主要”白”ブドウ品種の特徴

第116回
さて、二次試験まで約2カ月といったところですね。
先日、セミナー開催のご報告をさせていただきました。一次試験を合格され、ほっと一息つかれている方は是非ご検討ください。
本日も、メルマガの復習です。このあたりはサクサク進めていきましょう。
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主要”白”ブドウ品種の特徴
今回は主要白ブドウ品種の特徴をまとめます。一般的なことはさまざまな書物に書かれていますので、ここでは私がポイントだと思うことに絞ってお伝えします。→あくまでイメージだと思ってください。二次試験のテイスティングコメントとは異なります。
始める前に一言。
細かいテイスティングコメントについては今は全く気にしなくても大丈夫です。二次試験の為のテイスティングコメントに関しては一次試験終了後にガッチリ対策を行います。ここはお任せ下さい。それまではコメント以上に主要ブドウ品種のイメージを自分なりに持てるように意識してテイスティングすることが最優先です。→近日中にご提案する必勝マニュアルのことです。
そのためにも、何度も何度も同じことを言って大変恐縮ですが、感じたことを自分の言葉で書いてください。今は無理に模範コメントに合わせる必要は全くありません。→前述の通り、こちらは復習です。今リアルタイムでご覧の方で、経験値が少ない方は少しだけ焦りましょう。それでも何とか合格できるようにフォローしますので。この先もそのつもりでお読みください。
正しいとか間違っているとかいう以前に、感じたことを言葉する訓練が必要なんです。なぜなら、これまでワインに限らず、感じた香りや味わいを言葉にしたことなんてなかったのではないでしょうか? いきなり何かを感じて言葉しろと言われてもできないものです。だから、正解なんてどうでもいいので、ちょっと長いストレッチ期間だと思って、言葉にすることを意識して欲しいんです。最初は全然うまくいきません。面倒な作業だと思います。でも、今からこの「言葉にすること」を地道に続けるかどうかが秋の結果を左右します。独学でなんとか合格したい方、これだけは本当にお願いします。
さらに、言葉にして書き溜めたものをいつか集計することで自分の感覚・癖を統計的に知ることができます。これが大きいんです。主要ブドウ品種ごとにご自身の感覚・癖を掴めば間違いなく合格ですから。
→テイスティングして書いていない人、多いと思います。面倒ですよね…わかります。さらに「間違っているかもしれないこと、正解がわからないことを書く」ことは苦痛を伴いますので。
でも誰に見せるわけでもありません。完璧を目指す必要もありません。気づいたことをどんどん書く。そして、どんどん間違えて(そもそも正解というものがあるのかどうか疑問ですが)数をこなすことが大切です。
これから試験までに何回テイスティングできるか考えてみてください。一回一回のテイスティングを大切にしましょう。ここを乗り越えると見えるものがあります。
では始めます。
目次
シャルドネ
白ブドウとして最も出題率の高かったシャルドネ。このブドウは万能型で、どこで栽培しても相応の結果が出る為、世界的に人気があります。
しかし、万能型であるが故にこれといった特徴のないブドウ品種でもあり、より栽培地域の個性、生産者の意図を反映させるため、試験対策としては難しい部類に入ります。比較的バランスが良いことが特徴かもしれません。ソムリエ試験的に樽のニュアンスを感じたらシャルドネで割り切ってしまうことをお勧めします。
・外観
やや黄色よりから照り照りの黄金色まで。アメリカとフランスのシャルドネを比べるとアメリカの方が色が濃い可能性が圧倒的に高いです。
・香り
一言では難しい。一つ言えることは、ブドウ由来の香りがあまりしないことです。
反対にさまざまな香りがバランス良く感じられるとも言えます。もちろん、シャブリなどの涼しい産地では柑橘系で爽やかなイメージが主体、より温暖なアメリカなどは黄色い果実のふくよかなニュアンスが主体になります。加えて、バニラやトーストの香りといわれる樽のニュアンスを感じることが多いです。→樽のないシャブリは今はあきらめましょう。そうすると、樽=シャルドネで片付きます。
※ブドウ由来の香りとは
たとえば、ゲヴュルツトラミネールなら”ライチ”というように直感的にそのブドウが思い浮かぶような香りと考えて良いです。第一アロマとも言います。主に果物の香りです。でも、慣れないと難しいですね。
・味わい
どちらかというと果実味の凝縮感に優れ、余韻に独特の苦味を感じることが多いと思います。味わいに関してもバランスに優れていることは特筆すべきかもしれません。そして、確率的にマロラクティック発酵していることが多く、丸みを感じることが多いです。
・まとめ
シャルドネは本当に難しい。だから樽=シャルドネとし、樽なしシャルドネはあきらめる。ここを追いかけるととんでもなく広い世界を彷徨うことになります。
たとえば、ブルゴーニュでもシャブリは樽を使わない生産者も多く、スッキリ爽やか系で酸も鋭角ですが、マコンになると樽のニュアンスに加え、酸も穏やかで果実の凝縮感の方をより強く感じると思います。アメリカのシャルドネになるとさらに温暖である為、アプリコットなどの黄色い果実のニュアンスが増え、さらにアメリカンオークの影響もありとってもふくよかに仕上がります。
それでも、シャルドネのスタイルというものがありますので、今の段階では、ブルゴーニュ/コート・ドールのシャルドネとカリフォルニアのシャルドネを比べて何かを感じてみましょう。
ブドウ由来の香りがしない、樽っぽさを感じたらシャルドネです。→以前は、ソムリエ試験的に「何のぶどうかわからない時はシャルドネ」と言われた時代がありました(試験官が試験直前にそれを言ってしまって大問題になったことがありました。笑)。ですが、今は樽を感じず、何かわからない時はリースリング が良いと思っています。
リースリング
独特の「石油香」を感じることが多く、酸は品がありキレイです。引き締まったミネラルも特徴と言えるでしょう。→ミネラルってなんだ?
