スペイン~シェリー<D-1>「シェリーって食前酒?」
第46回
さて、一昔前の日本のフランス料理店では食前酒といえばシェリーという時代がありました。夏の暑い日にアペリティフとしてキリッと冷やしたフィノなどは文句なしに美味しいでしょう。ティオ・ペペ等が有名です。私も当時は良くわからないままに注文していたことを思い出します。
とはいえ、このシェリーは食前酒向きのキリッとした辛口から、コクのあるタイプ、さらには甘口までさまざまな種類が造られています。
今はシェリーを注文される方もだいぶ減っているように思いますが、フランスでは(日本で流行っていた)当時から食前酒であっても各々が好きなものを飲んでいたそうです。
高級レストランになればシャンパーニュの比率が上がるようですが、驚いたのはお昼にトマトジュースにウスターソースとタバスコを入れて飲む人が多いのだとか。(松岡さん談)
試してみると意外と美味しいと松岡さんは言っていましたが私はちょっと抵抗感が…。←カクテルのイメージですね。
また、旅行先のバルセロナやマドリッドに行っても「食前酒と言ったらシェリー!」という感じでは全くなかったとのことで、日本でなぜ食前酒として流行ったのでしょうね。
松岡さんはシェリーが好きで、行きつけのシェリーバーで私もシェリーのバラエティー豊かな個性を教えてもらいました。
いつか現地のアンダルシアで美味しいシェリーを飲めたらいいなぁと思っております。
※表紙はイスラム支配期の名残が残るヘレス・デ・ラ・フロンテーラの旧市街地
あきらめないことだ。一度あきらめると習慣になる。by 斎藤茂太
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シェリー~スペイン <D-1>
目次
H シェリーの特徴
◆特徴
アンダルシア地方カディス県の酒精強化ワインです。辛口でドライなタイプからネットリ甘口まで造られています。
・ヘレス・デ・ラ・フロンテラ
・エル・プエルト・デ・サンタ・マリア
・サンルーカル・デ・バラメーダ
この三つの町で熟成されたものだけがシェリーを名乗れることになっていましたが、2021年に変更が発表され、下記の7つも熟成地域として認定されました。→ただ覚えなくても良いかと…、7つ増えたことと独立分離した地域まで認定されたことだけ頭の片隅にあれば十分です。
・Tebujena(トレブヘナ)
・Lebrija(レブリハ)
・Chipiona(チピオナ)
・Rota(ロタ)
・Chiclana de la Frontera(チクラナ・デ・ラ・フロンテラ)
・Puerto Real(プエルト・レアル)
・San Jose del Valle(サン・ホセ・デル・バーリェ)→へレスから分離独立した地域ですが認定されました。ただし、認定地域は西経5°49以西、北緯36°58’以南と限定されています。
◆気候風土
典型的な地中海性気候で夏暑く乾燥タイプですが、2つの風<1>大西洋からの低温高湿の風(ポニエンテ)と内陸からの高温低湿の風(レバンテ)の影響を受けます。アルバリサ<5>と呼ばれる炭酸ガスを25%以上含む真っ白な石灰岩質土壌が有名。
→この地の温暖な気候と二つ風、このアルバリサ、後述のソレラシステムによってシェリー特有の個性が生まれます。
◆正式名称
Jerez-Xeres-Sherry y Manzanilla-Sanlucar de Barrameda
→最初の3語はスペイン語・フランス語・英語の順です<1>。この文字列、覚えなくともなんとなく頭の片隅にでも残っていれば。
※シェリーの語源は711年から1264年までこの地域を支配していたアラブ人たちが現在のヘレスの地につけた名前、シェリシュに由来します<1>。
◆ブドウ品種<3>
パロミノ(辛口:95%)と少量のペドロ・ヒメネス、モスカテル(甘口)が栽培されています。
I シェリーの製造工程
辛口タイプの製造工程
① 白ワインとして発酵させ、澱を沈ませ安定させている間にフロールが発生。
→フロール<1>:ワイン表面に発生する産膜酵母のこと。この酵母の膜のおかげで、その下にあるワインが酸化から守られ、フレッシュな味わいを維持します。600ℓ<1>のアメリカンオーク樽を使い、500ℓだけ入れることでフロールを発生させるための空間をつくります。ちなみに新樽は使いません。
フロールは新酒を注ぎ続けることで、3~4年程度の寿命があり、さらに熟成を続けていくと消滅してしまいます。そうして出来上がったものが次のアモンティリャードです。
↓
