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英国 <B>

2021/06/11
 
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第78回

さて、今回は英国。「ブレグジット」という言葉と共に2020年の1月にEUを離脱した英国。2016年の国民投票でEU離脱賛成が過半数を超えたにもかかわらず、その後数年間混迷を極めていました。

英国は21世紀以降、移民問題が浮き彫りになりました。2015年のパリ同時多発テロ以降、頻発するテロ事件の影響もあり、民意がEU離脱に向かっていった気持ちは理解できなくもありません。もともと離脱反対派であったメイ前首相が、離脱に向けてリーダーシップを発揮し、英国の舵取りを行なってきましたが、まとめきれないまま辞意を表明されました。彼女の強い信念は世界中に伝わったように思いますが、離脱派も残留派も納得できる着地点は見つけられませんでした。そのあとを継いだジョンソン首相が2019年末に半ば強引にEUと合意した離脱案を通し、翌年一月になんとかEU離脱。政治は力、勢いなんだとちょっと感心しておりました。→日本はこのあたりが…。リーダーもいない…。今は本当にひどい…。

この英国のEU離脱の一連の騒動、EU圏に住んだことのある者としていろいろと感じることがあります。今後のヨーロッパの流れにおける大きな分岐点になるんじゃないかなぁと思っていたところに昨年からのコロナ禍、EU離脱の件は最近話題にならないので、しばらくは静観する感じでしょうか。

努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのならば、それはまだ努力と呼べない。by 王貞

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※表紙はウェールズの収穫風景。



英国 <B>

 

さて、今回はワイン産地としても今後いろんな意味で注目されるであろう英国です。ソムリエ試験的には新興国ですが、日本の市場でも英国産のスパークリングワインをしばしば目にするようになりました。今後、ソムリエ試験的主要国になるであろうということでランク<B>で始めます。

A 英国について

概要
イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの四カ国で構成される連合王国です。

高緯度に位置するため気候は全般的に冷涼、特に北部は雨も多くブドウ栽培が難しい為、商業的ワイナリーは少ない。一方で、南部は温暖で雨が少なく、多くのワイン生産者が散在しています<18><19>

歴史
紀元前1世紀頃にベルガエ人(現在のベルギー周辺の人々)が英国南東部に進出してワインを持ち込みました。その後、キリスト教が6世紀末に広まると、ブリテン島南東部の修道院でブドウ栽培とワイン醸造が行われるようになりました。

1154年 アキテーヌ女公アリエノールの夫アンリがイングランド王ヘンリー2世となり、現在のフランス西部と英国全体にあたる地域を支配し、ボルドーなど大陸側のワインが英国に盛んに供給されるようになりました。→こちらはボルドーの歴史としてお伝えしたところです。

1703年 英国がポルトガルと結んだ通商条約により英国から輸出される羊毛、ポルトガルから輸入されるワインの関税がそれぞれ引き下げられました。これを期にポートやマデイラの輸入が増え、これらのワインの発展に大きく貢献しました。

19世紀半ば うどん粉病とフィロキセラが上陸、被害を受けたためワイン輸入を促すためにワインの関税が引き下げられ、この頃から上流階級の人々はヨーロッパ各地のワインを常飲するようになります<19>

20世紀前半 二度の大戦による食糧不足により、穀物生産が優先されたためワイン生産が途絶えました。

1950年代 ブドウ園が相次いで開設され、70年代に増加のピークを迎えます。この時期に首都ロンドンがボルドー、ポート、シェリーなど高級ワインの取引における世界的な中心地としての地位を揺るぎないものとしました。また、Masters of Wine(MW)やMaster Sommelier (MS)の団体が創設されました。

20世紀後半頃は、ハイブリッド品種やドイツ交配品種の特性と冷涼な気候を反映した残糖分のあるライトでフルーティーなワインが主体でした<19><20>
1980年代から気候の温暖化と共にブドウの熟度が上がるようになり、フランスの著名品種が栽培しやすくなりました。その後、イングランド南部で栽培されたシャルドネやピノ・ノワールで造るスパークリングワインが高い評価を得るようになります<19>

