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英国 <B>

2023/05/26
 
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第78回

さて、今回は英国です。

「ブレグジット」という言葉と共に2020年の1月にEUを離脱した英国。2016年の国民投票でEU離脱賛成が過半数を超えたにもかかわらず、その後数年間混迷を極めた後、現在へと至りました。

ワイン法においても、2021年からは英国独自のG.I.が採用されているので、ややこしい部分もあると思います。

2023年の教本で産地の記述が結構追加されましたので、この講座でも少しだけ加筆しましたが、余裕のある方は教本を一読しておくと、新しい問題に対応できるかもしれません。→そんなにページ数が多くないですから。

温暖化と共に、逆に注目の集まる産地ですが、とりあえずは過去問をベースにポイントを押さえていきましょう。

それでは始めます。

※表紙はウェールズの収穫風景。
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英国 <B>

 

さて、今回はワイン産地としても今後いろんな意味で注目されるであろう英国です。ソムリエ試験的には新興国ですが、日本の市場でも英国産のスパークリングワインをしばしば目にするようになりました。今後、ソムリエ試験的主要国になるであろうということでランク<B>で始めます。

目次

 

A 英国について

概要
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの四カ国で構成される連合王国です。

高緯度に位置するため気候は全般的に冷涼、特に北部は雨も多くブドウ栽培が難しい為、商業的ワイナリーは少ない。一方で、南部は温暖で雨が少なく、多くのワイン生産者が散在しています<18・19・21・22>

歴史
紀元前1世紀頃にベルガエ人(現在のベルギー周辺の人々)が英国南東部に進出してワインを持ち込みました。その後、キリスト教が6世紀末に広まると、ブリテン島南東部の修道院でブドウ栽培とワイン醸造が行われるようになりました。

1154年 アキテーヌ女公アリエノールの夫アンリがイングランド王ヘンリー2世となり、現在のフランス西部と英国全体にあたる地域を支配し、ボルドーなど大陸側のワインが英国に盛んに供給されるようになりました。→こちらはボルドーの歴史としてお伝えしたところです。

1703年 英国がポルトガルと結んだ通商条約により英国から輸出される羊毛、ポルトガルから輸入されるワインの関税がそれぞれ引き下げられました。これを期にポートやマデイラの輸入が増え、これらのワインの発展に大きく貢献しました。

19世紀半ば うどん粉病とフィロキセラが上陸、被害を受けたためワイン輸入を促すためにワインの関税が引き下げられ、この頃から上流階級の人々はヨーロッパ各地のワインを常飲するようになります<19>

20世紀前半 二度の大戦による食糧不足により、穀物生産が優先されたためワイン生産が途絶えました。

1950年代 ブドウ園が相次いで開設され、70年代に増加のピークを迎えます。この時期に首都ロンドンがボルドー、ポート、シェリーなど高級ワインの取引における世界的な中心地としての地位を揺るぎないものとしました。また、Masters of Wine(MW)やMaster Sommelier (MS)の団体が創設されました。

20世紀後半頃は、ハイブリッド品種やドイツ交配品種の特性と冷涼な気候を反映した残糖分のあるライトでフルーティーなワインが主体でした<19・20・21>
1980年代から気候の温暖化と共にブドウの熟度が上がるようになり、フランスの著名品種が栽培しやすくなりました。その後、イングランド南部で栽培されたシャルドネやピノ・ノワールで造るスパークリングワインが高い評価を得るようになります<19>

2020年 EU離脱。今後は独自の国内法や条約を運用するとしています。

 

B 気候風土

気候
北緯49~61度<21>に位置し、ワイン産地としては最北の地域といえます。ただ、大西洋を横切る暖流「メキシコ湾流」の影響で、南部は比較的温和な海洋性温帯気候です。<18・20・22>
→最近1世紀以上にわたって気候の温暖化が顕著で、1900年にはイングランド南端にわずかしか存在しなかった年間平均気温10°Cを超える地域が、2000年にはイングランド南部の大半、2080年にはイングランドのほぼ全体に拡大すると予測されているそうです。今後はピノ・ノワールやリースリングなど冷涼な気候に適したブドウの熟度が高まり、スティルワイン(特に赤)の品質と生産量の向上が期待されています<19>

土壌
イングランド南部にはシャンパーニュ地方からイギリス海峡を超えて連なる白亜土壌が見られます。沿岸部からやや内陸にかけての地域は、このシャンパーニュに似た土壌によって硬質なミネラル感を持つスパークリングワインが生産されています<18>

 

C 主要ブドウ品種

以前は伝統的にハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心でした<18・21>。2000年前後頃からピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの栽培面積が急増<18・19>。理由としては気候の温暖化、南向きの斜面の畑の増加、そしてなによりもシャンパーニュスタイルのスパークリングワインの生産が盛んになったことです<20>

栽培面積順<20・21>(イングランド・ウェールズ)
① ピノ・ノワール<18>
② シャルドネ<18>
③ ムニエ
④ バッカス
→さらに、EUでは高品質ワインに使用されないセイヴァル・ブランが続きます。

