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メドックの格付け 1

2021/01/18
 
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メドックの格付け 1

 

数年間にわたってボルドーでワイン造りを経験し、現在もシャトー・メルシャンのチーフワインメーカーとしてワイン造りに携わっている安蔵 光弘氏が記されたボルドーでワインを造ってわかったこと “日本ワインの戦略のためにを読みました。とても面白い本で、特にボルドーの歴史の箇所が、長年この業界にいる私をして”なるほど!”と納得できる素晴らしい内容でしたので、要約してこちらで数回にわけて紹介いたします。

歴史に翻弄されながらも、チャンスを掴み成り上がったボルドーをこれまでとはちょっと違った視点から見たお話。「ボルドーは中世の一時期イギリスだった」というとっても有名なくだりから、湿地で未開の土地であったメドックのワインが世界的な赤ワインの産地になるまでの過程が、非常にわかりやすく書かれています。ソムリエ試験的にも知っておいて損はないはずです。

ボルドーワインの歴史 1

9世紀頃、北ヨーロッパ、主にスカンジナビア半島に勢力を持っていたヴァイキングの首領ロロがパリを包囲しました。西フランク王国のシャルル3世はフランス、パリを守るために、フランス北部のノルマンディー地方(パリの北西、イギリスとの対岸付近)をロロに与え、ノルマンディー公として貴族に叙します。

それから150年後の1066年、彼の子孫7代目ノルマンディー公ギヨーム2世(英語読み:ウイリアム)がイングランド軍を破り、イングランド王ウイリアム1世となります。イングランド王となったギヨーム(ウイリアム1世)ですが、フランスではノルマンディーを治める貴族であり、フランスでの立場はフランス王の臣下のままでした。また、イングランドは今でこそ世界に確固たる地位を築いていますが、当時は人口もフランスの1/4程度(数百万人)、大陸の国々から見ると辺境の地というイメージでした。

1135年、ウイリアム1世(ギヨーム2世)の息子、三代目のヘンリー1世は男子に恵まれず、娘マチルダを後継にして亡くなります。しかし、マチルダの従兄弟スティーブンがその隙をついてイングランドに乗り込み、王を僭称してしまいました。

1150年、マチルダの息子アンリがノルマンディー公の位に就きます。のちにヘンリー2世となるアンリ(英語読みにするとヘンリー。フランス語は“H”を発音しません)とこの後に登場する(ソムリエ試験的にも有名な)アリエノールがボルドーの歴史に大きな影響を及ぼすことになります。

この時期にボルドーを含むアキテーヌ地方(ソムリエ試験的にいうとボルドーから南西地方)を領有していたのが、ポワティエ伯ギヨーム10世(ポワトゥー地方:ソムリエ試験的にいうとロワール川河口付近一帯)で、彼は男の子に恵まれなかった為、その長女アリエノールが相続することになっていました。

15歳になったアリエノールはフランス王ルイ7世と結婚するも離婚、そして30歳になった時に19歳のノルマンディー公アンリ(ヘンリー2世)と再婚します。
→離婚の原因が時代を反映しており面白いです。ウィキペディアより抜粋
ーーー
アリエノールは15歳でフランス王妃となった。南仏アキテーヌの女領主として育った陽気なアリエノールと、修道院育ちであり生真面目で信仰心の篤いルイ7世は性格が合わなかった。後に離婚した際にアリエノールはルイのことを「王と結婚したと思ったら、僧侶だった」と言ったといわれる。しかしルイの温和な性格から、不仲は表面化しなかった。2人の間にはマリー、アリックスの娘2人が生まれたが男子をもうけることはできなかった。

1147年の第2回十字軍に、アリエノールはアキテーヌ軍を引き連れ、夫ルイ7世と共に参加した。信仰篤いルイに対し、アリエノールは物見遊山目的であり、王妃の随員や衣類などの荷物だけで部隊が形成され、さらにその護衛部隊も必要となり、進軍の多大な妨げになっていた。こうしたことから、フランス軍が小アジアでセルジューク朝軍に惨敗した原因ともなった。