② デリケートなタイプはフィノに、ボディのしっかりしたタイプはオロロソに選別後フロールを取り除き、それぞれ酒精強化。ソブレタブラとよばれる熟成システムに。→フィノで15%、オロロソは17%までアルコール度数を上げる。
↓
(フィノ)フロールの元で熟成
(オロロソ)フロールのない状態で熟成
↓
(フィノ)フロールの状態を見て、アモンティリャード、パロコルタドに選別
・クリアデラとソレラの熟成システムとは<1>
ソレラという最も古いワインが入った樽の上にクリアデラ<1>という樽を3~4段積み上げたもの(アンダナ)で、新しく醸造し酒精強化されたワインは一番上の樽に入れられます。→最近は実際に積み上げていない造り手もいると聞きます。
ワインは一番下のソレラ<1>から一部が出荷(サカ)されます。そして、減った分だけ上の樽(第1クリアデラ)から注ぎ足し(ロシオ)、その分をまた上(第2クリアデラ)から集めて(サカ)補充(ロシオ)します。こうして常に一定の品質と味を保ち続けているのです。中には数世紀前から続くシステムもあり、ソレラが古いほど奥深い味が楽しめます。
J シェリーのタイプ
◆辛口:Vino Generoso
・Fino
アルコール度数が15<1>〜17度になるように酒精強化され、産膜酵母(フロール)の働きによって独特の風味が生まれます。淡い麦わら色(冷涼産地の白ワインの色調)ドライでシャープな辛口。
・Manzanilla
特にサンルーカル・デ・バラメーダで熟成されたフィノのことを指します。海に近く塩気を感じると言われます<1>。→他の二都市より湿度が高く気温が低い為、フロールが消えることがなく独自の個性を持ち、個別の原産地呼称があります。
・Amontillado<1>
フィノの熟成途中でフロールがなくなったものや、なくなった後に熟成させたものです。スパイス香、ナッツの風味など複雑味を持ちかつ、シャープでドライな辛口。アルコール度数が16〜22度。
アルコール度が17度<1>になるまで酒精強化され、フロールを発生させません。その為ワインは酸化熟成していきます。→フロールの成育限界はアルコール度数17度です。ナッツやドライフルーツなどの豊な香り、フルボディの複雑な味わい。一般的に辛口です。
・Palo Cortado<1>
醸造的にはフィノになる可能性の高かったオロロソ。アモンティリャードの香りと、オロロソのコクを備えたもの。ナッツ、ビター・オレンジの香り、オイリーな口当たりが特徴。
→最初にフィノにしようと決めたワインが、なんらかの状況でフロールがつかなかったり、途中で消えてしまったりします。(ちょっと困りながら?)できたワインを試飲して、再度酒精強化し、これは「Palo Cortadoだな」と決めるそうです。パロ(一本線を樽に書いて区別。フィノを表す記号)をコルタド(切る)するという意味。ちなみに「ドス・コルタドス」もあります。(ドス=2)
◆甘口:Vino Dulce Natural
・Moscatel
・Pedro Ximenez<1>
↓写真はPedro Ximenez
ブドウの名前がそのままシェリーの名前になっています。共に非常に濃厚で、モスカテル(残糖160g/l以上)はややフレッシュで柑橘系と花の香り、ペドロ・ヒメネス(残糖212g/l以上)はレーズンやドライ・フルーツを感じると言われます。ともに極甘口。
ブドウは過熟、もしくは天日干しし凝縮させてからワイン造りを始めます。
・Dulce(上の2つと同じく極甘口、アルコールも同じ15~22%、残糖160g/l以上)
◆半甘口:Vino Generoso de Licor
・Medium(アモンティリャード+ペドロ・ヒメネス)
・Cream(オロロソ+ペドロ・ヒメネス)
この他にも造られていますが、試験的にはこれくらいで十分でしょう。
◆熟成期間認定シェリー
フロールのつかないタイプが対象。→まぁ、すっきり系ではないタイプということです。
VOS:20年以上<3>
VORS:30年以上<1>
・Anada(アニャダ)
ソレラシステムを使わない単一収穫年シェリー
・en rama(エン・ラマ)<1>
清澄も冷却もしていないシェリーに表記できる。
ソムリエ試験 過去問
【過去問】
シェリーの甘口タイプであるCreamの正しい組み合わせを次の中から1つ選び、 解答欄にマークしてください。
1. Fine+Pedro Ximenez
2. Amontillado+Pedro Ximenez
3. Manzanilla+Pedro Ximenez
4. Oloroso+Pedro Ximenez
【過去問】
シェリーを造る主要品種を 1 つ選び、解答欄にマークしてください。
1. Airen
2. Xarello