・スパークリングワイン 68%<20>(トラディッショナル 98%、シャルマ1%、白81%、ロゼ19%)、スティルワイン 32% (白68%、ロゼ17%、赤14%)、生産量の大半をイングランドとウェールズが占めます。

 

D ワイン法とワイン産地

ワイン法
英国は2020年1月末にEUを脱退したため、2021年からは英国独自のG.I.システムに移行しました。<22>
EUと同様の4つのカテゴリーに分類されます。
(PDOとPGIに新たなロゴ表示義務があります。2020年以前に登録したワインは国内販売のみ表示でOK、2021年以降に登録したワインは国内外問わず表示義務があります。)

◆Wine 最も基礎的なカテゴリー。品種、収穫年、地理は表示不可。

◆Varietal Wine 一段上のカテゴリー。85%以上使用で品種や収穫年の表示が可能。地理表示は不可。

◆地理的表示保護 PGI<18・22>(Protected Geographical Indication)
・English Regional Wine
・Welsh Regional Wine
2つの表示。イングランドまたはウェールズのいずれかで収穫したブドウを85%以上。英国の他の地域のブドウを15%まで使用可能。最大収量100hl/ha、アルコール8.5〜15%(捕糖前果汁の潜在アルコール度数は6.0以上)。スパークリングワインはトラディショナル方式、<20>最低9ヶ月の瓶内熟成、ガス圧3.5バール以上、最低アルコール10%。

原産地名称保護 PDO<18・22>(Protected Designation of Origin)
未承認のSussex Wineも含めて4つの表示。
・English Wine
イングランドで収穫されたブドウのみ。最大収量80hl/ha、アルコール8.5〜15%(捕糖前果汁の潜在アルコール度数は6.0以上)スパークリングワインはトラディショナル方式、最低9ヶ月の瓶内熟成<21>ガス圧3.5バール以上、最低アルコール9%、ブドウ品種はシャルドネ、ピノ系を主体にシャンパーニュと同様におおよそ想像できるもの。

・Welsh Wine
ウェールズのみで収穫されたブドウのみ。標高220m以下の畑で栽培されたブドウのみ。以下、English Wineと同じ。

・Sussex Wine
イングランドのサセックス地方で収穫されたブドウのみ。2017年に登録<20>。PDOは審査中。→以降、数字がちょっと違うと覚えておきましょう。特にスパークリングは15カ月熟成(うち澱と共に最低12カ月)。

・Darnibole Wine / Darnibole Bacchus Wine スティル辛口白のみ
コーンウォール州の生産者キャメル・ヴァレー・ヴィンヤードが単独所有する5haの畑がDarnibole。ブドウはバッカスのみ<20>。2017年に承認。<22>

 

◆伝統的表現として認められている呼称
・British Wine
輸入ブドウや濃縮ブドウを原料として英国で造られた酒類<18>。一般的に価格・品質ともに水準は低い。伝統的に多かったのは残糖分やアルコールが高めのブリティッシュ・シェリーというスタイル<20・22>でしたが、近年は辛口に仕上げてスーパーマーケットなどで安売りされるものも増えました。→日本にもこの曖昧な表現の「ワインもどき」がございます。

ワイン産地
ケント州
英国の南東の端に位置し、ドーバー海峡に面しています。
イングランドの庭園と呼ばれます。
ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエの栽培面積がそれぞれ最も多い州です。ワイナリーが多いのは、North Downs(丘陵地帯)の東半分(別名:Kent Downs)。
・イースト サセックス州とウェスト サセックス州
ハンプシャーと並んで、英国でも最も日照が豊富で温暖。ピノ・ノワールとムニエは2州を合わせるとケント州より多い。ワイナリーがあるのはSouth Downs。
・ハンプシャー州
港町が多く、リゾート地。シャルドネがケント州に次いで多い。ワイナリーがあるのはSouth Downs。
・サリー州
ロンドンの南東、上記3州の内陸側に面しているので海に面していない内陸部。よってより冷涼。ワイナリーがあるのはNorth Downsの西半分(別名:Surrey Hills)。

それでは過去問で確認していきましょう!



ソムリエ試験 過去問

【過去問】
イギリスで生産されるワインのうち、スパークリングワインが占める割合として適当なものを次の中から1つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 29%
2. 49%
3. 69%
4. 89%

※現在は少し数字が変わっています。最新の数字をチェックしておきましょう。

【過去問】
2018 年統計で、イギリスのワイン生産州のうち、最もブドウ栽培面積が大きい州を次の中から 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. Essex
2. Kent
3. West Sussex
4. East Sussex

引き続きCBT試験過去問、想定問題です。

 

CBT過去問・想定問題

※求められた解答がわかっているものには答えをつけています。【答】の右側を選択すると(スマートフォンやタブレットはタップや長押し)答えが見えます。
※長文が多いので、ここはグレーにしました。