2020年 EU離脱。今後は独自の国内法や条約を運用するとしています。

B 気候風土

気候
北緯49~61度に位置し、ワイン産地としては最北の地域といえます。ただ、大西洋を横切る暖流「メキシコ湾流」の影響で、南部は比較的温和な海洋性温帯気候です。<18><20>
→最近1世紀以上にわたって気候の温暖化が顕著で、1900年にはイングランド南端にわずかしか存在しなかった年間平均気温10°Cを超える地域が、2000年にはイングランド南部の大半、2080年にはイングランドのほぼ全体に拡大すると予測されているそうです。今後はピノ・ノワールやリースリングなど冷涼な気候に適したブドウの熟度が高まり、スティルワイン(特に赤)の品質と生産量の向上が期待されています<19>

土壌
イングランド南部にはシャンパーニュ地方からイギリス海峡を超えて連なる白亜土壌が見られます。沿岸部からやや内陸にかけての地域は、このシャンパーニュに似た土壌によって硬質なミネラル感を持つスパークリングワインが生産されています<18>



C 主要ブドウ品種

以前は伝統的にハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心でした<18>。2000年前後頃からピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの栽培面積が急増<18><19>。理由としては気候の温暖化、南向きの斜面の畑の増加、そしてなによりもシャンパーニュスタイルのスパークリングワインの生産が盛んになったことです<20>

栽培面積順<20>
① ピノ・ノワール<18>
② シャルドネ<18>
③ ピノ・ムニエ
④ バッカス
→さらに、EUでは高品質ワインに使用されないセイヴァル・ブランが続きます。

・スパークリングワイン 69%<20>、スティルワイン 31% 、生産量の大半をイングランドとウェールズが占めます。

D ワイン法とワイン産地

ワイン法
英国は2020年1月末にEUを脱退しました。今後は英国独自のG.I.を運用するとしています。前年までに登録されたPGIやPDO(下記)の名称は、引き続き保護されます。

◆地理的表示保護 PGI<18>(Protected Geographical Indication)
イングランドまたはウェールズのいずれかで収穫したブドウのみ、または英国の他の地域のブドウを15%まで加えて造ったワイン。スパークリングワインはトラディショナル方式。<20>

原産地名称保護 PDO<18>(Protected Designation of Origin)
・English Wine
イングランドで収穫されたブドウのみ。アルコール8.5(捕糖後9.0)〜15%、最大収量80hl/ha。スパークリングワインはトラディショナル方式、最低9ヶ月の瓶内熟成、ガス圧3.5バール以上、最低アルコール10%、ブドウ品種はシャルドネ、ピノ系を主体にシャンパーニュと同様におおよそ想像できるもの。

・Welsh Wine
ウェールズのみで収穫されたブドウのみ。以下、English Wineと同じ。

・Sussex Wine
イングランドのサセックス地方で収穫されたブドウのみ。2017年に登録<20>→以降、数字がちょっと違うと覚えておきましょう。

・Darnibole Wine
コーンウォール州の生産者が単独所有する5haの畑がDarnibole。ブドウはバッカスのみ<20>

◆伝統的表現として認められている呼称
・British Wine
輸入ブドウや濃縮ブドウを原料として英国で造られた酒類<18>。一般的に価格・品質ともに水準は低い。伝統的に多かったのは残糖分やアルコールが高めのブリティッシュ・シェリーというスタイル<20>でしたが、近年は辛口に仕上げてスーパーマーケットなどで安売りされるものも増えました。→日本にもこの曖昧な表現のワインもどきがございます。

ワイン産地
英国における最大の産地は
ケント州です。



ソムリエ試験 過去問

【過去問】
イギリスで生産されるワインのうち、スパークリングワインが占める割合として適当なものを次の中から1つ選び、解答欄にマークしてください。

1. 29%
2. 49%
3. 69%
4. 89%

【過去問】
2018 年統計で、イギリスのワイン生産州のうち、最もブドウ栽培面積が大きい州を次の中から 1 つ選び、解答欄にマークしてください。

1. Essex
2. Kent
3. West Sussex
4. East Sussex

引き続きCBT試験過去問、想定問題です。

【CBT過去問・想定問題 2018】
・英国の土壌の特徴についての説明として正しいものを選べ。【答】
・英国において、最も栽培面積の広いブドウ品種を選べ。
・英国において、多くのワイン生産者が散在しているのは?
・英国の気候についての説明として正しいものを選べ。【答】
・英国において、最も栽培面積の広い白ブドウ品種は?
・British Wineの説明として正しいものを選べ。【答】
・英国において、近年、栽培面積が急増しているブドウ品種を選べ。
・英国ワイン法における「地理的表示保護」「原産地名称保護」に該当するものの組み合わせとして正しいものを選べ。
・2000年以前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。【答】

