい。やはり甲州です。
白3 ソーヴィニヨン・ブラン/NZ/2023 Alc13%
外観
かなり淡い色調、緑のトーンがしっかりでており、冷涼産地よりのイメージでテイスティングスタート。
香り
第一印象、3つの中で最も香りが主張していました。華やかで白い花系ともとれなくもありませんが、これは柑橘タイプに分類して(グレープフルーツからライム手前くらいでしょうか)、青さを感じて。白1よりも強い(太い)青い香り。これがソーヴィニヨン・ブラン・NZです。→白1のようにフランスのソーヴィニヨン・ブランの青さはもっと繊細で、フレッシュハーブを刻んでいる時のような香りでしたね。今回はお手本のようなNZ・SBの香りでした。
この青さ(緑)の強弱を感じることができるようにならなくてはいけません。夏の日の草原にいるような熱感を伴った青さ、雑草感。さらにマスカットやパッションフルーツなど、フランスワインにはない南国フルーツの華やかな香りを感じることも。
味わい
香りの温暖なニュアンスから思ったほど強くはないアタック。それでも冷涼産地決定というほどでもない。そして、グレープフルーツを思わせる(やや酸っぱい系の)爽やかな酸があり、口中をドライに引き締めます。それでもフランスのソーヴィニヨン・ブランに比べて果実のボリュムを強く感じました。香りの太い青さを信じてNZからぶれなかった方は素晴らしいです。
まとめ
白1よりも全体的に「熱感」を感じられた方は素晴らしいです。白ワインに限らず、温暖からくる「おおらかさ」は温暖な産地の特徴とも言えます。ただ、味わいについては強すぎない作りで難しさもあったかもしれません。ソーヴィニヨン・ブランに限らず、近年は新世界的な強さを表現しない生産者がどんどん増えています。
また、このワインの香りを経験しているかどうかは大きいと思います。このソーヴィニヨン・ブラン・NZの香り、非常に特徴的でわかりやすいので、数本経験して確認してみてください。そして、特徴的な夏の日の草原にいるような熱感を伴った青さを感じてください。
◆第2ラウンド
白5は第一ラウンドの白1よりやや淡い外観、白4はもう少し濃く黄色が強い印象。ただ、ものすごく濃いわけではありません。このようにわかりやすく並ぶことは少ないと思いますが、この白5のやや緑色をソーヴィニヨン・ブラン、白4のやや濃いめ黄色をシャルドネかもとほんのりイメージしてもいいかもしれません。→想定通りであれば良し、あれ?これは違うぞと感じた場合はよりその違いを意識できるようになります。このように外観からイメージすることはとても大切で、そのパターンに沿ってテイスティングし、違和感を感じた時に考える。そして、そのイメージの先にあるブドウ品種を想定すべきで、いきなり「私のしっている〇〇に似ているから△△かなぁ」とイメージすると失敗する可能性が高くなります。
赤ワインは「淡い系確定」ということで、ピノノワール・ガメイあたりだといいなぁという感じで進めます。
白4 シャルドネ/仏/2022 Alc13%
外観
今日の白で一番濃いめの色調、もしかして樽熟成系のワイン?とイメージされた方もいらっしゃると思います。→このようにあくまでイメージで、決めつけてはいけません。かもしれないなと想定し、その後違和感を感じたらすぐに修正する必要があります。粘性はやや強め、温暖産地確定の強さではないなと思い香りに進みます。
香り
第一印象はリンゴや洋梨、花梨のようなフルーツの香り、そこに続くミネラルや石灰のニュアンス。→こちらはシャルドネというよりも最近の「シャブリ」の特徴に近いかも。だからシャルドネは難しい。あまり第一アロマが強く感じられず、ニュートラルをイメージされた方は素晴らしい。→白ワインとしてタイプ分けしづらいタイプです。このような場合は先に味わいに進み、とにかくコメントを埋めてしまうのも一つの手です。外観、味わいはブドウ品種がわからずともコメントを選択できます。どうしてもブドウ品種のイメージが持てなかった場合は、あきらめてこのコメント(ワインの強弱)に全力を注ぎましょう。ブドウ品種をわからない、わからないと考え続けると失敗します。
香りの強弱としては冷涼な印象。果実の凝縮感や強さは感じられません。
味わい
樽を感じなかった方も少なくとも冷涼産地をイメージして口に含みます。3.やや強いを超えないアタック、同様に2.ソフトなを超えない甘み(ドライもあり)、そして、中程度からやや強めのアルコール。香りのボリュームも考慮して、おそらく冷涼産地であることが確認できました。味わいは香りのやや硬く引き締まった印象とは違い、酸も穏やかで、全体的にバランスよく丸い印象。
