ワインアドバイザー全日本選手権出場者のシニア試験時の苦悩
第127回
前回、名誉管理人のテイスティング時の苦悩をお伝えさせていただきました。
誰でも悩むものだということを知っていただきたかったのですが、続いて、2013年にワインアドバイザー全日本選手権に出場した松岡氏のご友人のシニア試験におけるテイスティングの手記もご覧ください。
こちらの方も悩まれており、そのテイスティング時の思考が皆さんの大きな参考になるはずです。(もちろんご本人の許可をいただいております)
さて、一次試験期間としては8月が残り半分となりました。ギリギリに日程を設定し、最後まで頑張っておられる方もたくさんいるでしょう。最後の最後まであがいてください。今この瞬間しか出せない集中力ってあると思います。火事場のなんとやらです。全部出していきましょう!
最後の正念場です。合格のご報告をお待ちしております。
ソムリエ試験二次のテイスティング対策関連のご案内
◆「二次のテイスティングをなんとか乗り切るための必勝マニュアル2024+必勝講座」のご案内
→詳しくはこちらをご覧ください。◆【仙台、東京、名古屋、大阪】ソムリエ試験二次テイスティング対策「実践」セミナー8・9月開催
→詳しくはこちらをご覧ください。まずは東京と名古屋の期日が近づいています。◆ちょっとまじめにソムリエ試験対策こーざ 二次試験対策メルマガ 登録はこちらから
◆こーざと連動してインスタグラムで日々の勉強をちょっとサポート。フォローはこちらから
→2次試験対策、ちょっとアップします。
◆この”こーざ”への感想を募集しています◆
試験問題の流通は制限されておりますが、一次試験の合否や、この”こーざ”で勉強してきての感想、一次試験対策の良かったところ、ダメだったところなどを、忌憚なくメールで送っていただけると嬉しいです。今後の参考や励みになります。
どうぞ、よろしくお願いいたします。ご感想は info@majime2.com までお願いいたします。
ワインアドバイザー全日本選手権出場者のシニア試験時の苦悩
いよいよ12時50分からテイスティング試験開始。
配られたワインは白が2つに、赤が2つ、酒精強化ワイン1つの計5種類。
1番目の白は無色に近いプラチナのような金属質の淡い外観。それと対称的に2番目の白は熟成感を感じさせる黄金色に近い外観。
3番目の赤は鮮やかなルビー(今でいうラズベリーレッドです)で、カベルネ・ソーヴィニヨンやシラーのようなパワフル系品種とは明らかに違う外観。
4番目の赤は、さらにそれよりも淡く、グラスのフチがオレンジ色を帯び、明らかに熟成を感じさせる外観。
5番目も鮮やかなルビーであったため、てっきり赤ワインかと思ったら、銘柄のみを答える酒精強化ワインでした。一般呼称資格試験とは違い、シニア呼称は“ブドウ品種”“生産国”“生産地域”“原産地呼称”の選択肢はないため、受験者全員にワインが配られる間、その外観からある程度の品種の絞込みを図っていきます。
1番目の白は、その無色に近い色調から、いよいよこれを出してきたかの甲州?それともミュスカデ?大穴でソアヴェか?
2番目の白は、直球ど真ん中で熟成タイプのシャルドネ?これまでなぜか試験には出なかったシュナン・ブラン?
3番目の赤は、明るいルビー色からすれば、ど真ん中でピノ・ノワールか?それともこのところ出現頻度が上がりはじめたマスカット・ベーリーA?この色だったら、キアンティやバルベーラ、カベルネ・フランもありうるか?