【CBT過去問・想定問題 2019】
・英国のワイン産業の特徴として正しいものを選べ。【答】
・英国において、近年、栽培面積が急増しているスパークリングワイン用のブドウ品種を選べ。
・近年の英国ワインの説明として正しいものを選べ。【答】
・英国において、20世紀後半頃までよく見られた「冷涼な気候を反映した残糖分のあるライトでフルーティーなワイン」に関係するものを選べ。【答】
・英国のワインの歴史として正しいものを選べ。【答】
・英国において、気候の温暖化によりもたらされるであろう観測として正しいものを選べ。【答】

【CBT過去問・想定問題 2020】
・英国の全ワイン生産量の内、スパークリングワインの占める割合は?
・2017年に新たにPDOに登録された名称は?
・British Wineの説明として正しいものを選べ。【答】
・英国ワイン法におけるPGIの説明として正しいものを選べ。
・2015年にPDOに登録された単独所有畑「Darnibole」において栽培されているブドウ品種は?
・英国において、栽培面積の広いブドウ品種上位三種の組み合わせとして正しいものを選べ。
・ひと昔前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。【答】
・英国南部の気候についての説明として正しいものを選べ。
・英国において、近年、ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエの栽培面積が急増している理由として正しいものを選べ。

ーーーーーーー

【解答 2018】
・英国の土壌の特徴についての説明として正しいものを選べ。
→イングランド南部の沿岸部からやや内陸にかけての地域は、シャンパーニュに似た土壌によって硬質なミネラル感を持つスパークリングワインが生産されています。

・英国の気候についての説明として正しいものを選べ。
→大西洋を横切る暖流「メキシコ湾流」の影響で、南部は比較的温和な海洋性温帯気候

・British Wineの説明として正しいものを選べ。
→輸入ブドウや濃縮ブドウを原料として英国で造られた酒類

・2000年以前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。
→伝統的にハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心

【解答 2019】
・英国のワイン産業の特徴として正しいものを選べ。
→北部は商業的ワイナリーが少なく、南部に多くのワイン生産者が散在している。

・近年の英国ワインの説明として正しいものを選べ。
→イングランド南部で栽培されたシャンパーニュ品種で造られるスパークリングワインが国際的に高い評価を得始めた。

・英国において、20世紀後半頃までよく見られた「冷涼な気候を反映した残糖分のあるライトでフルーティーなワイン」に関係するものを選べ。
→ハイブリッド品種、ドイツ系交配品種

・英国のワインの歴史として正しいものを選べ。
→19世紀半ばに輸入ワインの関税が引き下げられ、上流階級の人々はヨーロッパ各地の輸入ワインを飲むようになった。

・英国において、気候の温暖化によりもたらされるであろう観測として正しいものを選べ。
→冷涼な気候に適したブドウ品種の熟度が高まり、スティルワイン(特に赤)の品質と生産量が上がることが期待されている。

【解答 2020】
・British Wineの説明として正しいものを選べ。
→伝統的に多かったのは残糖分やアルコールが高めのブリティッシュ・シェリーというスタイル

・ひと昔前の英国におけるブドウ品種についての説明として正しいものを選べ。
→ハイブリッド品種やドイツ系交配品種など、寒冷地向きの白ブドウ品種が中心で、残糖分のあるソフトでフルーティーな白ワイが造られた。

お疲れ様です!今回も大変でした。でも、ヨーロッパのワイン産地、あとは大物(だけど…そんなに出ない…)ドイツを残すのみです!

何かございましたらこちらまで
koza★majime2.com 松岡 正浩





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