第86回 この時期のテイスティング対策について

   

梅雨入りした地方もあるようですね。いかがお過ごしでしょうか?

けっこう辛い日々ですよね。楽ちんポンの人はほぼいないはずです。でもね、それは当たり前のことで、何か大きなことを成し遂げるその過程には立ちはだかる壁があるものなんです。

さて、いただいたメールにお答えしました。同じような悩みを抱えている方がいらっしゃると思いこちらでも紹介したいと思います。

ワインスクールに通っているのですが、二次のテイスティングに全く自信が持てません。

他の受講生は品種名の6、7割を正解していますが、私はようやく”ソービニヨン・ブランのハーブ香がわかってきたかな”というレベルです。リースリングのペトロール香もよくわからないですし、シャルドネもシャブリなど樽香の薄いものは高頻度で間違えてしまいます。

赤ワインの基本ブドウ品種もピノ・ノワール以外の品種の判別はほとんど運任せといったレベルにあります。

圧倒的にワインの経験が不足しているように感じているのですが、現時点でこのレベルですと、今から毎日テイスティグを行っておいたほうが良いでしょうか?一次試験が終わってから毎日テイスティングをしようと思っていたのですが…。

一次試験を突破しないと二次試験に挑めませんから今の時期は何をおいても一次試験対策です。それでも、私は少しでもテイスティング対策を並行して行うべきだと思っています。

以前もどこかでふれましたが、テイスティングは結果が伴うまでに時間がかかります。ある程度経験を重ねた後に形として表れるという感じでしょうか。ある瞬間に”あっ、この香りは…””あれっ、このニュアンスはあの時の…”などと閃くことがあるという感じです。ただ、二次試験までに間に合うかどうかはわかりません。

現段階においてもお勧めできることはやはりワインを比べてテイスティングし、言葉にしてみることです。以前『第6回 ワインをテイスティングして書きとめる』の時に力説しました。とても地味で大変な作業ですが、書いて記録することが一番力になります。

感じたことを言葉にしようと意識することでテイスティングに対する姿勢が変わります。すると感じ方も違ってくるんです。ワインの言葉の蓄積によって過去に経験したワインと比べることができるようになり、ワインを理解し始めるという流れです。

はっきり言って、言葉にしないでただ漠然とテイスティングする(飲む)だけならやらない方がいい。今は一分一秒が大切な時期、時間の無駄です。

こうしてテイスティングし違いを感じ、言葉にして書き続けることで一回や二回のテイスティングでは気づかなかった傾向やご自身の癖がだんだんわかるようになってきます。そして、時折書き連ねた言葉(記録)を整理することによって、例えば”ソービニヨン・ブランに〇〇のニュアンスを感じることが多い”と気づくものです。→その〇〇が参考書や一般に言われていることとは違うかもしれません。また、個人によって感じやすい香り、感じ取りにくいニュアンスがあります。
また、比べてテイスティングすることはそれぞれの違い、特に強弱を感じて欲しい為で、その差を感じる中で自分なりの基準ができていきます。

二次のテイスティングではどうしてもブドウ品種を当てることに意識が集中してしまいがちです。しかし、ブドウ品種は配点のほんの一部でしかありません。これまでにいただいた合格報告のコメントや同メールを見てもブドウ品種は一つしか正解しなかったものの、ちゃんと合格された方がたくさんいらっしゃいます。二十年前に受験した私もブドウ品種は一つしか正解しませんでしたが合格していました。

リースリングに関して、全てのリースリングからペトロール香を感じるわけではありませんが、ペトロール香は理解された方が良いと思います。ペトロール香は比較的とらえやすい香りです。ただ、世の中にはブショネを感知できない人がいるようにもしかすると苦手なタイプの香りなのかもしれません。→有名醸造家の中にもブショネを感じられない人がいます。

また、『シャルドネもシャブリなど樽香の薄いものは高頻度で間違えてしまいます』とありますが、これはかなり難しい。ここを理解できるのであればソムリエ試験的に白ワインは問題ないと言えるレベルです。シャルドネはこれといった特徴の無い品種で反対に土地や環境によって様変わりします。以前どこかでソービニヨン・ブラン(サンセール)をシャルドネと間違えた話をお伝えしました。←この時のシャルドネはシャブリではありませんでしたが。こう言ってはなんですが、私ブラインドテイスティングにはけっこう自信があるんです。それでもこんなものです。