中略

十字軍遠征の間に、アリエノールとルイ7世の亀裂は決定的となり、ルイは離別を決意するがアリエノールの不貞を表沙汰にしたくないこと、及び二人の王女への影響、宗教的理由からなかなか決心がつかなかった。
ーーー

こうして、二人はアキテーヌ地方とポワトゥー地方、そしてノルマンディー地方を治める一大貴族となりました。しかし、それでも立場は貴族であり、フランス王の臣下であることに変わりはありませんでした。フランス王ルイ7世は自分の妃と領地を臣下に取られたことに激怒、ノルマンディー地方に侵攻しますが、アンリに跳ね返されてしまいます。

翌年、アンリは本来受け継ぐはずだったイングランドに侵攻、スティーブンを破り、1154年、イングランドの王位も継承、この王朝はプランタジュネット朝と呼ばれます。

アリエノールがフランス王を捨て、イングランド王となるアンリを選んだことによってイギリスとボルドーの関係が築かれ、ボルドーワインが世界的な銘醸地となる始まりとなりました。

〜続く〜

さて、ソムリエ試験対策最初の難関、メドックの格付けに進む前に、ボルドーのブドウ品種をちらっと見ておきます。

C ボルドーの主要ブドウ品種

・黒ブドウ 
 カベルネ・ソーヴィニヨン
 カベルネ・フラン
 メルロ
 マルベック
 プティ・ヴェルド

・白ブドウ
 セミヨン
 ソーヴィニヨン・ブラン
 ミュスカデル

前回もふれたように、黒ブドウに関して、ジロンド川とガロンヌ川の左岸地域ではカベルネ・ソーヴィニヨンが、ドルドーニュ川の右岸地域ではメルロが主体で栽培されています。また、白ブドウは甘口・貴腐ワインがセミヨン、辛口がソーヴィニヨン・ブラン主体です。
→ボルドーに関してブドウ品種は何となく左岸と右岸の違いを眺めている程度で十分です。

もちろん、例外は多数あります。 有名どころとしては、サンテミリオンの格付けプルミエ・グラン・クリュ・クラッセACh.Cheval Blancカベルネ・フラン主体です。
また、プルミエ・グラン・クリュ・クラッセBCh.Figeacは赤主要三品種をほぼ均等に使用します。
→Ch.Cheval Blancの主要品種は出題されたことがありますが、基本セパージュ比率などは覚える必要ありません(そもそも年によって違います)。

D メドックの格付け

1855年のパリ万博の時にナポレオン三世が云々というどの参考書にも書かれているこの格付け、ここがソムリエ試験対策最初の関門です。
→いつの時代の話かというと、日本はまだ江戸時代。第13代将軍・徳川家定の時代からこの格付けはほとんど変わっていません。こう考えるとすごいですよね。

この格付けの中でも、Ch. Mouton Rothschildが150年以上の歴史で唯一、二級から一級に昇格しました。ピカソの絵がエチケットに採用された1973年のことです。 mouton1973
その他、Ch. d’Armailhacが1989年にCh. Mouton Baronne Philippeから名称を変更しています。 →これらも出題されたことがあります。

この61シャトーをいかに覚えるのか、あるいは全て覚えずにポイントをおさえて先に進むのか、本当に悩ましいところです。いろんな意味で最終的には全61シャトーすべてを暗記したほうがよいと私は思います。試験にも比較的満遍なく出題されていますから。
→まぁ、誰もが通る道なので、最初に少しばかり苦労してみましょう。誰も一度で覚えることはできません。 

どこから手を付ければいいのかと悩まれた方へ、はじめにAOC MargauxAOC Haut-Medocのシャトー名と格付けだけを気合を入れて覚えてみてください。そして、過去問に挑戦してみるんです。これだけでけっこうイケるはずです。
→この二つは少々やっかいですが、そこが試験に狙われるのです。また、この二つを押さえると後はわりと楽チンです。