【2018】
・英国の土壌の特徴についての説明として正しいものを選べ。
【答】 イングランド部の沿岸部からやや内陸にかけての地域は、シャンパーニュに似た土壌によって硬質なミネラル感を持つスパークリングワインが生産されています。
・英国において、最も栽培面積の広いブドウ品種を選べ。
・英国において、多くのワイン生産者が散在しているのは?
・英国の気候についての説明として正しいものを選べ。
【答】 大西洋を横切る暖流「メキシコ湾流」の影響で、南部は比較的温和な海洋性温帯気候
・英国において、最も栽培面積の広い白ブドウ品種は?
・British Wineの説明として正しいものを選べ。
【答】 輸入ブドウや濃縮ブドウを原料として英国で造られた酒類
・英国において、近年、栽培面積が急増しているブドウ品種を選べ。
・英国ワイン法における「地理的表示保護」「原産地名称保護」に該当するものの組み合わせとして正しいものを選べ。
・2000年以前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。
【答】 伝統的にハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心

【2019】
・英国のワイン産業の特徴として正しいものを選べ。
【答】 部は商業的ワイナリーが少なく、部に多くのワイン生産者が散在している。
・英国において、近年、栽培面積が急増しているスパークリングワイン用のブドウ品種を選べ。
・近年の英国ワインの説明として正しいものを選べ。
【答】 イングランド部で栽培されたシャンパーニュ品種で造られるスパークリングワインが国際的に高い評価を得始めた。
・英国において、20世紀後半頃までよく見られた「冷涼な気候を反映した残糖分のあるライトでフルーティーなワイン」に関係するものを選べ。
【答】 ハイブリッド品種、ドイツ系交配品種
・英国のワインの歴史として正しいものを選べ。
【答】 19世紀半ばに輸入ワインの関税が引きげられ、上流階級の人々はヨーロッパ各地の輸入ワインを飲むようになった。
・英国において、気候の温暖化によりもたらされるであろう観測として正しいものを選べ。
【答】 冷涼な気候に適したブドウ品種の熟度が高まり、スティルワイン(特に赤)の品質と生産量が上がることが期待されている。

【2020】
・英国の全ワイン生産量の内、スパークリングワインの占める割合は?
・2017年に新たにPDOに登録された名称は?
・British Wineの説明として正しいものを選べ。
【答】 伝統的に多かったのは残糖分やアルコールが高めのブリティッシュ・シェリーというスタイル
・英国ワイン法におけるPGIの説明として正しいものを選べ。
・2015年にPDOに登録された単独所有畑「Darnibole」において栽培されているブドウ品種は?
・英国において、栽培面積の広いブドウ品種上位三種の組み合わせとして正しいものを選べ。
・ひと昔前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。
【答】 ハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心で、残糖分のあるソフトでフルーティーな白ワイが造られた。
・英国南部の気候についての説明として正しいものを選べ。
・英国において、近年、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの栽培面積が急増している理由として正しいものを選べ。

【2021】
・英国のワイン産地の緯度は?
・英国のワイン産業の特徴として正しいものを選べ。
【答】 部は商業的ワイナリーが少なく、部に多くのワイン生産者が散在している。
・2000年以前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。
【答】 伝統的にハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心
・イングランドとウェールズで主に栽培されているブドウ品種を選べ。
・イギリスの説明として正しいものを選べ。
【答】 English Wineのスパークリングは、トラディショナル方式で最低9カ月間は澱と共に瓶内熟成。
・イギリスの説明として正しいものを選べ。
【答】 間違った選択しとして、「20世紀から国際品種で成功」「スパークリングワイン65%スティルワイン23%」「主に北部で栽培される」

【2022】
・英国についての説明として正しいものを選べ。
【答】 大西洋を横切る暖流「メキシコ湾流」の影響で、部は比較的温和な海洋性温帯気候

・英国についての説明として正しいものを選べ。
【答】 部では気候が温暖で雨が少なく、ワイン生産者が散在している。

・英国についての説明として正しいものを選べ。
→多角度的に出題されているようです。一問としての情報が不確定なので、報告の中の確実な選択肢を並べてみました。
○ EUの規定に加盟していない。→離脱後の話です。加盟は2020年まで。
○ 独自のG.Iを採用している。
○ Darnibole Wineは2017年に追加。→EUの頃の話です。
× ワイン法はEUに規定されている。→離脱しましたので。2021年から独自のGIです。
× 地理的表示保護でPGI、PDOがある。→PDOは原産地名称保護です。
× 地理的表示(G.I. )について導入しているのは英国のみ。→「独自の」でなければ、NZなどもGIを採用しているので間違いです。
? ブリティッシュ・シェリーについての記述。 →詳細はわかりませんでした。

 

お疲れ様です!今回も大変でした。でも、ヨーロッパのワイン産地、あとは大物ドイツを残すのみです!
ドイツはCBTで出題が増えました。ヨーロッパ最後の難関ですが頑張りましょう。

何かございましたらこちらまで
info★majime2.com 牧野 重希





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