ただ、”樽香をあまり感じない”とわかるわけですから、それを生かさない手はありません。ソムリエ試験的に樽香の有無から判断できることがたくさんあります。また、このシャルドネ(シャブリ)を例えばソービニヨン・ブラン(サンセール)と間違えたとしても、テイスティングコメントは似通ったものになりますからかなりの部分得点につながるはずです。→比較的冷涼な地域の色調の淡い柑橘系の白ワインというカテゴリーですから。反対にシャルドネは正解であっても、シャブリをカリフォリニアのシャルドネと想定してテイスティングコメントを答えてしまうとほとんど得点にはなりません。合格するためには圧倒的で前者(ブドウ品種なんて間違えてもいいのでタイプ分けをしっかりとらえること)です。

ソムリエ試験は大学入試のように定員が決まっているわけではないので、他の受験者と争う必要がありません。ですから、現段階での経験の無さを他の方と比べて嘆くことはやめましょう。確かに経験があったほうが有利ですが、経験が無いなら無いなりの方法があります。経験のある方はいろいろなワインを知ってしまっている為に余計な読みをしてしまったり、迷った時により多くの選択肢が頭の中に並ぶわけで、選択肢が多いということは外す可能性も高くなります。このようなケースで失敗された方の話を聞くこともあります。→一次試験終了後に、絞って絞って幅を狭めて合格された方の報告も紹介できると思います。

私はどちらかというとワインスクールに通えないそれほど経験の無い方に向けてこの講座を進めています。テイスティングに関しても数ヶ月の経験と受験テクニックで合格できると思っています。そして過去7年間、多くの方より合格しましたというご報告をいただきました。

夏頃に正式に発表するつもりですが、まもなく”2019年度 二次のテイスティングをなんとか乗り切るための必勝マニュアル”の作成を始めます。

私の二次のテイスティング対策はテイスティング経験の少ない方でも何とか合格するためにソムリエ協会が望む表現(模範テイスティングコメント)をブドウ品種・タイプごとに暗記し、準備された選択肢から選ぶことができるようになることに特化して進めます。

その為の準備を今、しっかりとしておいてほしいのです。その準備がテイスティングして言葉で書き留めることです。 

このマニュアルに関してはまたこちらでご案内させていただきます。しばしお待ちください。

二次試験までまだ四ヶ月以上時間があります。その前に一次試験が控えており、そちらの対策もおろそかにできませんが、週に一、二回でもテイスティングの時間を設け、一次試験が終わるまでは基本に忠実にテイスティングして感じたことを書くことをお勧めします。

さて、前置きが長くなりましたが、この時期<六月>のテイスティング対策についてお伝えします。

運命は、志あるものを導き、志なきものをひきずってゆく。 by セネカ(ローマ帝国の政治家、哲学者)

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第86回 6月、この時期のテイスティング対策について

ここ2年、二次のテイスティングの配点がソムリエ協会より発表されております。

〜2018年度 協会発表の得点配分〜
※()内は2017年度の数字です。

外観 24%(20%)
香り 33%(28%)
味わい 20%
その他の項目 10%
収穫年 3%
生産地 3%(6%)
主なブドウ品種 3%(9%)
飲料の銘柄 各2%

100点満点中ブドウ品種全問正解でたったの3点、一方で、外観や香りなどいわゆるテイスティングコメントの配点は87点もあります。→全配点を合計しても98%にしかなりませんが。

この協会発表の数字からもおわかりいただけるように合格するためには、ブドウ品種を当てることよりもワインの印象をとらえ”ソムリエ協会が望む表現(テイスティングコメント)を選択肢から選ぶ”ことが一番のポイントになります。→ここまでブドウ品種に対する配点が低いのはどうなのってちょっと思います。そして、ブドウ品種の特徴を理解することは大切です。

さて、今この時期に合格するために何をすべきなのか?

意識すべきことは二つです。

・外観の濃淡・粘性から味わいの酸・アルコールのボリューム感まで、ワインの強弱を感じられるようになること
・主要ブドウ品種の特徴を自分のポイントで掴むこと

ご自身のポイントを探しつつ、ワインの強弱を常に意識する。この二つに特化してテイスティングを行ってください。そして、もういいよ、というくらい言ってますが、テイスティングして感じたことを言葉にして書いてください。今からでも結構です。とにかく、ワインのイメージを間違っていてもいいので言葉にする訓練をしておいてください。

