ワインの酸とアルコール 2

第114回
前回に引き続き、ワインの酸とアルコールについてです。
当初からこの”こーざ”をご覧の方には耳にタコかもしれませんが、テイスティングの重要なポイントです。
テイスティング繋がりで思い出したのですが、ロアルド・ダールの「味」という小説があります。これは”家”と”娘”を賭けてブラインドテイスティングするお話で、ワイン業界では非常に有名な短編です。
私も松岡氏の紹介で読んだのですが、なかなか見事なワインの分析!?を垣間見ることができ、小説としても非常に楽しめました。
”ハヤカワ・ミステリ文庫”から出版されているそうなのですが、松岡氏が小説そのものが読めるサイトを見つけてくれました。(サイトの運営者が翻訳されたもののようです)
一次試験を終えられた方は、気分転換も兼ねてお読みください。
合格を強くイメージしてください。
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ワインの酸とアルコール 2
さて、酸とアルコールの話の続きです。
前回、酸味をリンゴ、甘みをマンゴーに例えて話を進めました。もう一度イメージしてくださいね。
北の涼しい地域ではブドウがそれほど熟さないため、暖かい地域ほど糖度が上がらず、その分酸が強くなります。そのブドウから造られるワインは元になるブドウの糖度が低めであるためアルコール感をそれほど感じず、やや細身で、酸が主体なのでスッキリとした印象、例えるならリンゴのイメージです。
一方で南の暖かい地域で太陽の恩恵をたくさん受けたブドウは良く熟して甘くなります。さらに甘くなる分、酸が穏やかになります。その甘さ(糖分)がそのままアルコールに変わります。ですから、できあがるワインからアルコールのボリュームを感じ、果実味も豊かで骨太になる一方、酸が低い分やや重い感じになります。こちらはマンゴーのイメージです。
ここまでは良いですか?
では、酸とアルコールをもう少し理解するためにフランスを例にして話を進めたいと思います。
フランスの主な産地を東西南北にわけてみます。
北 : ロワール、シャンパーニュ、アルザス
東 : ブルゴーニュ、ジュラ・サボア
西 : ボルドー、南西地方
南 : コート・デュ・ローヌ、プロヴァンス、コルス、ラングドック・ルーシヨン
大まかにフランスのワイン産地の位置関係を頭に入れてから読み進めてください。
フランスの北の産地
シャンパーニュはフランス最北端の産地で気候的にそれほど恵まれていません。ブドウが十分に熟さない年があるということで、アッサンブラージュという方法が考えだされました。二次のテイスティングでシャンパーニュが出ることはないでしょうが、酸を一番感じるという点ではわかりやすいのではないでしょうか。
また、ロワールのカベルネとボルドーのカベルネを比べてみます。ブドウ品種の違い(ボルドーはカベルネ・ソービニヨン、ロワールはカベルネ・フラン主体)もありますが、ボルドーより北の産地であるロワールのカべルネは線が細く酸をはっきりと感じます。
一方でボルドーのカベルネにもしっかりとした酸があります。それでも、(より南の産地、また海沿いで温暖な気候から)他の果実味やアルコール感などの各要素が洗練されていながらも力強い為、酸を突出して感じることが少ないのです。この点でロワールとは一線を引くことができます。また、ソーヴィニヨン・ブランでも同じことが言えます。←いつか復習しましょう。例えば、サンセールとグラーヴのソーヴィニヨン・ブランの違いということです。
アルザスは北の産地に属しますが、大陸性気候で雨が少なく夏に暑くなるため、比較的凝縮感のあるワインが造られます。それでもやっぱり北の産地、酸が特徴的です。また、エチケットにブドウ品種名を記載するなど、他の地域以上にブドウ品種にこだわりを持つことも北の厳しい気候条件によるものだと思われます。
南仏のワイン
プロヴァンスやコルシカ島など、地中海沿岸地域が温暖であろうことは旅行社のパンフレットや映画・雑誌などでも見ることがあると思います。そのイメージ通りとても温暖で、この地域のブドウはそれほど手を加えなくてもそこそこ立派に育ちます。ブドウ栽培に適した気候で、単純にブドウが良く熟すのです。できるワインは想像通り、マンゴータイプ寄りになります。
フランス人の気質が大きく関与していると思われるのですが、努力無しではブドウがうまく育たないシャンパーニュが世界的な名声を得ている一方で、ブドウ栽培に適しているラングドックのワインが安ワイン・テーブルワインの産地に甘んじているのはとても興味深い点です。→ただ、ラングドックにおいても、ここ二十年で見違えるような素晴らしいワインが生産されるようになってきました。
西のボルドーと東のブルゴーニュ
一般的に海沿いは暖かく、内陸は寒いと言われます。フランスの西と東の産地の違いですが、海沿いのボルドーはさらに大西洋に暖流が流れているため、ブルゴーニュに比べるとかなり温暖です。この二つの地方はブドウ品種からして全く相容れないのですが、生産されるワインはそれぞれの気候を表しています。
ボルドーの方がやや南でさらに海沿いで暖かいため、ブルゴーニュよりも力強く、酸は穏やかで、それでも南仏ほど温暖ではありませんからしっかりと酸も感じられます。ブドウ品種の特性ともいえますが、力強くとても洗練されたワインが出来上がります。
反対にブルゴーニュはどちらかといえば北の産地に近く、力強さ・アルコールのボリュームというよりは、酸の地方です。ここは一言では説明できない特殊な環境でもあるのですが、酸をうまく生かした華やかでエレガントなワインが造られています。
ボルドーとブルゴーニュのどちらも酸が主体の北の産地とアルコール感の強い南の産地の間にありますから、酸とアルコールのバランスに優れています。それゆえ、世界的な名声を得ているとも考えられます。こちらはフランスの勉強を終えた時にもう一度戻ってきて復習してみてください。
ワインにとって酸とアルコールが重要な構成要素であることはおわかりいただけたと思います。
地方、地域によって使用されるブドウ品種が違いますし、緯度や気候だけがワインの違いに表れるわけではありませんが、一つの基準になります。
松岡さんの受け売りですが、私はブラインドテイスティングにおいてフランスを疑った時にはこのようにフランスの地図を頭の中に描いて、酸とアルコールのバランスを考えて消去法で候補を絞っていくことが多いです。
二次試験のテイスティングは、フランスワインだけが出題されるわけではありませんが、ワインの生産国としてフランスはとてもバランスの取れているので、入り口にはもってこいの国だと思っています。
ワインテイスティングの基準の一つとしてフランスワイン産地を理解されることをお勧めします。
何かございましたらこちらまで
info★majime2.com 牧野 重希