まとめ
結果として柑橘系はありつつも、青さを感じさせるものはありませんでした。味わいでは丸みがあり、酸味はおだやか、何かが突出して感じられる鋭角さがない、この全体的に強いバランスがシャルドネの特徴の一つです。このワインはタイプとしては強いミュスカデ、または青さのないソーヴィニヨン・ブランとしてコメントすれば良い結果になると思います。
2-2 リースリング/フランス/2021 Alc12.5%
外観
今回も白ワインとしてごく一般的な色調からはみ出ない感じ。代表的な色すぎて、なんにでも転びそうで判断しずらい外観です。どちらかといえば冷涼産地ですが、温暖産地も捨てずらいというイメージで先に進みます。
香り
第一印象は甘いリンゴの蜜、そして白いお花のような華やかさ、ふわっとした香りです。→SBの溌溂としたはっきりとした香りとの違いを感じられた方は素晴らしいです。そして、リンゴ、柑橘が続きます。強弱的には凝縮感や南国フルーツ香等の暖かい感じはありません。外観でどちらか悩ましいところでしたが、これで冷涼な産地なんであろうと想定。
しばらくして、より香りが開き、お香のような香木の香りも感じられます。また、リースリングの特徴と言われる石油香的なニュアンスがしっかり感じられました。←賛否ありますが、ペトロール香とも呼ばれ、石油と言っても灯油のようなイメージ。強ければコメントのチェックも必要です。石灰や貝殻などのミネラルも主張しますが、これは華やか系で取るべき香りでしょう。
味わい
香りで冷涼産地を想定した通り、アタックもアルコールからもそれほど強さを感じず、冷涼産地確定。そして、酸味は明確でしっかりと感じます。そして、一番のポイントですが、この酸の質感です。全体的に重心が低いというか、落ち着いているというか、なめらかで独特の質感を持ちます。これがリースリングの酸。一方で、ソーヴィニョン・ブランの酸はいわゆるレモンやグレープフルーツの”スッパイ”系の鋭角な酸味。この違いを理解してください。また、リースリングはそれほど苦みを伴わないことも特徴の一つです。
まとめ
華やかな香り、なめらかで独特の質感の酸とまずまずお手本のようなフランスのリースリングでした。→生産者もですし。
赤1 ネッビオーロ/イタリア/2019 Alc13%
外観
淡い系に分類される外観。単体で確認しても明らかに淡い。このまま淡い系だから「ピノかも」で進めて全く問題ありません。途中で違和感を感じるでしょうし。粘性はかなりしっかり、ここですでに違和感を覚える方もいるかもしれません。淡い系なのでピノの想定で香りに進みます。
ただし、しっかりと細かく見てみると縁がしっかりオレンジを帯びているのがみてとれます。明らかに熟成感を感じ、若々しさはない外観でした。ここはしっかり押さえたいところです。
香り
ここでフレッシュな赤い果実であればピノ確定。ですが、違和感、フレッシュな果実どころか、果実以外の要素がたくさんあります。乾いた印象を強く感じます、なんだか変な感じ。この違和感に気づくことが重要です。
見た目と同じく、熟成からの複雑な印象。コメント的にはドライハーブ、紅茶、土あたりが感じ取れました。また、フルーツは乾燥イチジクのような、やや乾燥させた感じ。ラズベリーの香りはあるものの、わかりやすく赤いフレッシュな果実ではないことに気づけた方は正解です。
味わい
アタック・甘みともやや強め。それでも、しっかりした酸に渋みは収斂性があるといえる強さ。いつまでも口に残っているレベルでした。酸・渋みと共に鋭角な印象。味わいに果実感がしっかり出ていたものの、やはりネッビオーロです。→サンジョヴェーゼは、どちらかといえば濃い系(ものすごく濃くはない)もう少し穏やかな、でもしっかりとした酸に、それなりにバランスが取れています。
まとめ
淡い系外観で、香りが取りづらくてフレッシュさがなく、味わいで強い渋みと全体的に鋭角なニュアンスでネッビオーロです。今回のワインは若干やさしさや柔らかさがあったので、ピノだと思ってしまった方も多かったようです。外観の熟成は要注意です。淡さだけで先入観を持ちすぎないように注意しましょう。
◆第3ラウンド
淡い系赤ワインが2種。赤4だけは濃い系を外しきれない微妙な色調でしたが、かといって濃い系に振り切れる色調ではありませんでした。
まず原則、「淡い系=ピノ・ノワールかも」との想定をしっかり頭に入れてテイスティングを始められるようにならなくてはいけません。
