ウルグアイ <D-1>

第92回
※前回のチリのCBT試験過去問、想定問題の2022年の記載が抜けていました。申し訳ありません。本日同時に更新しています。
前回までお話しした才能と努力のお話、お伝えしたかったことは大体お伝えしたのですが、面白いと思った内容が他にもあるので少し続けます。
エリクソンが紹介している研究の中に、ロンドンのタクシードライバーの脳の発達を研究したものがあります。
ロンドンという街は、ドライバーやGPS泣かせのとても複雑な構造をしており、タクシーでの送迎がとても難しい都市なのだとか。ロンドンをタクシードライバーとして走るには、驚異的な記憶能力や空間把握の力が必要なんです。
そこで、ロンドンのバスドライバーや、タクシードライバー候補生、そして実際にタクシードライバーとして働いている運転手の脳を継続的に調べたところ、タクシードライバーの脳の海馬後部が、他のグループにくらべて肥大していることを突き止めたというのがこの研究です。
特定の場所の往復となるバスドライバーや、タクシードライバー候補生になったものの実際に街を走ることのなかった人々には無い変化が、複雑なロンドンの街を走るタクシードライバーには現れたのです。ロンドンを走るのに必要な驚異的な記憶能力を生み出すために、脳のほうが変化したんですね。
これを読んだ時に、以前ソムリエの脳の働きを特集したテレビ番組を見たことを思い出しました。
ソムリエは、嗅覚が優れていて感覚的な右脳が秀でていそうなイメージですが、意外にも活発に働いていたのは言語を司る左脳でした。
嗅覚が優れているから香りをたくさん列挙できるのではなく、感じた香りを言語化することに優れているということがわかったんです。
今皆さんにお願いしているトレーニングがまさにこれです。「嗅覚が敏感である」という才能は必要ないんですね。今まで何となくでしか感じてこなかったことを言語化する。これがソムリエなんです。
そしてそれはタクシードライバーと同じく、トレーニングをすれば誰でも獲得できる能力で、トレーニングの中できっとあなたの脳が適応してくれます。何度も言いますが、特別な「才能」は必要ありません。
「才能」という言葉は、ある意味とても神秘的で魅力的ですよね。
「自分の中に『才能』というお宝が眠っていて、それを探し当てることができたら、自分の人生が開けてくる」といった考え方は、私たちに「宝を見つけることができれば人生が大逆転する」という宝探し的なロマンを感じさせてくれます。
お恥ずかしい話ですが、私も昔は「自分が現在ダメダメなのは、まだ自分の才能を見つけていないからだ」という「本気出してないだけ」的な甘い考えを持っていました。
でもこの考え方では「自分の才能は何だろうか?」「自分の中の宝物はどこにあるのだろう?」ということに囚われてしまい、才能探し(宝探し)に多くのエネルギーを消費するようになってしまいがちです。
ここまでお伝えしたように、才能は見つけるものではなく創り出すものです。
才能が見つけるものであれば、見つけてしまえばあとはそれを楽しく育ててさえいけば人生は開けてくるという、とても魅力的な話に感じられます。でも、今まで私はそんな経験は一度もありませんし、きっとこれからも無いでしょう。→苦労した経験の中で、気付かないうちに才能が育まれていたというケースはあると思います。
一方、才能を創り出すということは、地道にコツコツと努力を積み重ねるということになるので、これはけっこう面倒ですし大変ですよね。今あなたが頑張っているこの時間が、まさに才能を作り出している時間なんです。
でも、「ソムリエの才能」が自分の中に見つけられなくても、創ることができると考えた方がこれから先、楽しいと思いませんか?
