赤ワインを比較する。

   

第47回

こんな真っ黒なグラスがあります。
black 2016
当然、外観の印象は全くわかりません。
このグラスを使ってブラインドテイスティングをすると、赤ワインと白ワインを間違えることがあります。時にワイン会などでも、参加者の意見が赤・白半々にわかれることがあるくらいです。→フランス時代、バリバリのソムリエ数人がブルゴーニュのピノとシャルドネを本気で間違えるところを見たことがあります。

また、ロゼワインはこの真っ黒グラスでテイスティングするとほとんどの人がロゼと答えることができません。

少し前ですが、第七回全日本最優秀ソムリエコンクールの決勝において形状は違いますが、このような真っ黒なグラスでワインが三種出題されました。そのうちの一アイテムが”マルサネ・ロゼ”でしたが、優勝した石田氏を含む決勝進出者二名が”ロゼ”と答えることができませんでした。

本当に難しいものです。

日常的に情報量として脳がインプットしている割合は、視覚83%というデータがあるそうです。ワインテイスティングに関しても視覚情報によって作られたイメージに基づく先入観がその分析を支配しているように思えます。

何らかの方法で視覚情報を遮断してテイスティングすることもよい経験になります。→ソムリエ試験二次のテイスティングはこんなに高度なことは問われないので、外観からしっかり観察しましょう。

明日ではなく、今日少しだけでも頑張りましょう。疲れているのは皆同じです!

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赤ワインを比較する。

さて、白ワイン同様に赤ワインを比較します。

始める前に少しだけ、白ワインと赤ワインの味わいにおける一番の違いはなんでしょうか。わかりますか?

【ヒント】
醸造行程が違います。←この違いがパッとわからない方は今調べましょう。

そして、黒ブドウから白ワインを造ることはできますが、白ブドウから赤ワインを造ることはできません。
※黒ブドウから造られる白ワインで有名なものにシャンパーニュのブラン・ド・ノワールがあります。

そうです。渋味の有無です。味わいに関しては単純に白ワインに渋味を加えると赤ワインと考えることができます。そして、赤ワインのテイスティングにおいて、渋味をどのように感じるかということがポイントの一つになります。

さて、始めたいと思います。

1. 見比べてわかること。

・濃淡を見る。
淡いのか、濃いのか、その濃さはどの程度なのかを判断できるようになることでわかることがあります。

ソムリエ試験的に言えば、淡い色調であると判断したならば、真っ先にピノ・ノワールをイメージしなければなりません。
ガメイ・マスカット・ベーリーAは淡い系よりですが、どちらか悩むこともあります。また、カリフォルニアなどには色の濃いピノ・ノワールもあります。

白ワインと同様に、暖かい地域のワインほど色が濃くなります。

・「赤っぽい」か「黒っぽい」かを判断する。
赤ワインの外観を見るときの二番目のポイントがここです。過去に出題されたアイテムの中で最も「赤っぽい」ものがピノ・ノワールで、「黒っぽい」ものがカベルネ・ソーヴィニヨンになります。
また、熟成によっても色調が変わります。若いワインは紫のニュアンスが強く、熟成が進むにつれて赤く(褐色)なっていきます。

「赤っぽい」  →  「黒っぽい」
ピノ・ノワール → ガメイ/マスカット・ベーリーAサンジョヴェーゼ/ネッビオーロ → シラー(シラーズ)→ カベルネ・ソーヴィニヨン

熟成に関する規定があることなど、文化的にイタリアワインは赤味を帯びる確率が高くなります。反対に若くて果実味たっぷりのワインが好まれるアメリカのワインは、紫の色調を感じることが多いといえます。

・粘性
上記の「赤っぽい」→「黒っぽい」の順が、粘性の「弱」→「強」に当てはまると言えなくもないのですが、ブドウの特徴に加えて、生産国・地域によるアルコール分に由来することも加味しなければなりません。

粘性が「弱い」 → 「強い」
フランス/日本 → スペイン/イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ

このくらいのイメージでしょうか。

※外観でしっかりとイメージを持つことがとても大切です。

2. 香りを比較する。

・「赤い果実」系と「黒い果実」系にわける。
白ワイン以上に複雑な香りを持つ赤ワインですが、単純にわけてしまいます。香りのニュアンスはワインの色調にそれなりに比例します。