赤4が、この中では最も濃い色調。もしかすると、「淡い系」ではなく難敵「淡い系ではないけど濃いとも言い切れない」という毎年受験者をまどわせる難しいタイプかもしれません。でも、その時はみんな悩みます。最後はブドウ品種を捨ててもいいくらいなので、そのつもりで進めましょう。
赤2 マスカット・ベーリーA/日本/2021 Alc13%
外観
ピノ・ノワールを考慮しつつ、違和感を感じた時に他を考えようというタイプの外観。淡い系の中でも紫の印象がつよい。やや濃い色調で、むしろガメイやMBAを視野に入れておく必要があります。→この2つはピノより濃い時がままあります。若いワインであろう。粘性も”やや強め”で、確定はしきれずに香りへ。
香り
赤系果実であることは間違いありません。完全にフレッシュな赤果実です。ですが、それ以上に圧倒的に感じる甘さ。キャンディーや綿あめのような甘やかな香りに気づいてください。
ここで違和感を感じた方はその方向で進めましょう。全体としてはちょっともの足りないんです。単調というか、深み、奥行きがない。そして、この甘い香りです。でも、ジャムのようなフルーツが凝縮した新世界的な甘さではない…。
この綿あめのような、イチゴキャンディーのような平坦な「甘ったるさ」でしっかり違和感ととらえられれば大正解。そう思ってさらに探ると日本のワインに感じやすい丁子のニュアンスが。
淡い系の外観からピノ・ノワールの想定で違和感(単調で物足りない、平坦でより甘い)を感じた時のみ検討すべき仲間に、ガメイとマスカット・ベーリーAがあります。ピノ・ノワールは、それなりに複雑で、奥行き・広がりを香りにも味わいにも感じ、比較的長い余韻を持ちます。一方で、ガメイとマスカット・ベーリーAは、果実味をわかりやすく感じるもののイメージとして香りも味わいも“パッと開いてスッとなくなる”単調で奥行きがないイメージで、余韻も短いです。特にマスカット・ベーリーAは、ガメイ以上に独特の甘い香りをもちます。ガメイはここまで甘さを感じず、もう少し複雑さがあります。そして、まるでブドウジュース(ブドウ香料)のような香りを感じるのもMBAの特徴です。
味わい
”やや軽め”のアタックに“やや軽め”から”中程度”のアルコール、思いのほかドライな味わいに驚いた方もいたのでは。収斂性はほとんど感じません。キレよくまとまっていますが、余韻は短い。
まとめ
まず、この単調さ・甘さを理解してください。非常に特徴的です。ただ、あきらめる方は軽いなぁ、弱いなぁと思ってピノでもかまいません。
赤3 ピノ・ノワール/NZ/2022 Alc13%
外観
確実に淡い系に属する色調。この外観で「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」はありません。ピノ・ノワールであったらいいなと想定。やや紫のニュアンスもとりずらい印象。そして、粘性はやや強め。となると、淡い系(ピノ)を疑うことなくあとは産地かどこかと考えつつ、赤い果実を期待して香りに移ります。
香り
非常にわかりやすいフレッシュな赤い果実の香りでした。よかった!これは淡い系で赤い果実でピノ・ノワール確定です。イチゴも少し、でもラズベリーがが当てはまる赤い果実の香りに、華やかなバラの香りのコメントが並びます。特徴的なピノ・ノワールの香りです。
粘性から考えると温暖地域かもと思いつつ探ると、よく熟した果実の香り、ジャム感まではいかずとも良く熟した果実が前面に感じられました。
味わい
アタックはやや強め、甘みが伸びる感じです。さらに、アルコールも中程度。酸がしっかりしており、濃い系ほどではありませんが、ほどほどに心地良い渋みもあります。凝縮感があり温暖な産地確定!というほどではなけど、温かい印象で新世界。
まとめ
先ほどのマスカット・ベーリーAとは違い、ピノ・ノワールは細くても長く伸びます。この伸び、広がりがピノ・ノワールと言っても過言ではありません。
また、このワインの少し強い感じ、NZ・ピノ・ノワールとすれば納得がいきます。ピノ・ノワール関してはここ数回連続NZが出題されています。強弱的にピノ・ノワールの生産国を並べると、フランス→NZ→→→→アメリカで、NZは完全にフランス寄りのイメージです。
赤4 テンプラニーリョ/スペイン/2017 Alc14%
外観
濃い系にしたいのですが、革新が持てない微妙な色調。そして、粘性も強く、濃い系で「シラーまたはカベルネ・ソーヴィニヨンだったらいいなという」のイメージで香りに進みます。→最終的にこのブドウ品種はテンプラニーリョ。濃いですが、やや明るさを感じる微妙なラインでした。ただ、その黒さからガーネット・ダークチェリーレッドに正解がはいるタイプだったので、間違えても得点が取れたかもしれません。