さて、では今日は教本掲載の国としては新しいウルグアイです。ここまでアメリカ・チリとハードな国が続きましたが、ここは少しは楽チンです。
※表紙は全幅約270kmもあるラ・プラタ川の河口部三角州。
成功するために大切なのは、どこから始めるのかではなく、どれだけ高く目標を定めるかである。by ネルソン・マンデラ
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ウルグアイ <D-1>
ソムリエ試験的に新興国で、教本にもたしか2019年初登場だったかと思います。まだそれほど出題されておりませんから、時間のない方は一次試験直前に教本の「プロフィール」「歴史」「気候風土」あたりを読み流すくらいでもいいかもしれません。2022年・2023教本と立て続けに産地が追加され15から17になり、地図が改定されましたが、基本産地を押さえるだけで良いのは変わらないかと思います。そろそろ第3の産地が狙われるかも…
目次
A ウルグアイワインについて
◆概要
南米大陸に位置するウルグアイは東側にブラジル、西側にラ・プラタ川<20・22>を挟んでアルゼンチン<19・22>と国境を接し、南側に大西洋があります。南米大陸で2番目に小さな国ですが、ワイン生産量的には、アルゼンチン→チリ→ブラジルに次いで第4位<19>の位置にいます。生産されるワインの57%<20>が赤ワイン、33%がロゼワイン、そして白ワインは10%<20>と少ないです。→ウルグアイは国民一人当たりの牛肉消費量が世界一であることからも赤ワインが多いことが理解できると思います。アサード<19>が有名。
Asado:アルゼンチンやチリ、ウルグアイなどで食される焼肉料理です。アサードはスペイン語で「焼かれたもの」という意味。
Chivito(チヴィート)<20>:牛肉といろいろなものを挟んだサンドウィッチも有名で、ウルグアイの国民食です。
◆歴史
17世紀末<19> 独立前、植民地開拓者によってスペインから初めてブドウが持ち込まれ、国の南東に植えられたのがブドウ栽培の始まり。最初のブドウはモスカテル種。
1873年<20> スペイン系移民のフランシスコ・ヴィディエラがヨーロッパからカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ<20>、ガルナッチャなどの苗木を持ち帰り、モンテビデオで栽培を始めました。 中でもヴィーニャ・デ・ペニャロールと呼ばれていたフォル・ノワール種の栽培が成功を収めました。現在、栽培面積が減少傾向にあるこのフォル・ノワール種ですが、ウルグアイでは彼の名にちなんで「ヴィディエラ」<19>のシノニムで知られています。
1874年 フランス・バスク地方の移民、パスカル・アリアゲがアルゼンチンのコンコルディアよりタナ種を持ち込み、La Caballadaに植えました。これが後に大成功を収め、タナはウルグアイを象徴するブドウになりました。そして、彼の偉業を称え、ウルグアイにおいてタナ種は「Harriague」<19・20・21・22>という別名でも親しまれています。
19世紀後半 ワイナリー建設ラッシュ後、1893年にフィロキセラが猛威を振るいました。
1965年 ウルグアイ技術研究所(=LATU)が設立。輸出前のワインの化学分析と官能検査を実施
1987年 国立ブドウ栽培ワイン醸造協会(=INAVI)設立。輸出量は全ワイン生産量の約10%程度ですが、INAVIの活動促進により年々増加傾向。→ブラジル、アメリカ、ベルギーなどへ。
◆気候風土
ワイン産地は南緯30度~35度の間に位置し、大きく北部と南部にわけることができます。温暖湿潤気候で夏暑く、冬寒い。北部はブラジルからの熱風の影響を受けより温暖、南部の海岸地域はやや冷涼になります。
ラ・プラタ川や大西洋からの影響を強く受けることもあり、年平均湿度は75%と高くなります。ブドウは垣根仕立てが主流<19・22>(68%)ですが、雨量が比較的多く湿度が高いので、Y字に仕立てる伝統的なリラ仕立て(25%)も見られます。→風邪通しがよく、湿気や病害に強く、夏の日照を確保しやすい。
◆ワイン法
ウルグアイのワイン法には他国に見られるような原産地呼称制度は存在せず、1993年にVCPという優良品質ワインの位置づけが設けられました。<20>
1. VCP(Vino de Calidad Preferente):優良品質ワイン
・ヴィティス・ヴィニフェラ種のブドウ果から造られる
・最低アルコールは10.5%以上
・750㎖もしくはそれ以下のガラス瓶で販売する
・エチケット表記(収穫年・ブドウ品種)は当該ブドウを85%以上使用
2. VC(Vinos Comun):テーブルワイン
B 主なブドウ品種
黒ブドウ品種が80%、白ブドウ品種が20%です。
黒ブドウ
① タナ<19>(=アリアゲ Harriague<19・20・21・22>)
→1874年にフレンチ・バスク移民のパスカル・アリアゲによって持ち込まれました。全体の27%。→タナおぼえてますか?