※このメドックの格付けに限らず、一般呼称の一次試験対策において、原語で書けるようになる必要はありません。今後も絶対に変わらないとは言い切れませんが、CBT方式となったことや受験者数から考えて、選択肢として認識できるレベルでの暗記で問題ありません。
→一方で、エクセレンス呼称受験の方は原語で書く必要があります。昨年度より選択肢がなくなりました。

さらに、各AOCのワインの特徴、例えばサンテステフはちょっと土っぽいニュアンスがある、ポイヤックは溌剌としていて縦に伸びる…など実践で必要であろうことも全く覚える必要はありません。本当は格付けを覚えるよりも重要だと私は思っておりますが。

さて、

・メドック第一級

こちらはワインの世界では常識です。
Ch. Lafite-Rothschild(Pauillac)
Ch. Latour(Pauillac)
Ch. Mouton-Rothschild(Pauillac)
Ch. Margaux(Margaux)
Ch. Haut-Brion(Pessac-Leognan)
→ポイヤックを3つを固める関係で、上記の順番にしましたが、この一級の中でも上下関係があります。

・メドック第二級

一級、二級はワイン愛好家にとって憧れのワインです。苦労して覚えるというよりは、まだ飲んだことのないものはどんなに素晴らしい味わいだろうというイメージで、自然に頭に入るように意識できればよいとすら思っています。

とはいえ、すべての二級が素晴らしいとは言いがたいことも事実です。私個人的に二級という格付けに見合わないと勝手に思うものをあげてみます。だからといって試験に出る出ないは全く関係ありません。

私の中で、二級という意味では残念なシャトー…。←ごめんよ。色は薄くしました。
Ch. Lascombes (Margaux)→最近、大改革の末、まぁまぁになったかも。
Ch. Durfort-Vivens(Margaux)
Ch. Rauzan-Gassies(Margaux)→二級なのに機械収穫…。
Ch. Brane-Cantenac(Margaux)→悪くないんですけどね。AOC Margauxですがコミューン(村と考えてよい)はCantenacです。
→二級に限らず、AOC名とコミューン名が違うものは狙われます。

Ch. Brane-Cantenacが二級で、似たような名前のCh. Cantenac Brownは三級、同じAOC Margaux、コミューンはCantenacです。
→私は前者がBから始まるから二級、後者はCから始まるので三級と覚えました。

AOC Margauxから二級がたくさん選ばれていますが、いまいちときめかない感じです。もちろん天下の二級ですから、まったくダメってことはありませんが…。
→たとえば、どこかのお屋敷の晩餐会に招待されて(してほしい!)、これらのワインが提供されたときに「(この贅沢な晩餐にこのワインは)ちょっと残念だなぁ」と思う感じです。もちろん口に出しては言いません。
反対にCh. Cos d’Estournel(Saint-Estephe)やCh. Pichon Longueville Comtesse de Lalande(Pauillac)などがでてくるとテンションが上がります。

Ch. Leoville-Las-Casesは大人気のシャトーで、二級の中でもトップクラスの価格であり、ボルドーの中でも一番好き!という方にちょこちょこ出会うのですが…。私は相性が良くないのか、一度も当たった事がございません。最も古いもので1928年のものから経験があるのですが…。→長年ワインをやってますとこのような“相性”というのでしょうか、晴れ男、雨女的なものもあるなと感じます。

AOC MargauxにはそれはそれはすばらしいCh. Margauxがあります。偉大なCh. Margauxと同じマルゴーというAOC名なので良いイメージを持つのですが、他の近隣のAOCに比べて認められている範囲が広いことや80年代以前の鉄道問題などで、近年まで低迷し続けているシャトーが存在することは否定できません。