3. Monastrell
4. Palomino
【過去問】
シェリーの裏ラベルに記載される「VOS」の最低熟成年数を 1 つ選び、解答欄に マークしてください。
1. 最低 10 年以上
2. 最低 20 年以上
3. 最低 30 年以上
4. 最低 40 年以上
【過去問】
シェリーに用いるブドウを産出する有名な土壌を 1 つ選び、解答欄にマークして ください。
1. アルバリサ
2. ローム
3. トルトニアーノ
4. クラス・ド・フェール
【解説】
これまで選択肢に出てきた用語は要チェックと言っておりましたが、ここはアルバリサのみ意識しても良いかもしれません。全て土壌関連の言葉ですが、正解以外はかなりハイレベルです。
【過去問】
シェリーの産地において、約95%を占めるブドウ品種を 1 つ選んでください。
1. Airen
2. Xarello
3. Macabeo
4. Palomino
【過去問】
次の記述に該当するシェリーを 1 つ選んでください。
「サンルーカル・デ・バラメーダで熟成されるフィノタイプのシェリーで、塩気を感じる。独自の D.O. を持っている。」
1. Palo Cortado
2. Manzanilla
3. Amontillado
4. Oloroso
【過去問】
次の記述に該当するシェリーのタイプを 1 つ選んでください。
「フィノとオロロソの中間的な風味のシェリーで、フィノの熟成途中でフロールが消失したものを、そのまま熟成させたもの」
1. Manzanilla
2. Amontillado
3. Palo Cortado
4. PedroXimenez
【過去問】
シェリーの熟成に関係する用語を 1 つ選んでください。
1. Solera
2. Negramoll
3. Abona
4. Estufa
【解説】
答えは簡単です。あとは、4. Estufaが何を指す言葉か調べてみましょう。2. Negramoll、3. Abonaは試験的に知る必要がありません。
【過去問】
シェリーは、Jerez de la Frontera 、Sanlucar de Barrameda ともう一つの町を結ぶ三角地帯が優良シェリーの産出地であるが、次の中からもう一つの地名に該当するものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. Manzanilla
2. Malaga
3. El Puerto de Santa Maria
4. Montilla
【過去問】
次の1~4のシェリーに関する文章の中から正しいものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. シェリーはカディス県の3つの町を結ぶ三角地帯から生産される酒精強化ワインである。
2. マンサニーリャはエル・プエルト・デ・サンタマリアで造られるフィノのことである。
3. シェリーに使用されるぶどうには黒品種もある。
4. クリアデラは寝かされている樽全体のことをさす言葉である。
【過去問】
次の 1-4 の文章の中から「オロロソ」の説明として正しいものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. 軽く、色は薄めですっきりとしてドライ、ヘレスとプエルト・サンタ・マリアで生産される。
2. フロールが死滅した後ソレラで活性化させると琥珀色になり、ナッツのような香りと味わいをもつ。
3. フロールが発達しなかったワインにアルコールを強化し、酸化させたもので強烈な香りとデリケートな深みを持つ。
4. 海に近い場所で生産され、やや塩気を感じさせるドライでフレッシュな味わいを持つ。
【解説】
それぞれの選択肢が何に該当するか確認してくださいね。このような言い回しに慣れることも試験対策のひとつです。
【過去問】
次の中からシェリーのManzanillaの最低アルコール度数に該当するものを1つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. 15 度以上
2. 16 度以上
3. 16.5 度以上
4. 17 度以上
【過去問】
次の 1-4 の中からスペインのアンダルシア地方で石灰を多く含んだ白い土壌を表す言葉として正しいものを 1 つ選び、解答用紙の解答欄にマークしてください。
1. アルバリーニョ
2. テラロッサ
3. アルバリサ
4. テラフロンテ
次回、復習もかねてスペインワインをまとめます。
何かございましたらこちらまで
info@majime2.com 牧野 重希