テイスティングコメントに関しては一次試験が終わった後に嫌というほど覚えていただきます。

以前、第43回 二次のテイスティングに出題されたワイン以降数回にわたってテイスティング対策についてまとめました。テイスティングに関する本も紹介しました。

これらをもう一度しっかり読み込んでみてください。今読むと感じるところが違ってきているかもしれません。そうなればしめたものです。

まだ読まれていない方、必ず読んでください。こちらです。

二次試験において出題されるアイテム全てのブドウ品種を正解する必要はありません。三種出題されるうちの一つは必ず取りたいといったところです。エキスパート呼称の方は四つのうちのできれば二つ、そこを目標にします。→ちなみに毎年、ブドウ品種正解ゼロで合格する方がいらっしゃいます。ブドウ品種を当てることだけが二次のテイスティングではないという証です。目指す必要はありませんが。笑

その為にとにかく主要ブドウ品種の特徴を自分なりに掴んでほしいのです。マイナー品種は一切無視します。出るか出ないかわからないようなブドウ品種に惑わされて、主要品種を見逃してしまったら目も当てられません。カベルネ・ソービニヨンの特徴すらいまいち理解していない人が、マルベックやグルナッシュに気を取られている場合ではありません。カベルネ・ソービニヨンだけでもあと何回テイスティングできるのか考えてみてください。

ワインの特徴をとらえる時は自分の感じやすいポイントを強く意識してください。人それぞれ得意な香り、とらえやすいニュアンスがあるはずです。例えばシラーの黒コショウがわかりづらければ、他の共通する何かを感じ取ってほしいんです。

私はシラーの香りは”オリーヴ”だと思っておりますが、ソムリエ協会の模範テイスティングコメントにオリーヴが出てくることはありません。でも、それでいいんです。私はオリーヴを感じたらシラーだと結構高い確率で特定できるんですから。その後、シラーの特徴から外れていないかを確認します。もちろん、これでも100%はありません。

何年か前にエキスパート呼称に合格された方からいただいた感想の中の一文です。
香りですぐにカベルネ・フランだ!と結論を出しました。私にとってカベルネ・フランの香りはチョッと土のついたじゃがいもなんです。主婦でよかった。

こんな感じで、この香り、ニュアンスを感じたらこのブドウ品種というものを見つけると強いんです。例えその得意な香りやニュアンスがちゃんとした言葉にならなくてもいい。イメージや雰囲気でも。

おそらく全ての主要ブドウ品種について”これ”という何かを見つける時間はないと思います。それでも、その為に何度も申し上げておりますが、ワインをテイスティングして感じたことを書いてくださいと言い続けているのです。書いて言葉にすることで何かが見えてくるはずです。そして自分のポイントを見つけられれば合格にかなり近づきます。

今は細かいテイスティングコメントやヴィンテージなどは後回しでぜーんぜん問題ありません。とにかくある程度ブドウ品種をイメージできるようになる為に、頑張って気が付いたことを書いて書いて書き続けてください。このコメントは人に見せる為でも、他の人にワインの良さを伝える為でもありません。合格するための訓練であり、皆さんのワイン道の礎です。

まとめます。

主要ブドウ品種の特徴を自分のポイントでとらえる。

シャルドネっぽいソーヴィニヨン・ブランもミュスカデもリースリングも存在します。ブラインドテイスティングでメルロなんていつも迷います。それでもソーヴィニヨン・ブランらしさ、メルロらしさというものがあるんです。まずは主要品種それぞれの”らしさ”を感じる努力をしましょう。

その”らしさ”を少しずつ理解して、あとはどこまで幅を広げられるかです。メルロで話を続けますが、サンテミリオンの軽めでやや青いニュアンスを持つメルロから新世界の濃厚なメルロまでさまざまなタイプが存在します。その幅の中で現在テイスティングしているメルロがどのあたりに位置するのかを意識できるようになれば合格は近いです。→メルロを例に出しましたが、難しいのでよほど自信のある方以外、メルロは捨ててください。濃い系黒果実タイプは強弱をしっかりとらえて、カベルネ・ソーヴィニヨンかシラー(シラーズ)に持っていけば問題ありません。

もう一度言います。100%ブドウ品種がわかるようになることはありません。100%わかろうとしてもいけません。ワインなんて人が造るものです。ピノみたいなメルロを造ろうとする人もいれば、ボルドーみたいなワインをガメイから造る人もいるのです。そんなすべてのワインの個性を知ることは人生をかけても不可能です。

濃淡・粘性から酸・アルコールのボリューム感までの強弱を感じられるようになる。

こちらでもふれましたが第23回 ワインの酸とアルコール 1、二次のテイスティング攻略の大きなポイントの一つはこちらです。

単純に考えると冷涼な地域では淡い色調で酸が特徴的なワインが造られますし、暖かい地域ではその反対、ブドウがよく熟すんですから濃い色調で粘性が強くアルコールのボリューム感を感じるワインに仕上がります。

