ロワール地方 ペイ・ナンテ、アンジュー・ソーミュール <B>「美しきフランスの庭園」
第17回
先日、無事ボルドーを終えました。いかがでしたでしょうか?
「楽しくてワクワクしました!!(*゚▽゚*)」
と答えていただければ一番よいのですが、そんな奇特な方はほとんどいらっしゃらないと思います。
正直、多くの方にとって辛い暗記作業となったことでしょう。しかし、こうして覚えたワインといずれ実際に対面し、それらが素晴らしい味わいであった時には感動もひとしおです。今はソムリエ試験のための勉強ですが、真の目的は素晴らしいワインに出会うことであり、その喜びを人とわかち合うことです。
ソムリエ試験合格は、少し遠い道のりですが見えない山頂ではありません。一歩ずつ前進すれば必ずたどり着くことができます。
まだ始まったばかりです。秋まで共に頑張りましょう。
今日からロワール地方です。
15世紀、百年戦争も終盤の頃、フランスがイギリスの侵略を受けて国内が混乱している中、フランスの王都・パリもイギリスの支配下にありました。
ロワールに逃れたシャルル7世は1427年、シノン城に宮廷を置きました。そこへ神のお告げを聞いたというジャンヌ・ダルクがシャルル7世を訪ねます。その後、ジャンヌ・ダルクの活躍でイングランド軍はオルレアンの包囲を解いて撤退せざるを得なくなり、シャルル7世率いるフランス軍が一気に形勢を逆転させていきました。快進撃を続けるシャルル7世はランス(シャンパーニュ地方)へ赴き、ノートルダム大聖堂で正式にフランス王として戴冠式を挙行しました。
↑先日のボルドーワインの歴史(まだ途中ですが)と比べると、上記はフランス側から見た歴史ですね。
さて、ボルドーを海沿いに北上したところにナントという街があります。フランス最大の河川、ロワール川の河口の街であり、ナント周辺にはキリっと引き締まった白ワイン、ミュスカデが造られるワイン産地が広がります。この街からロワール川上流に向けてワイン産地が点在します。
ロワール川の周辺にはトップの写真のような古城が点在しており、その風景の美しさからロワール地方はフランスの庭園<1>と呼ばれています。松岡さんがそのロワールを訪ねた時のお話です。
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フランス最長のロワール川。その流域には田園風景が広がり、森のかなたには古城の優雅な姿が見え隠れしています。時が止まっているのかと錯覚してしまうほど美しい景色が広がっているのです。フランスらしいという言葉がぴったりのこの地方はフランスの庭園<1>と呼ばれています。私もこの地域のお城のいくつかを訪ねたことがあります。歴史好きの方にはお薦めの観光地です。→2000年にユネスコの世界遺産に登録されています。登録名は「シュリー=シュル=ロワールとシャロンヌ間のロワール渓谷」です。
その中のお城をいくつか紹介いたします。ただ、ソムリエ試験対策講座なので、AOC名にちなんだお城をご覧いただこうと思います。
おおよそ、西から順に並べてみました。
・アンジェ城 (アンジェ城はAngersと書きますが同地域です)
→AOC Anjou Gamay、Anjou Villages、Anjou Villages Brissac
→AOC Saumur、Saumur-Champigny、Saumur Puy-Notre-Dame
→AOC Chinon
→AOC Touraine Azey-le-Rideau
→AOC Touraine Chenonceaux
→AOC Savennieres Roche-aux-Moines
(紹介してから言うのもなんですが、AOC Roche-aux-Moinesとこのロシュ城の場所も違えばつながりもありません)
→AOC Cheverny、Cour-Cheverny
→AOC Valencay
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素晴らしい中世の世界ですね。私も一度は行ってみたいものです。
ここで、AOC名表記の色に関して説明させて下さい。ボルドーでも同じようにワインと色を合わせて記述していましたが、ロワールではもう少し細かくなります。
青色は白ワイン、赤色は赤ワイン、ピンク色はロゼワインが生産可能であることを表し、三色で表現されているものは白・赤・ロゼの全てが認められていることを表します。
また、Saumurのように青・赤・ピンクの割合はその色のワインがどれだけ占めているかの単純なイメージです。例えばこのソミュールは白赤ロゼの生産が認められていますが、半分以上が赤ワイン、ほんの少量のロゼワインが造られているというイメージです。なんとなくではありますが、役に立つ時もあるはずです。
明日ではなく、今日少しだけでも頑張りましょう。疲れているのは皆同じです!