Ch. Rauzan-Seglaは90年代にシャネルがオーナーとなり大変身を遂げ、現在は素晴らしいワインを造っています。

三級以下もAOC Margauxは格付けに対してどうも良い印象をもてないところが多いと思うのは私だけではないと思います。

というどうでもいい私の個人的な感想をお読みいただいてから、そして、AOC Margauxを意識して二級の格付けを見てみましょう。

Ch. Lascombes(Margaux)
Ch. Durfort-Vivens(Margaux)
Ch. Rauzan-Segla(Margaux)
Ch. Rauzan-Gassies(Margaux)
Ch. Brane-Cantenac(Margaux)
Cantenac

Ch. Cos-d’Estournel(Saint-Estephe)
Ch. Montrose(Saint-Estephe)
Ch. Pichon-Longueville-Baron(Pauillac)
Ch. Pichon-Longueville-Comtesse-de-Lalande(Pauillac)
Ch. Ducru-Beaucaillou(Saint-Julien)
Ch. Gruaud-Larose(Saint-Julien)
Ch. Leoville-Barton(Saint-Julien)
Ch. Leoville-Las-Cases(Saint-Julien)
Ch. Leoville-Poyferre(Saint-Julien)

ただ単にこの一覧を眺めて暗記するのは至難の技です。これまで全く接点のなかった方にはただのアルファベットの羅列にすぎません。皆さん、げっと思うのですが、一般呼称の一次試験は選択式です。まずは、AOC Margauxを見てわかるようにしましょう。

あと、Saint-Julienにレオヴィルなんとかという三兄弟がいて、Pauillacにもピション・ロングヴィルの兄弟がいる。マルゴーはローザン兄弟がいますね。
この兄弟だかグループだかをなんとなく判別できれば、二級に関してはなんとかなりそうですよね。試験的には上記でよいのですが、ワインの世界に足を踏み入れたならCos-d’EstournelやDucru-Beaucaillou、Montroseは是非経験してほしい素晴らしいワインです。


・メドック第三級

14シャトーのうち、AOC Margauxから10シャトーも選ばれています。
ひとまずAOC MargauxコミューンCantenacからの6シャトー、コミューンLabardeのCh. Giscoursはしっかり覚えましょう。

Ch. Ferriere(Margaux)
Ch. Malescot-Saint-Exupery(Margaux)
Ch. Marquis-d’Alesme(Margazux)
Ch. Palmer(Margaux)Cantenac
Ch. Boyd-Cantenac(Margaux)Cantenac
Ch. Cantenac-Brown(Margaux)Cantenac
Ch. d’Issan(Margaux)Cantenac
Ch. Kirwan(Margaux)Cantenac
Ch. Desmirail(Margaux)Cantenac
Ch. Giscours(Margaux)Labarde

Ch. Calon Segur(Saint-Estephe)
Ch. Langoa-Barton(Saint-Julien)
Ch. Lagrange(Saint-Julien)

Ch. La Lagune(Haut-Medoc)Ludon

AOC Haut-MedocからCh. La Lagune(コミューンはLudon)が選ばれています。AOCがHaut-Medocであり、コミューンがLudonなので、試験的には狙われやすいといえます。
→AOC Haut-Medocは上記のAOC MargauxやAOC Pauillacを含む広域アペラシオンであるためか、地域的にやや劣るイメージがあります。このAOC Haut-Medocから5つのシャトーが三級から五級の間で選ばれています。ここは意識して覚えましょう。

AOC Saint-EstepheのCh. Calon Segurハートのマークのエチケットで有名ですし、AOC Saint-JulienのCh. Lagrange はサントリーの経営、Ch. Langoa-Bartonは二級のLeoville-Bartonの親戚みたいなものです。

三級はAOC Pauillacからは選ばれていません!!

一通り目を通したところで、【過去問】でどのように出題されているか見てみたいところですが、五級まで終えてからにします。

ここを乗り切るかどうかが最初のポイントです。みんな苦労するんですから。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩





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