特に酸とアルコールのボリューム感を感じられるようになることは大切です。中には酸もアルコールのボリューム感もしっかりしたワインが無いわけではありませんが、そんな少数派を意識する必要はありません。

<酸>1←←2←←3←←4←←5←→6→→7→→8→→9→→10<アルコールのボリューム感>

このようなものさしがあるとして、今テイスティングしたワインがどの位置にあるのかということを意識してみてください。例えば、白ワインでいえばソーヴィニョン・ブラン(フランス)であれば2~3くらいだな、シャルドネ(アメリカ)なら8くらいかな、と言った感じです。テイスティングノートにその数字(5段階でも10段階でもお好きに)を書き溜めましょう。

北の産地のワインの方が数字が小さく、暖かい地域や新世界のワインの方が数字が大きくなるはずです。もちろん例外はあるでしょう。

この強弱について自分なりの基準が持てると、いろいろなことがわかってくるようになります。まず、<酸>寄りの1~4であればそのワインは二次試験的にはほぼドイツ・フランス産です。7以降になると新世界の可能性が高くなります。例えば、シラー(フランス)であれば4~MAX7くらいのイメージですが、7以降であれば新世界を疑います。といった具合です。

この基準がしっかり持てるようになってくるとテイスティングした段階でブドウ品種はわからなくとも、少なくとも涼しい地域のワインではないな、反対にこのボリューム感でフランスやドイツは考えられないと、消去法を使えるようになります。単純に目の前のワインが冷涼な地域のイメージなのか、暖かい地域のイメージなのかを判断できるだけで、テイスティングのスピードがかなり上がりますし、ブドウ品種がわからなくてもかなり得点を拾えます。二次のテイスティングはスピード勝負です。本当に時間がありません。

その為に、いろんな産地の同じブドウ品種のワインを同時に比べながらテイスティングする事も一つです。

一例として
・ブルゴーニュ・シャルドネ(コート・ド・ボーヌの生産者)
・マコン・ヴィラージュ
・日本のシャルドネ(ほどほどに名の通ったブルゴーニュタイプを目指している生産者)
・アメリカまたはオーストラリアのシャルドネ(この二つの違いを感じ取る必要はありません)
これらを同時にテイスティングしながら<酸>、<アルコールのボリューム感>とはなんぞやと悩んでみてください。

ここがわかってくると一気に合格に近づきます。

とにかくワインの強弱です。これから二次試験までテイスティングできる回数はそれほど多くありません。毎回、必ず意識してテイスティングしてください。

実際にテイスティングを行うときには

実際にテイスティングする時は同じ色のワイン数種類を同時に抜栓して、ブラインドテイスティングしながら比較してください。一度に全てのワインを消費できないでしょうから三日から四日間は毎日ブラインドテイスティングするくらいの気持ちで取り組みましょう。→有名な小瓶移し替え作戦もいいと思います。ワイン、小瓶移し変え等で検索すると出てきます。

ブラインドテイスティングに関してワインをグラスに注ぐところは同居の方、ご友人などに手伝ってもらえるならお願いしてみてください。一人暮らしで手伝ってもらえる人がいない方もいらっしゃると思います。←私もでした!それでもできるだけ、わからないようにしてグラスに注いでテイスティングしましょう。

私は部屋を真っ暗にして、グラスとボトルを冷蔵庫から出して並べ、ボトルの位置をシャッフルし、さらにボトルの下部を持ってグラスに注いで、テーブルに移動してテイスティングしていました。ボトルの上部を持つと形でわかってしまうことが多いからです。

また、テイスティングする時の温度にも注意を払いましょう。

白ワインは冷蔵庫から出して15分前後くらいからテイスティングを始めます(12℃前後から)。赤ワインは気温が22~25℃くらいの過ごしやすい日であれば、冷蔵庫で20分前後冷やす、または冷蔵庫で完全に冷やしてから外に出して30分から1時間後くらい、理想は17℃くらいからテイスティングを始めてください。

ーーーー

この時期、多くの方が二次のテイスティングに不安を感じ、進歩していないと感じる自分に苦悩しているはずです。でも、それはあなただけではありません。

それでもなんとかしますので、とにかく今は少しでもブドウ品種の”らしさ”を感じつつ、ワインの強弱の距離感を意識しながらテイスティング対策を進めてください。。

何かございましたらこちらまで

koza★majime2.com 松岡 正浩

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