香り
第一印象は土っぽい森の香り。さらに樽由来の香りがしっかり感じられます。黒果実はその奥に…。フレッシュ…と取れなくもない香りはありましたが、私はそれ以上に干しプラムのような少し凝縮した雰囲気を感じました。陰干ししたブドウのニュアンスに近いです。といっても、新世界的なジャムのような若々しい凝縮感ではありません。そして樽。樽からくるであろう甘いヴァニラの香りがありました。この香りはアメリカンオークの印象。コーヒーののようなロースト感のある香りも。
ここで違和感を感じなかった方、または熟成系(イタリア・スペイン品種)を捨ててシンプルに行く方は、「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」の濃い系王道パターン、この凝縮感とアメリカンオークの印象から温暖地域で進めていただいても問題ございません。→セミナーでの手応えを感じるに、そのような方も多かったと思います。
さて、濃い系で、香りも確かに黒系果実だけど、なんだかちょっと違和感。フレッシュとは言い切れない?どこか赤さを感じ、温暖産地にもっていくにはやや弱い。また、フランスにするにはちょっと強く、このアメリカンオークの印象はありえない…。
この違和感を感じたときに初めて熟成系を思い出してください。初めから「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」以外のブドウを考える必要はありません。→何度も言っておりますが、ブドウ品種を当てることが合格につながる試験ではありませんし、特に経験の少ない方がご自身の知っているブドウ品種から探ってうまくいくとは思えないからです。
違和感から熟成系をイメージするとドライハーブや土っぽさなど果実味以外の香りがかなり主張していることに気づきます。ちょっと不思議な感じ。そうなると、ソムリエ試験二次的にはイタリアかスペインを検討します。
味わい
アタックもアルコールも3~4の間で、凝縮感やアルコールのボリュームからくる甘みも強めですが、新世界とは違った酸、そしてドライな印象も感じられます(違和感2)。香りと同様に全体的に丸く、なめらかですが、やや強めのタンニンが主張しています。余韻はやや甘みを伴い、そしてしっとり。
まとめ
粘土のようなしっとり感とアメリカンオークの香り。全体的に丸く、やや甘みを伴い、酸も渋みもそれなりにある。このワイン、まずまず典型的なテンプラニーリョ(リオハ)です。
攻略としては違和感を感じるかどうか。ここに尽きます。ですから、初めから熟成系を想定するのではなく、あれっ?と思ってから検証する。これがソムリエ試験的には正解です。最初から幅を広げてアレコレ悩む理由はありません。
◆第4ラウンド
淡い系に引き続き、わかりやすく濃い系が並んでいます。両サイドは「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」であったらいいなと想定する外観です。ただ、赤6は他の2つに比べてやや淡い色調(濃い系だけど)。そして、もしかするとメルロかもマルベックかもしれませんが、難しいことを考えて取るべきコメントを落としては意味がありませんので、そんなブドウ品種は無視して進めます。
赤5 カベルネ・ソーヴィニヨン/米/2020 Alc14.5%
外観
濃い系は確定の色調。ただ、MAX濃いわけではない。そして、他に比べてやや縁が赤い。熟成とかそんな感じではなく、ほんの些細なことですが、若いのか、ちょっと時間が経ったのかわかるだけでも全然違います。ヴィンテージは当たらないので、当てなくていいのですが。
粘性も強い。「シラーorカベルネ・ソーヴィニヨン」パターン、外観の方向性でまずは見ていくべきです。そして、シラーとカベルネ・ソーヴィニヨンどちらも強いワインになるため、濃いけどMAXではないレベルであればフランスか新世界かは香り以降で判断です。
香り
果実は赤か黒かといえば、間違いなくフレッシュな黒果実。良く熟した感はあるものの、ジャムほどの強さは無く落ち着いていました。
さて、濃い系でフレッシュな黒果実を感じましたからカベルネかシラーのどちらかであろうと。三角形より鋭角なシラーズなのか、八角形複雑なカベルネ・ソーヴィニヨンか。このワインから針葉樹っぽい緑のニュアンス(杉のような)に、タバコや土。これらの要素と果実味が相まってより複雑な印象。
味わい