4番目の熟成感のあるルビー系の赤といえば、これまたピノか?対抗馬でバローロやリオハのレセルバ?はたまたキアンティの熟成タイプ?試験開始の合図で1番目の白から取りかかります。
先ずは【外観】から“澄んだ”、“輝きのある”といった、お約束のコメントに次々とマークしていきます。
香りはレモンやグレープフルーツのような柑橘系が主体。複雑性は感じられず、爽やかな酸味のクリーンでシンプルな味わい、お寿司などの和食に合いそうな白ワイン。「う~ん、やっぱり甲州かな?でもミュスカデも捨てがたいし…」と少し迷った後で、今のソムリエ協会の日本ワイン重視の傾向も考え、これまで出る出ると云われながら出されなかった“甲州”に決定。生産国・地方は当然のごとく“日本”“山梨県”、アペラシオンは“勝沼”と記入。
続いて、2番目の白ワイン…。
外観は白ワインとしてはかなり濃いめの黄金色に近いイエロー。はたしてこれは品種特性からくるものなのか?温暖な産地のものか?樽を効かせた熟成タイプなのか?香りは外観のごとく黄色い果実や黄色い花の香りが主体。若干の酸化熟成のニュアンスも感じられますが、ブルゴーニュの熟成したシャルドネに感じられるナッツのような樽熟成のニュアンスがほとんど感じられません。かといって、果実味が前面に出たヴォリューム感のある新世界のものでもありません。樽のニュアンスがほとんどなく、「黄色い果実と黄色い花が主体といえば、これも今まで出題されたことのないあの品種か…」と、品種“シュナンブラン”、生産国“フランス”、地方“ロワール”、アペラシオン“ヴーヴレイ”と記入。
3番目の赤ワイン…
外観は紫色を帯びた明るいルビー。見た目からはピノ・ノワールが最有力候補ですが、香りを取るとピノにしてはとても甘くチャーミングで、フォクシー・フレーヴァーのようなニュアンスも感じられます。味わいもとてもジューシーで、香り同様に“甘さ”を感じます。この時点で、私の脳ミソが「これだ!」と判断したのが“マスカット・ベーリーA。生産国や生産地域も1番目の白同様に“日本”、“山梨県”、“勝沼”と記入しますが、「いや、まてよ、いくらなんでも同じ山梨から2つも出されるか?」と疑念がよぎります。何度か口に含んでみますが、最初の結論を覆すだけの材料が見当たりません…。「いままでだったら有り得ないけど、今年は大きく方針が変わる年だし、日本ワイン重視の今の協会だったらやりかねないよな~」とそのまま解答。
4番目の赤ワイン…
こ、これは困った…。香りが全く拾えない…。温度が低いからかなと、手のひらでグラスをしばらく包んで温度を上げてみますが、明確な香りが分かりません。口に含んでみても、これまた香り同様決め手となる要素がほとんど感じられません…。色調はバローロが一番近いと思われましたが、余韻に感じられる特有の苦味やタンニンがほとんどありません。ここで試験官の「残りあと10分です」のコール。「ヤバス…、もう時間もないし…」あれこれ迷った挙句、安全策をとってブルゴーニュのピノ・ノワールと記入。
5番目の酒精強化ワイン…
実は朝、この試験に出掛ける前に、最終チェックでルビー・ポートとマデイラを試していたため、これがポートワインであることは分かりました。しかし、解答の選択肢には“ルビー・ポート”がありません。選択肢にあるのは、“トウニー・ポート”“マデイラ”“マルサラ”“レイトボトルド・ヴィンテージ・ポート”“ヴィンテージ・ポート”の5つ。
“マデイラ”と“マルサラ”を真っ先に消去。残り時間5分となってしまったので、もうすぐに決定するしかありません。「トウニー・ポートであれば、その名のとおり黄褐色がかってるはずだけどこれは違うし、ヴィンテージ・ポートなら濾過していないからもっと濁った感じがするよな~」と、最後に残った“レイトボトルド・ヴィンテージ・ポート”を選択。その日の午後6時過ぎにHPで発表された正解は以下の通り。
1. 日本 / 山梨県 / 甲州市 / 甲州
2. フランス / ブルゴーニュ地方 / プイイ・フュイッセ / シャルドネ
3. アメリカ / オレゴン州 / ウィラメットヴァレー / ピノ・ノワール
4. イタリア / ピエモンテ州 / バローロ / ネッビオーロ
5. トウニー・ポートガガガ~ン!!!
なんと、正解しているのは最初の“甲州”だけでありました!
∑(゚□゚;)ガーン(。□。;)ガーン(;゚□゚)ガーン!!
蓋を開けてみれば、“シャルドネ”や“ピノ・ノワール”といった王道中の王道ばかりではありませんか!!
「この数ヶ月、あれだけの“千本ノック”を受けてきたのに、あれはいったいなんだったんだろう…」と後悔の念ばかりが頭をよぎります。これではおそらく、筆記とテイスティングの合計で判定されない限り、合格は極めて難しいでしょう…。
全日本選手権に出場されたクラスの方でもこれくらい悩むということです。
また、実力者であっただけに知っているワインの幅が広く悩んでしまい、そして運もあったのだと思います。
それでもこの方もシニア試験に合格されております。ブドウ品種は落としてしまいましたが、テイスティングコメントがかなり適切であったということです。←やっぱりテイスティングコメントなんです!
この報告からも読み取れるように、深読みして難しいブドウ品種を考える必要はないということです。近年はこの時代に比べてもう少し突っ込んだブドウ品種が出題されるようになりましたが、そのブドウ品種を狙わずとも必ず合格できます。特にあまり自信を持てない方は、難しく考えることはやめて、シンプルに素直に”こーざ”的にテイスティングを進めてみてください。
何かございましたらこちらまで
info@majime2.com 牧野 重希