「赤い果実」系 → 「黒い果実」系
ピノ・ノワール/ガメイ/マスカット・ベーリーA サンジョヴェーゼ/ネッビオーロ/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン

左から右に進むにつれて黒い果実(カシスやミュールなど)のニュアンスが強くなります。とはいえ、いろんな香りが複雑に交わっています。

ブドウそれぞれの特徴的な香りと合わせて感じられるようになってください。

・それぞれの生産国のニュアンスの違い
なんとなくですが、それぞれの国、地域によってそれなりに系統立った香り、ニュアンスを感じます。それらがとくに赤ワインに顕著に感じられるので、少しだけ紹介してみます。

・フランス
どの国よりも酸・ミネラルのニュアンスを感じます。また、ハーブっぽさも一番わかりやすい。

・イタリア
土っぽさ、埃っぽさ、薬品的な風味、酸化的なニュアンス。

・アメリカ
過熟感、熱感。樽の強いニュアンス。酸、ミネラルのニュアンスはどの国よりも少ない。

・オーストラリア
アメリカ寄りですが、特有の「ユーカリ」ぽい青さを感じることが多いように思います。

・チリ
なんと言ってよいのか、独特の香りがします。酸っぱいような、うーん…ちょっと他の国にはない雰囲気です。アメリカほど強い過熟感、熱感はありません。

※新世界ワインに使われる樽のニュアンスについて
主にアメリカンオークが使用されます。フレンチオークよりも個性が強く、チョコレート、ヴァニラ、ココア、ゴムなどのわかりやすい香りを強く感じます。

あくまで私のイメージです。言葉では伝えようのないことも多いので、今回はなんとなく通りすぎて、いつか共感していただければと思います。

3. そして、味わいの違いを感じる。

理想は味わいで確認です。→ただ、残念ながらなかなかうまくいかないものです。

・渋味を感じる
赤ワインと言えば渋味です。渋味の強弱を感じてください。

渋みが弱い →  強い
ガメイ/マスカット・ベーリーA→ ピノ・ノワール → サンジョヴェーゼ→ シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン/ネッビオーロ

・酸味を感じる
酸味が強い → 弱い
ピノ・ノワール → ネッビオーロ/サンジョヴェーゼ → ガメイ/マスカット・ベーリーA/シラー(シラーズ) → カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロにもしっかりとした酸があるのですが、カベルネ・ソーヴィニヨンは酸以外の要素も十分に主張する為、それほど感じないのです。反対にガメイ/マスカット・ベーリーAは酸だけではなく全体としてそれほど主張しない感じです。

・ボリュームを感じる
軽め → しっかり
ガメイ/ピノ・ノワール/マスカット・ベーリーA → 【ここに大きな差があります】 → サンジョヴェーゼ /ネッビオーロ → シラー(シラーズ)/カベルネ・ソーヴィニヨン

サンジョヴェーゼとネッビオーロはポイントが違うんですよね。→兄弟で育ちは同じなんだけど顔は全然似てないって感じでしょうか。

ボリューム感を国別で比べてみます。

軽め → しっかり
フランス/日本 → イタリア/チリ → オーストラリア/アメリカ

粘性と同じ並びですね。

駆け足でしたが、一通りまとめてみました。とはいえ、ワインはさまざまな国のこれまた千差万別の考えを持った人々がさまざまな天候の中、毎年造っています。一言でこうですとは言えないものです。

一つの考え方としては、フランスを基準にしてみることです。例えばカベルネ・ソーヴィニヨンなら、ボルドーに見られるピーマンや森の緑のニュアンスを起点とします。そして、ブラインドテイスティングの最中にカベルネ・ソーヴィニヨンかな?と思い当たったとします。そこで自分の基準とするボルドーのカベルネではない要素、違和感(ピーマンっぽさよりもジャムのようなニュアンスが強いなど)を感じた時に新世界のカベルネを思い浮かべるといった流れが私には自然でわかりやすいように思います。これらはあくまで私の感じ方です。皆さんも自分の中に基準を持てるように頑張りましょう。

4.そして判断する

ブドウ品種を当てることがメインではないのですが、タイプにわけて考えることがソムリエ試験的に最も効率が良いと私は考えており、それを簡略化してフローチャートっぽくまとめてみました。
※ガメイとマスカット・ベーリーAは最後にどちらか判断するものとして、ここではひとまずひとくくりで考えます。