② モスカテル・デ・アンブルゴ→バルクワイン
③ メルロ
→その後、カベルネ・ソービニヨンが続きます。
増加傾向<21>
・マルスラン(=カベルネ・ソービニヨン×グルナッシュ・ノワール<20・22>)→高い生産力、病害虫に強い。
・アリナルノア(=タナ×カベルネ・ソービニヨン<19>)
白ブドウ
① ユニ・ブラン<19・21>
② ソーヴィニヨン・ブラン
③ シャルドネ
④ アルバリーニョ
C 主なワイン産地
南部の産地
・Canelones カネロネス
ウルグアイ最大・最重要のワイン産地<20・21・22>で、全栽培面積の66%を占めます。標高は低く、一面に平野が広がります。上記の主要ブドウ品種が栽培されています。赤ワインが76%。下記の首都モンテビデオの北<22>にあたります。
・Montevideo モンテビデオ
首都モンテビデオ<20>を擁する第2位<20・21>のワイン産地(12%)。赤ワインが79%。ラ・プラタ川<21>の河口で発達。地図上では一番南の一番小さな産地です。ラ・プラタ川は川というより海の一部に見えますね…。汽水域なのでしょうか。
代表的なワイン地区の出題がありました。余裕のある人だけで…。<22>
Melilla(メリージャ)、Manga(マンガ)、Penarol Viejo(ペニャロール・ビエホ)、Rinon del Cerro(リンコン・デル・セロ)
・Maldonado マルドナド
第3位のワイン産地。カネロネスの東隣。栽培面積が減少傾向のウルグアイにおいて唯一増加傾向にある産地。赤ワインはタナ。白ブドウでは、ガリシア地方(覚えていますか?)と同じ大西洋からの影響により、土地に適したアルバリーニョが最も多い。つづいてソーヴィニヨン・ブラン。赤ワイン71%と他に比べると白が多め。リゾートビーチなどもある観光県。
ここはCBT試験過去問、想定問題だけです。
CBT過去問・想定問題
※求められた解答がわかっているものには答えをつけています。【答】の右側を選択すると(スマートフォンやタブレットはタップや長押し)答えが見えます。
【2019】
・タナ×カベルネ・ソーヴィニヨンの交配から生まれたブドウ品種は?
・ウルグアイとラ・プラタ川を挟んで国境を接している国を選べ。
・ウルグアイにおいてスペインから初めてブドウが持ち込まれた時期は?
・フォル・ノワール種のウルグアイでの呼び名は?
・ウルグアイにおける最も栽培面積の大きい黒ブドウ品種は?
・Asadoの説明として正しいものを選べ。
・ウルグアイのワイン生産量は南米において何番目に位置するか?
・Harriagueの説明として正しいものを選べ。
・ウルグアイにおいて、最も多いブドウの仕立て方は?
・ウルグアイにおける最も栽培面積の大きい白ブドウ品種は?
【2020】
・ウルグアイにカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロなどが持ち込まれた年代は?
・ウルグアイのワイン生産量第2位の産地は?
・ウルグアイを流れる川を選べ。
・ウルグアイにおける白ブドウと黒ブドウの生産比率は?
・マルスラン種の交配として正しい組み合わせを選べ。
・ウルグアイにおいてブドウ栽培面積最大のワイン産地は?
・ウルグアイのワイン法の説明として正しいものを選べ。
【答】 原産地呼称制度は存在せず、1993年にVCPという優良品質ワインの位置づけが設けられた。
・ウルグアイにおけるタナのシノニムは?
・Chivitoの説明として正しいものを選べ。
・ウルグアイの首都を内包するワイン産地は?
・カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種は?
【2021】
・ウルグアイにおけるタナのシノニムは?
・ウルグアイのワイン生産量第2位の産地は?
・ウルグアイにおける最も栽培面積の大きい白ブドウ品種は?
・ウルグアイにおいてブドウ栽培面積最大のワイン産地は?
・ウルグアイのブドウ、Harriagueのシノニムは?
・モンテビデオと関連する川を選べ。
・ウルグアイにおいて近年増加傾向にある黒ブドウ品種を選べ。
【答】マルスラン
【2022】
・カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュの交配品種は?
・ウルグアイのワイン生産量第1位の産地は?
・Marselan種の交配として正しい組み合わせを選べ。
・ウルグアイにおいて、最も多いブドウの仕立て方は?
・モンテビデオにある有名なワイン地区を選べ。→これは解けなくてもいい問題です。
・ウルグアイのブドウ、Harriagueのシノニムは?
・ウルグアイとアルゼンチンの間にある川の名前は?
・ウルグアイの首都モンテビデオの北に位置するウルグアイ最大のワイン産地は?
・ウルグアイにおけるTannatのシノニムは?
久しぶりにちょっとホッとしましたね。ひとまずこのくらいで。
何かございましたらこちらまで
info★majime2.com 牧野 重希