リースリングはドイツとアルザスに絞ってテイスティングしましょう。NZとオーストラリアも出題されていますが、まずはリースリングの基本を知る、感じることが大切です。ソムリエ試験的に、白ワインのポイントはリースリングを理解できるかどうかといっても過言ではありません。→品種個性を持っていて、出題回数が多いですから。
・外観
色調は黄色系。ただ、淡めで無色に近いもの(ドイツ)から比較的濃いめのものまで様々です。
・香り
柑橘系の香り以上にリンゴや白い花の香りが主体。ですから、華やか系に分類されます。樽のニュアンスはありません。
→ここからは上級編です。(特にドイツのもので)「ミネラル」感満載で、果実味や白い花系の香りが取りずらくぺトロール(後述)も取れない、そんなブドウ品種の特定に困るタイプが時折存在します。ここからリースリングにたどり着くにはかなりの経験を要するので、”樽なし””ミネラル”系であることをしっかり感じてブドウ品種をあきらめることも一つだと思います。このリースリングの登場が、「困ったらリースリング」をおすすめする理由でもあります。
なんと言っても石油香(ぺトロール香)が最大の特徴!→ワインによって差があり、感じないものもあり、またいろいろ言われることもあるのですが、ひとまず特徴としてとらえて良い思っています。いろいろ言われるということに関してはキューピーちゃんの後に紹介したサイトをご覧ください。
※昔から石油香(ぺトロール香)を知るにはキューピーちゃん人形の首をとって中の匂いを嗅げといわれていましたが…。
→キューピーちゃんの話も含めてリースリングのペトロール香についてわかりやすく解説しているサイトがあります。ペトロール香を”灯油や、ミシンにさす油”と表現されているのはさすがだと思いました。著者はちょっとまじめにOGの方で、エクセレンス呼称をお持ちです。
・味わい
口あたりは滑らかでしっかりとした果実味を感じることが多い。繊細ながらしっかりとした酸がワインを支えていますが、ミュスカデやソーヴィニヨン・ブランのような溌剌としたイメージの酸ではありません。余韻に甘味を感じることも。
・まとめ
ソムリエ試験的には最も苦労するであろう、そしてポイントとなるリースリング。少なくとも”樽”のニュアンスはありません。
ソーヴィニヨン・ブラン
比較的わかり易いブドウ品種です。緑っぽさが外観にも香りにも表れます。新世界でソーヴィニヨン・ブランといえばNZなのでフランスと比べてみましょう。
・外観
他の白ブドウ品種に比べ緑のニュアンスが強く感じられます。淡い色調、粘性はどちらかと言えば軽め。
・香り
フランス産はフレッシュハーブの爽やかなグリーンの香り、軽く硫黄臭(マッチを擦った時の香り)、そしてレモンや酸っぱめの柑橘類の香りが特徴です。NZ産は同じくグリーンの香りですが、より華やかで太く、パッションフルーツの香りと形容されることもあり、メリハリがあります。→ボルドーのソーヴィニヨン・ブランは樽のニュアンスが加わりますから(樽=シャルドネですし)、試験的には無視して進めましょう。
・味わい
スッキリさわやか系、特にフランス産(ロワール)は鋭角で心地良い酸味が特徴的。柑橘のちょっとすっぱいくらいの酸味とグレープフルーツの苦味。こちらもNZのものになると、より華やかに、酸が穏やかに、よりボリューミーなります。
・まとめ
緑のニュアンス、フレッシュな酸が特徴。フランス産は”キリリ”と、NZ産はより太く”華やか”です。
甲州
近年優先度が上がったと言って良いでしょう。今や日本を代表するブドウ品種として最初に名前があがるのがこの甲州種です。後述のミュスカデと同じカテゴリーで、試験中にどちらか悩むこともあると思います。
特筆すべき何かがあるブドウではないのですが、日本のブドウ品種らしく、やさしい酸(悪く言えばぼんやり)とほどほどの渋みを感じることが特徴と言えなくもないといった感じです。→最近は樽を効かせたしっかりタイプも見られるのですが、試験対策としては無視しましょう。