ピノ・ノワール=PN仏、PN新(ニューワールド)
ガメイ=Ga
サンジョヴェーゼ=Sa
ネッビオーロ=Ne
シラー(シラーズ)=Sy仏、Sy新
カベルネ・ソーヴィニヨン=CS仏、CS新

外観
色調から三つにわけます。

a 淡くて赤っぽい
→まずはPN仏、濃くて粘性高ければPN新、Gaもあり、あるいはNe…。

b やや濃くて赤っぽい
→(ここが一番難しい)Sa、Sy仏、PN新、Ne、Ga

c 濃くて紫っぽい
SyCS。フランスか新世界かはさておき、明らかに”濃い”判断した時は基本この二品種。

香り
香りのタイプでさらに五つにわけます。

a1外観淡赤 / 香り「赤い果実」
→ほぼPN(仏か新かは強さで判断)、もしかしたらGかも。

a2外観淡赤 / 香り「フレッシュな果実を感じない時」系
→フレッシュな果実を感じず、違和感を感じた時のみNe。

外観やや濃赤 / 香り「赤から黒果実」
→ここが一番難しい。比較的幅広くなんでも当てはまる可能性があるとも言えます。SaやPN新、もしかしてSy仏、Gaかなと。

c1外観濃紫 / 香り「赤から黒果実」系→Sy仏
c2外観濃紫 / 香り「黒い果実」系→Sy新CS
→正直、このように言葉にしてわけることが難しいのですが、今の段階ではSyのCS違いを意識して欲しいので。

・味わい
渋味・酸・ボリュームを意識して判断します。

a1 淡赤 /「赤い果実」系
・酸が上品で、それほど複雑ではないけど、バランス良く、渋味もないわけではない。→PN仏の可能性が高いけど、アルコール感によってはPN新かもしれない。

・味わいも単調で、ほとんど渋味、奥行きを感じない。パッと開いて、すぐになくなる感じ。→Ga
イチゴキャンデーっぽさとバナナっぽさが前面に出ていればGa確定。

a2 淡赤 /「フレッシュな果実を感じない時」系
(香りでどう考えてもフレッシュな果実を感じない時のみ)強い渋みとしっかりとしたアルコール感。色調以上に強さを感じる。→Ne

b やや濃赤「赤から黒果実」系
渋味アルコールのボリュームを感じます。

・渋み弱いーボリューム軽め
→香りと同様に短調で余韻が短いならGa。

・渋み弱いーボリュームやや軽めからちょい重め
→Sa、PN新。サンジョヴェーゼとピノ新の違いは比較的明確です。ただ、ここはいろんな要素が絡み合って難しいでしょう。

・渋み強いーボリュームやや軽めからちょい重め
→明確に渋みを感じて、フレッシュ感がなければNe、程々の渋みでフレッシュな果実味であればSy仏の可能性あり。

C1・C2 濃紫/「赤・黒い果実」系・濃紫/「黒い果実」系
ここの微妙な判断もなかなか難しい。シラーはどこか赤いニュアンスがあるということです。
ここは、アルコールのボリューム感複雑さを比べます。複雑さって難しいですけどね。

・アルコールのボリューム感やや強ー複雑さ△
複雑さが少ない分、より果実味、酸味をしっかり感じます。→Sy仏

・アルコールのボリューム感やや強ー複雑さ◎
フレッシュが果実味が前面に出てこず、いろんな要素が主張します。→CS仏

・アルコールのボリューム感とても強い
とにかく果実味の凝縮感とアルコールのボリューム感が特徴的→Sy新CS新(そして、この強さによってブドウ品種の特徴がかくれてしまうので、今のところこの二つの違いはわからなくていいです)

いや〜、難しいですね。今はまだあまり深く悩まずにワインの強弱を意識しつつ、どんどんこなしていきましょう。このワインはこちらのものよりもちょっと渋いかな?ってなところから始めて、それらの経験を重ねていってください。数ヵ月後にはなんとか自分の中に基準が出来上がり、少なくとも大きくタイプを外さなくなることを目指します。ヴィンテージや生産地、生産国などは後回し、もしくは勘でもいいくらいです。

テイスティングの話をもう少し続けます。

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩
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