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ロワール地方 ペイ・ナンテ、アンジュー・ソーミュール <B>
目次
フランス最大の河川<1>、全長1000㎞に及ぶロワール川沿いに広がるワイン産地です。冷涼な気候を反映して白ワインが53%、ロゼワインが27%、赤ワインが20%を占めます。
ナント周辺にローマ人がはじめてブドウを植えたのが2000年前、その後本格的にロワール川流域にブドウ畑が広がったのは5世紀以降と言われています。→川による水運のおかげ、またパリから近いという地理的立地も影響しています。現在紹介中のボルドーの歴史でも少しふれていますので、なんとなく教本の歴史の個所と合わせてイメージしてみてください。
【ポイント】
・ロワール川が約1000㎞にも及ぶため、地域としても東西に長く、また白・赤・ロゼ以外にも甘口貴腐、スパークリングが生産されているため項目が多岐にわたりますが、出題されるポイントが決まっていますので、しっかりと確認しましょう。
四つにわかれた各地区のブドウ品種の大まかなイメージと主要AOCを押さえましょう。地図を見ておおよその位置関係をイメージできるとよいと思います。
・いろいろなブドウ品種が出てきますが、シノニムと合わせて確認しましょう。→最初は色つき太字のAOCを覚えるくらいでよいと思います。
・近年、気候や土壌に関する出題が増えております。これらは各地区ごとに異なりますが、大まかに、河口に近いほど大西洋の影響を受けるため温暖で雨の多い海洋性気候、上流に進むにつれて半海洋性気候、そして半大陸性気候と変化し、夏は暑く冬は厳しい寒さとなっていきます。→トゥーレーヌ地区あたりが海洋性と大陸性の境になります。
・教本にある「地方料理と食材」は軽く目を通しておくと良いかもしれません。パティスリーでよく見かけるリンゴのタルト、Tarte Tatin(タルト・タタン)<2>はロワールの地方料理です。そのほかにはシェーヴルチーズ(山羊乳)がとても有名です。→次回お話します。
A ペイ・ナンテ地区
◆気候
・海洋性気候<2>←大西洋<1>の影響で夏は温暖、冬も比較的穏やか。雨は一年通じて降るものの激しいということは少ない。一般的に海沿いは暖かいものです。
◆主要ブドウ品種
白ブドウ
ミュスカデ(ムロン・ド・ブルゴーニュ)<1>
フォール・ブランシュ
◆主要AOC
・Muscadet-Sevre et Maine
白ワインのみのAOC。Muscadet系の四つの中で栽培面積最大。←ミュスカデなので、当然白ワインのみ。
※SUR LIE(シュル・リー)<2>
ミュスカデの多くがこの製法で造られます。SUR LIEとはフランス語で”澱(LIE)の上(SUR)”という意味です。「SUR LIE」と表記するには醸造過程で発生した澱をそのまま底に残した状態で最短でも翌年の3月1日まで保存しなければなりません。
・Gros Plant du Pays Nantais
白ワインのみのAOC。地元でグロ・プラン<1>と呼ばれるフォール・ブランシュ<3>というブドウが主体です。
・Fiefs Vendeens と Coteaux d’Ancenis
→そんなに意識しなくてもよいと思います。覚えようと思う方は前者がなんとなく赤・白・ロゼがミュスカデではないロワール品種で造られていて、後者も赤・白・ロゼですが、ブドウはガメイとピノ・グリといったくらいで。
B アンジュ・ソーミュール地区
◆気候・土壌
・海洋性気候<3>←まだこの辺りは海の影響を受けます。ただ、ソミュール地区になると丘が西風をせき止めるため、半海洋性気候に。
・アンジュー地区の土壌:アンジュー・ノワールと呼ばれる片岩。
・ソミュール地区の土壌:トゥファ<1>←石灰岩の一種(炭酸塩の体積物)、この土壌は有名です。
◆主要ブドウ品種
白:シュナン・ブラン(ピノー・ド・ラ・ロワール)
赤:カベルネ・フラン(ブルトン)<1>、カベルネ・ソーヴィニヨン、グロロー
→この地区のブドウ品種は白:シュナン・ブラン、赤:カベルネ・フランが基本で、おおよそシャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、カベルネ・ソーヴィニヨンやグロロー、ピノー・ドーニなどが補助品種として認められます。おとなりのトゥーレーヌまで迷った時は基本この二つです。