・外観
淡い色調、粘性は軽いものからボチボチしっかりしたものまで。”淡いなぁ〜”と思ったら疑いあり。時折、淡い色調なんだけど、ほんのり赤っぽいニュアンスを感じる事があります。ちなみに甲州の果皮は薄い赤紫色です。→この果皮の色素がワインの外観に現れることがあります。
・香り
ミュスカデに通じるところがあるくらいですから、華やかな香りはありません。それでも柑橘系の爽やかな香りから吟醸酒的な香りを感じることが多いと言えます。また、丁子の香りも特徴的に感じられます。香りの印象としてけっして複雑ではなく、”ほのかに”という言葉がぴったりです。
・味わい
穏やかな酸味、余韻のほどよい渋みが特徴。ただ、長年この”渋み”をなくす方向でワインが造られてきた歴史もあり、はっきりと感じないワインもあります。
そして、やや単調でふくらみに欠けます。また、甘さが残ったものも見受けられます。悪い言い方をすれば(酸が少ないこともあり)ややゆるいと感じてしまうことも。旨み的と言えなくもないかもしれません。→このように言い回しまでなんともはっきりしない感じが日本らしい品種とも言えます。
・まとめ
リースリングやソーヴィニヨン・ブランなどのブドウ品種由来のしっかりとした香り、特徴があるタイプと二分されます。ミュスカデ・甲州はニュートラルで全てにおいて主張しないところが特徴です。
甲州はまだ出題され始めて日が浅いですが、もう立派な主要ブドウ品種です。時間のない方はミュスカデはあきらめても良いですが、甲州は意識しておきましょう。
ミュスカデ
色が薄くて、サラサラ、香りがあまりしなかったら疑いありです。
・外観
淡い色調。他の白品種に比べ圧倒的に淡く、粘性も弱い。
・香り
香りが取りづらく、ボリュームに欠ける。ひかえめなレモン、ハーブ系。他の要素が弱い分ミネラルのニュアンスが際立っている。
・味わい
スッキリ系。薄く固い印象。柑橘系の酸、塩っぽいミネラルの感じ。余韻は短い。→この固さのニュアンスがミネラルをよく表現していると思います。
・まとめ
シャルドネ・リースリング・ソーヴィニヨン・ブランに比べて明らかに何かが足りない感じ。糖度がそれほど上がらないブドウのイメージです。
ミュスカデと甲州。この二つの酸とミネラルの違いを感じ取れるようになれば素晴らしいです。ただ、この二つはテイスティングコメント的にも似通っているので取り違えたとしてもほとんど問題ありません。
ゲヴュルツトラミネール
ライチの香りで御馴染みのという感じです。非常に特徴的でわかり易い。
・外観
どちらかというと濃い目で黄色が強い。粘性もまずまず強め。
・香り
とにかくライチと白い花の甘い香り。お香的なニュアンスも。
・味わい
トロりとしたオイリーな質感に、しっかりと果実味(甘み)を感じます。酸は控えめ(に感じるはず)。
・まとめ
本当にライチ!という感じです。独特の存在感があります。
さて、駆け足で主要白ブドウ品種の特徴をお伝えしました。すぐに理解できるものではありませんので、毎回テイスティングしながらご自身の感じるところとのすり合わせを行ってください
また、以前紹介しました下記の本を読まれていない方は少なくともどちらか一冊は必ず読んでみてください。そしてできれば、しっかりと読み込んで欲しいのです。テイスティングの基本についてよくわかります。
佐藤陽一著「ワインテイスティング―ワインを感じとるために」
谷宣英著 「ワインテイスティングバイブル」
あとこちらも上記二冊の他に必ずこちらも。
石田博著 「10種のぶどうでわかるワイン」
10種のぶどうでわかるワイン
各ブドウ品種の特徴については、人によって感じ方が違うこともあると思います。また、何とか言葉にしておりますが、言葉にできない感覚の方がより重要であることも承知しております。ですが今はその感覚を育てるためにも言葉にする訓練をしてください。
これから試験まで、テイスティングできる機会はそれほど多くはありません。一度の経験を大切にして自分なりの感覚を育んでください。