ワインの温度、ミネラルについて

昨日、第16回A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール ベル ギー大会の決勝が行われ、ドイツのMarc Almert(マルク・アルメルト)氏が優勝しました。若干27歳、初出場での戴冠は2004年のエンリコ・ベルナルド氏以来の快挙だそうです。第2位はデンマークのNina Jensen(ニナ・ジェンセン)氏。彼女は26歳、2013年大会以来の二度目の女性としての最高位第2位でした。第3位はラトヴィアのヨーロッパ王者Raimonds Tomsons(ライモン・トムソン)氏です。
優勝したアルメルト氏は知識・スピードはもちろん、場の雰囲気を持っていくほどの存在感、圧倒的な安定感が評価されたようです。一方で、日本から出場した岩田さんと森さんは残念ながら決勝には残れませんでしたが、それぞれ11位と17位と健闘されました。
この方たちのとてつもないであろう努力は想像を絶するに違いありません。
→いったい、いつからコンクールを目指して、どのように勉強しトレーニングを積んできたのでしょう。日本のコンクールを目指してる友人・知人がおりますが、彼らですら生活を犠牲にしてまで努力を続けております。(それが楽しくて仕方がないと思っている人もいるようですが)
27歳のチャンピオンと26歳の第二位。日本と同じ状況ではないかもしれませんが、単純に20歳くらいからお酒を飲み始めて数年(ヨーロッパの方ですから、小さな頃からワインに親しんでいたかもしれません)、また、同様に働き始めて数年、コンクールを目指し始めたであろう20代前半はまだまだ修行の時代です。覚えること、経験しなくてはいけないことがたくさんあり、なによりも自分のペースで仕事ができる時期ではありません。そのよう中、壮絶なる努力をもってこの世界の舞台にたどり着き、そしてそこで頂点まで上り詰めました。私にはちょっと想像がつきません。いや、”想像できない”からそもそも挑戦すらできないのだとも思います。彼らは努力も超人的ですが、おそらくイメージできたんだと思います。
私たちもその数分の一くらいは見習いたいものです。
ワインの温度、ミネラルについて
◆テイスティングするときのワインの温度について
ところで、皆さんはテイスティングする時のワインの温度に気を配っていますか?今首をかしげた方は、ワインの入門書などでワインの温度に関するところを読み返してみてください。
→試験対策向けではありませんが、拙著『初心者のためのフランスワイン講座』の”赤ワインは冷やして飲む!~ワインの温度”で簡単にワインの温度にふれていますのでよろしければご一読ください。
二次試験当日に提供されるワインはテイスティングに適した温度でグラスに注がれた状態で配られます。白ワインは通常飲む温度よりもやや高めの温度(冷蔵庫から出した温度より確実に3、4度高い)、赤ワインは常温ではなく9月ころでしたら少し冷やし気味で出されるはずです。→赤ワインは20度を超えるともったりとして輪郭を失います。
自宅でテイスティングする場合も、ある程度ワインの温度に気を配らなくてはなりません。特に白ワインは冷蔵庫から出してすぐの状態ではテイスティングに向きません。冷た過ぎて香りがあまり感じられないからです。
白ワインは冷蔵庫から出して10~20分後(11℃前後)、赤ワインは5月以降であればそろそろ暖かくなってきますので少し冷やす必要があります。
テイスティングに適した温度を意識することもワインを学ぶ上でとっても大切なことです。
◆ワインのミネラルについて少しだけ
ワインのミネラルについては、ここで簡単に説明できるものではありません。ただ、試験対策としては、感覚的になんとなく感じることができれば問題ないと思います。
※土壌に含まれるミネラル分が直接ワインに影響するという化学的な関連性についてははっきりと解明されていません。
白ワインに限らず、赤ワインにもミネラルを感じます。そのミネラルをこの場で言葉で表現するのは非常に難しいのですが、
・潮っぽい感じ
・貝殻のような香り
・乾いた石のイメージ
・炭酸の泡のニュアンス
・固いニュアンス
・清涼感
・開放感
・軽い感じ、どっしりではない
・空中にパッとまたはスっと広がる・抜ける感じ
・鉱物感
・ミュスカデの香りから柑橘系を取り除いた感じ
・ミネラルウォーターのサンペレグリノの香りのニュアンス
といったところでしょうか。これらは私がこれまでに出会ったワイン生産者やソムリエ、ワイン愛好家達が表現していた言葉やニュアンスを思い出しながら書き連ねたものです。
香りや味わいに限らず、鼻腔から抜ける時に独特の感覚を覚えることがあり、これもミネラルからくるものと思っています。そして、ミネラルはワインに奥行きと伸びを与えます。
私はフランスワインと新世界のワインの大きな違いは”酸”と”ミネラル”だと感じます。そして、このミネラルのニュアンスを認識できるようになるとワインの世界が確実に広がります。今後、ミネラルを少し意識しながらテイスティングしてみてください。
◆今回取り上げた以外のブドウ品種について
このシリーズでは過去に出題されたブドウ品種の中から最重要品種に絞って対策を進めてみました。もちろん、それ以外のブドウ品種や生産国のワインが出題される可能性も理解しております。
しかし、主要ブドウ品種に特化してテイスティングし、自分なりの基準ができてしまえば、そこに新たな情報を加えることはそれほど難しいことではありません。
2013年に日本の甲州が、2016年にマスカット・ベーリーAが出題されました。また、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーなどはいつになるかわかりませんが出題される年が来るでしょう。
どこまで手を広げるか悩むところですが、私は手を広げるべきではないと言い続けております。これから二次試験までの時間を考えるとテイスティング出来る回数は決まっています。主要ブドウ品種の特徴を捉えるだけでも時間が足りないと思っているくらいです。これまでに出題されていないブドウ品種にまで手を付けては余計な迷いが増えるだけでかえってマイナスです。そもそも、“ブドウ品種を当てること”に対する配点が圧倒的に低いんです。
ただ、ある程度主要ブドウ品種の特徴をとらえる事ができるようになったのであれば、その後に未知のブドウ品種の特徴を感じる事は比較的容易いといえます。
例えば、グリューナー・ヴェルトリーナーは北のブドウか南のブドウかといえば酸とアルコールのボリューム感、果実味の凝縮感などから北のブドウに分類されます。イメージ的にはリースリングとソーヴィニヨン・ブランの中間くらい、爽やかで溌剌、やや太めの酸が特徴的です。基本樽のニュアンスはありません。ですから、ドイツやアルザスのリースリング、フランスのソーヴィニヨン・ブランとの相違点を見つけることが攻略の第一歩になると思います。
私は二次試験に出題される主要ブドウ品種に対して自分なりの基準を明確に持っていますから、例えばグリューナー・ヴェルトリーナーを知らなかったとしてもこの基準の中でどうあるのかという判断ができます。主要ブドウ品種に対する基準を持っていることでグリューナー・ヴェルトリーナーとの距離を感じることができるのです。
ですから、まずは主要ブドウ品種についての基準をしっかり作りましょう。そして、もう大丈夫といえるくらい自信の持てるようになってから、その他のブドウについて考えましょう。
→ほとんどの方にとってそんな時間はないと思います。絶対に避けたいことが、試験で主要ブドウ品種が出題されているにもかかわらず、あれこれ迷った挙句時間がなくなってしまうことです。
次回、かなり難しいというか、諦めても良いと思われるヴィンテージについてお伝えします。