◆主要AOC
ロゼワインのみが認められているAOC
・Cabernet d’Anjou (半甘口) カベルネ主体<2>
・Rose de Loire (辛口)<3> カベルネ主体
・Rose d’Anjou (半甘口) グロロー主体<2>
→ブドウ品種はなんとなくカベルネ主体、Rose d’Anjouだけが違います。あとは、なんとかAnjouは半甘口、というくらいの認識でいいです。また、Rose de Loireはこの地区がほとんどですが、広域のAOCです。
※以前はCabernet de Saumur (辛口)がロゼのみのAOCでしたが、2016年にAOC Saumurに統合されました。
赤ワインのみが認められているAOC
(Anjou+なんとかとSaumur+なんとかの5つのみ)
・Anjou Gamay ガメイ
・Anjou Villages<1>
・Anjou Villages Brissac
・Saumur-Champigny<1>
・Saumur Puy-Notre-Dame
→Anjou Gamay以外はすべてカベルネ・フラン主体
貴腐および過熟ブドウによる甘口白ワイン
・Coteaux du Layon→レイヨン川に朝霧が発生し、貴腐が生じます。
・Quarts de Chaume→この地域で唯一「Grand Cru」を名乗ることができます。最も果汁糖度の規定値が高い。<1>
・Bonnezeaux<1>
・Coteaux du Layon 1er cru Chaume
↑上記3つはCoteaux du Layonに属します。
・Coteaux de Saumur
・Coteaux de l’Aubance(赤のAnjou Villages Brissacと同じエリアです)
・Anjou Coteaux de la Loire
ブドウはすべてシュナン・ブランです。
→まずは太字の三つを覚えましょう。あと、ここ(アンジュ・ソーミュール)ではCoteauxなんとかは全て甘口と思っていいのですが、次のトゥーレーヌで甘くないやつが出てくるんです。
白ワインのみのAOC(辛口から甘口まで作られます)<2>
・Savennieres<1>
・Savennieres Roche-aux-Moines
・Coulee-de-Serrant<1>→ビオディナミの伝道師ニコラ・ジョリーがこのAOCを単独所有しています。Savennieresの単一区画です。
こちらもブドウは全てシュナン・ブランです。
その他の気をつけたいAOC
・Anjou:ロゼは認められておりません。
・Saumur:赤・白・ロゼ
・Cremant de Loire:クレマンはどこの地方も同じ。白・ロゼの瓶内二次発酵<1>。←この製法はシャンパーニュで勉強します。
◆アンジュ・ソーミュール地区の地図
まずはSavennieres<2>が右岸<1>にあることを確認しましょう。
あとは、11・12・13・15は覚えておいた方が良いかもしれません。
けっこう大変ですね。過去問で確認してみましょう。
ソムリエ試験 過去問
【過去問】
フランスの庭園として知られ、バラエティ豊かなタイプのワインが生産される地方を 1 つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Jura
2. Val de Loire
3. Bourgogne
4. Cotes du Rhone
【解説】
先ほど勉強しましたから、今日は誰でもわかるはずです。「フランスの庭園」といえばロワール地方と覚えておきましょう。
【過去問】
ジャンヌ・ダルクがフランス王太子シャルル7世に謁見をした場所と同じ名前のワインを 1 つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Chambord
2. Chinon
3. Touraine
4. Vouvray
【解説】
前説でもジャンヌ・ダルクにふれていましたが、最近の流れから考えると歴史問題は重要で、まずは過去問に取り上げられた箇所くらいは覚えておきましょう。