アタックはしっかり強さを感じました。甘みは豊かなのちょっと手前、アルコールはけっこう強い。香りは抑制がきいていましたが、味わいは甘みから続くアルコールのボリュームまでグーンと盛り上がる感じで余韻まで続きました。果実味、酸、渋みそれぞれがしっかり主張し、それなりにまとまっていることからもカベルネ・ソーヴィニョン。フランスを検討した方はこの味わいで新世界に振ってほしい強さがありました。
まとめ
カベルネかシラー、どちらなのか。難しいところでしたが、何かが突出している「三角形で鋭角なシラー」というよりはより多くの要素が主張しつつ複雑な「八角形で複雑なカベルネ・ソーヴィニヨン」の方かなと。
また、ワインの強弱としても、強烈に強いというわけではなく、新世界としてはやや線が細いイメージ。ちょっと冷涼なのか標高が高いのかもしれません。アメリカンオークのわかりやすい樽感も抑えめでした。
新世界の濃い系は、カベルネ・ソーヴィニヨンかシラーを取り違えてもコメントはほとんど変わりませんから問題ありません。
赤6 シラー/仏/2022 Alc12.5%
外観
引き続き「濃い系」、ただ両サイドと比べると若干淡い。MAXに濃いわけではありません。そして、紫の若々しい印象。迷わずシラーかカベルネ・ソーヴィニヨンを想定する外観。ただ、粘性もしっかりあるもののやや強いぐらいか?。
ちなみにこの二品種、冷涼産地(フランス)であっても比較的暖かい地方(ローヌ、ボルドー)で造られること、また、ブドウ品種の特徴としてしっかりとしたワインができることから全体的に強くなりがちです。ですから、この濃い系の場合は外観で冷涼か温暖かの判断は難しいことが多いと思います。
香り
「濃い系」で、シラーかカベルネ・ソーヴィニヨンを想定しておりますから、香りも黒系果実主体であってほしいわけです。さて、非常にわかりやすく黒系果実が。そして、その黒果実に強さですが、やや強めで良く熟した感があるもののジャムまではいかず、フレッシュな果実が主体。ここでどちらかといえば冷涼産地(フランス)かなと思うくらい。
また、シラーとして特徴的なオリーヴの香りや黒胡椒を明確に感じました。この香りはフランス・シラーに特に顕著に感じます。また、どこか酸味を思わせる香りがあります。
味わい
どちらかと言えば冷涼(フランス)の印象で味わいまで進みました。アタックはやや強いものの、甘みは抑えめでアルコールも若干低め。温暖産地!というほどの強さはなく、ここからフランスを感じた方は素晴らしい。比較的鋭角な酸にはっきりとした渋み。新世界の強さにマスキングされていない酸と渋みをちゃんと感じました。
まとめ
外観、アタックからアルコールまで特徴的なオリーブ・黒胡椒の香りも含めてまずまず教科書的なフランス・シラーでした。→2022年もフランス全体がまずまず強い年(良い年)なんです。ですから、(微妙に迷いつつ)もし温暖地域と判断しても失敗とまではいかないと思います。
赤7 シラーズ/オーストラリア/2021 Alc14.5%
外観
本日一番安心感のある「濃い系」、最強MAXに濃いわけではありませんが、粘性も強く、こちらは確実にカベルネ・ソーヴィニヨンかシラーのイメージでテイスティングを進めます。
香り
第一印象は甘やかでフレッシュな黒果実、その後強い樽の風味。ジャムと言ってもよいくらいの強い果実感。さらに、メントール的な清涼感もあり、温暖産地確定。そして非常にわかりやすく、ユーカリを感じました。→ユーカリはオーストラリアで最も感じる香りですが、南半球の特徴でもあります。近くにたくさん群生しているユーカリが直接香りをまき散らしており、それらがワインに含まれています。
味わい
味わいも強くて濃い。味わいからも新世界にもって行けたと思います。今回で最もインパクトのある味わいでした。
さて、新世界のカベルネ・ソーヴィニヨンとシラーの見分けは非常に難しいです。先ほどお伝えしように八角系のカベルネ・ソーヴィニヨンと鋭角な(三角形)シラー(ズ)なのですが、温暖な地域特有の強さ、濃さ、果実味がその八角形、三角形の辺を押し出し膨らませ丸みを帯びるため形が似るためです。ですから、この二つを取り違えてもそれほどマイナスにはなりません。
まとめ
このワイン、わかりやすくユーカリを感じました。ソムリエ試験的にわかりやすいユーカリ香はオーストラリアと考えてよく、オーストラリアであれば確率的にシラーズでしょうと言うことで、ユーカリを感じれば自動的にシラーズでもいいくらいです。
新世界の濃い系赤はそれほどブドウ品種を意識する必要はありません。
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セミナーにご参加いただいた皆さん、ありがとうございました。
牧野 重希