赤ワインを比較する。

赤ワインを比較する。
さて、白ワイン同様に赤ワインを比較します。
赤ワインを比較する。
始める前に少しだけ、白ワインと赤ワインの味わいにおける一番の違いはなんでしょうか。わかりますか?
【ヒント】
発酵に至るまでの行程が違います。そして、黒ブドウから白ワインを造ることはできますが、白ブドウから赤ワインを造ることはできません。
※黒ブドウから造られる白ワインで有名なものにシャンパーニュのブラン・ド・ノワールがあります。
そうです。渋味の有無です。味わいに関しては単純に白ワインに渋味を加えると赤ワインと考えることができます。
赤ワインのテイスティングにおいて、渋味をどのように感じるかということがポイントの一つになります。
さて、始めたいと思います。
1. 見比べてわかること。
・濃淡を見る。
過去に出題されたブドウ品種の中では、ピノ・ノワール以外は基本的に濃いと判断できます。(ガメイはどちらか悩むこともあります。また、カリフォルニアなどには色の濃いピノ・ノワールもあります)また、白ワインと同様に、暖かい地域のワインほど色が濃くなります。
・「赤っぽい」か「黒っぽい」かを判断する。
赤ワインの外観を見るときの一番のポイントがここです。過去に出題された中で最も「赤っぽい」ものがピノ・ノワールで、「黒っぽい」ものがカベルネ・ソーヴィニヨンになります。
また、熟成によっても色が変わります。若いワインは紫のニュアンスが強く、熟成が進むにつれて赤く(褐色)なっていきます。
「赤っぽい」 → 「黒っぽい」
ピノ・ノワール → ガメイ → サンジョヴェーゼ → テンプラニーリョ/ネッビオーロ → シラー(シラーズ) → メルロ → カベルネ・ソーヴィニヨン
イタリアワインは相対的に赤味を帯びる確率が高くなります。
イタリアではワインを熟成させて飲み頃のものを市場に出すという文化・習慣がありました。その流れで、今でもどちらかというと、もともと紫の色調であったワインが私たちが目にする頃には赤味を帯びている可能性があります。反対に若くて果実味たっぷりのワインが好まれるアメリカのワインは、紫の色調を感じる確率が高いといえます。
・粘性
上記の「赤っぽい」→「黒っぽい」の順が、粘性の「弱」→「強」に当てはまると言えなくもないのですが、ブドウの特徴に加えて、生産国・地域によるアルコール分に由来することも加味しなければなりません。
粘性が「弱い」 → 「強い」
フランス/日本 → スペイン/イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ
くらいのイメージでしょうか。ワインをテイスティングする上で、外観は大切な要素ですが、これらの情報だけでワインを絞り込むことは難しいと言えます。
2. 香りを比較する。
・「赤い果実」系と「黒い果実」系にわける。
白ワイン以上に複雑な香りを持つ赤ワインですが、単純にわけてしまいます。香りのニュアンスはワインの色調にそれなりに比例します。
「赤い果実」系 → 「黒い果実」系
ピノ・ノワール/ガメイ → サンジョヴェーゼ/テンプラニーリョ→ネッビオーロ/シラー(シラーズ) → メルロ/カベルネ・ソーヴィニヨン
徐々に黒い果実(カシスやミュールなど)のニュアンスが強くなります。私はテンプラニーリョまではどちらかというと赤系が強いように感じます。とはいえ、いろんな香りが複雑に交わっています。
ブドウそれぞれの特徴的な香りと合わせて感じられるようになってください。
・それぞれの国のニュアンスの違い
なんとなくですが、それぞれの国、地域によってそれなりに系統立った香り、ニュアンスを感じます。それらがとくに赤ワインに顕著に感じられるので、少しだけ紹介してみます。
・フランス
どの国よりも酸・ミネラルのニュアンスを感じます。また、ハーブっぽさも一番強い。
・イタリア
土っぽさ、埃っぽさ、どこか垢抜けない感じ、そして時折、酸化的なニュアンス。
・スペイン
こちらも土っぽさを感じますが、イタリアよりしっとり丸く暑い感じです。
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その前に新世界ワインに使われる樽のニュアンスについて
主にアメリカンオークが使用されます。フレンチオークよりも個性が強く、チョコレート、ヴァニラ、ココア、ゴムなどのわかり易い香りを強く感じます。
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・アメリカ
過熟感、熱感。樽の強いニュアンス。酸、ミネラルの感じはどの国よりも少ない。
・オーストラリアかなり
アメリカ寄りですが、それでもハーブっぽさや緑のニュアンスを感じることが多いように思います。
・チリ
なんと言ってよいのか、独特の香りがします。酸っぱいような、うーん…ちょっと他の国にはない雰囲気です。アメリカほど強い過熟感、熱感はありません。あくまで私のイメージです。言葉では伝えようのないことも多いので、今回はなんとなく通りすぎて、いつか共感していただければと思います。(いや、違う!でも結構です)
3. そして、味わいの違いを感じる。
赤ワインは香りが複雑ですから、判断基準に事欠きません。これまでの段階である程度まで絞ることができれば理想的です。→残念ながらそう簡単にはいきませんけどね。
・渋味を感じる
赤ワインと言えば渋味です。渋味の強弱を感じてください。
渋みが弱い → 強い
ガメイ → ピノ・ノワール → サンジョヴェーゼ/テンプラニーリョ/メルロ → ネッビオーロ/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン
・酸味を感じる
酸味が強い → 弱い
ピノ・ノワール → ネッビオーロ/サンジョヴェーゼ → ガメイ/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン/テンプラニーリョ → メルロ
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロにもしっかりとした酸があるのですが、カベルネ・ソーヴィニヨンは酸以外の要素も十分に主張する為、メルロは豊富な粘性の陰に隠れている為それほど感じないのです。ガメイは微妙なのですが、それほど酸が主張することもない感じです。
・ボリュームを感じる
軽め → しっかり
ガメイ/ピノ・ノワール → 【ここに大きな差があります】 → サンジョヴェーゼ → テンプラニーリョ/メルロ/ネッビオーロ → シラー(シラーズ)/カベルネ・ソーヴィニヨン
ボリューム感を国別で比べてみます。
軽め → しっかり
フランス/日本 → スペイン/イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ
粘性と同じ並びですね。
駆け足でしたが、一通りまとめてみました。とはいえ、ワインはさまざまな国のこれまた千差万別の考えを持った人々がさまざまな天候の中、毎年造っています。一言でこうですとは言えないものです。
一つの考え方としては例えばカベルネ・ソーヴィニヨンなら、ボルドーに見られるピーマンや森の緑のニュアンスを基準とすることです。そして、ブラインドテイスティングの最中にカベルネ・ソーヴィニヨンかな?と思い当たったとします。そこで自分の基準とするボルドーのカベルネではない要素、違和感(ピーマンっぽさよりもジャムのようなニュアンスが強いなど)を感じた時に新世界のカベルネを思い浮かべるといった流れが私には自然でわかりやすいように思います。これらはあくまで私の感じ方です。皆さんも自分の中に基準を持てるように頑張りましょう。