【過去問】
ワイン用ブドウ品種 Cabernet Franc のロワール地方における別名を 1 つ選んでください。
1. Gros-Plant
2. Melon de Bourgogne
3. Pineau de la Loire
4. Breton
【過去問】
ロワール地方のトゥール市を中心にソーミュールの東側からオルレアンまで広がるワイン産地を1つ選んでください。
1. アンジュー&ソーミュール地区
2. トゥーレーヌ地区
3. ペイ・ナンテ地区
4. サントル・ニヴェルネ地区
【過去問】
ロワール地方はその風光明媚な景観から何と呼ばれているか1つ選んでください。
1. 古城の都
2. フランスの庭園
3. オルレアンの聖騎士
4. ラブレーの生誕地
【過去問】
次のロワール地方Anjou & Saumur地区に関する記述の中から正しいものを1つ選んでください。
1. Cabernet d’ Anjouは、Cabernet Franc,Cabernet Sauvignonから造られる赤ワインのA.O.C.である。
2. Anjou Villagesは、Cabernet Franc, Cabernet Sauvignonから造られる赤ワインとChenin Blancから造られる甘口白ワインのA.O.C.である。
3. Coteaux de Saumurは、Chenin Blancから造られるスパークリングワインのA.O.C.である。
4. Bonnezeauxは、Chenin Blancの貴腐または過熟による甘口白ワインのA.O.C.である。
【解説】
たとえ、3.の選択肢がわからなくても正解にたどり着きますよね。そして、選択肢3のCoteaux de Saumurって何かな?と調べてみる。こんな勉強法をお勧めします。
【過去問】
次のロワール地方のA.O.C.に関する記述の中から正しいものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. A.O.C. Anjou Gamay、A.O.C. Anjou Villages は赤、ロゼを造ることが認められている。
2. A.O.C. Bonnezeaux は辛口白ワインを造ることが認められている。
3. A.O.C. Anjou は、ロゼのみ造ることが認められている。
4. A.O.C. Cabernet de Saumur は、ロゼのみ造ることが認められている。
【解説】
本文にも書きましたが、以前はCabernet de Saumur (辛口)がロゼのみのAOCでした。他の3つが間違っているとわかりますか?
【過去問】
次のVal de Loire 地方Pays Nantais 地区で生産されているA.O.C. の中から最も生産量の多いものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. Muscadet
2. Muscadet-de Sevre et Maine
3. Muscadet-Coteaux de la Loire
4. Muscadet-Cotes de Grandlieu
【過去問】
次のVal de Loire 地方のA.O.C. の中から辛口のワインを生産しているものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. Bonnezeaux
2. Chaume
3. Cabernet d’Anjou
4. Rose de Loire
ここは出題されたなら得点にしたいところです。
何かございましたらこちらまで
info@majime2.com 牧野 重希
Comment
過去問第7問目について正答がないように見受けられるのですが、いかがでしょうか。
1. AOC Gamay/Villageは赤のみ
2. AOC Bonnezeauxは甘口白のみ
3. AOC Anjouは赤/白(甘~辛)
4. 『Caberenet de Saumur』…? Caberenet d’Anjouの記載ミスでしょうか?
本文中にも記載しておりますが、以前はCaberenet de SaumurがロゼのAOCでした。